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異世界 阿呆の国編

13.精霊妃の最初の試練 神様視点

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※やや話口調



僕たちは普段、神の領域と呼ばれる所で自分の役目を果たしているんだ。
死者の記憶を消し去るもの。死者を輪廻の輪に導くもの。生まれる前の子供を導くものなど、役割は色々ある。

その中で僕は管理者として、神々をまとめる役割を持っているんだ。
そう、僕意外と偉いんだよ。

僕がまとめる神々は、記憶が消し去られて魂になった存在を別の世界に導くことに関わる神でね。
そのなかでも今回千利が地球に生まれる騒動を起こしたのは、もっとも重要な役割をもつ神。


『精霊使い』となる、生まれる前の人間である魂を世界に導く神。


精霊使いはその大陸に一人生まれる、いなくてはならない存在。

精霊との関係が大切だから生まれる前の、魂の状態のときに精霊王たちが会って選ぶ決まりになっているんだ。魂は性格をうつす鏡のようなものなんだよ。

男ならば、『精霊使いせいれいつかい』女ならば『精霊妃せいれいひ』と呼ばれ、大陸の守護者として君臨し精霊使いとしての役割を果たす。

精霊使いになることが決まった魂に、精霊王によって選ばれて精霊使いとしての力を授けられた。それが、生まれる前の千利の魂。

五十年に一度のことだから、未経験者の神も多かった。それが原因で、精霊使い選びが大切だということが正しく伝わっていなかったんだ。


あろうことか千利を導く神は、世界に生まれる魂が並ぶ列に千利を並ばせて、その場を離れた。


生まれる魂が癇癪を起こして、ほかの魂を押しのけて別の世界に生まれることも多いというのにね。
愚かにも大丈夫だと思ったんだろう。



…………そしてまるで予定調和の様に、事態は最悪を進んでいった。
千利の隣に並んでいた別の世界の魂が、千利を押しのけてこの世界に生まれた。

………ここで、千利が精霊妃だと分かれば何も起きなかったのにね。
見ていた神はマニュアル通りに、千利を押しのけた魂の代わりに千利を。
……精霊妃を隣の列の世界に生まれさせた。

すぐに気付いたけれど、もう手遅れでね。千利は別の世界である地球に生まれてしまった。
精霊妃としての力は強大で、別の世界でも影響を及ぼすほどだ。

正しい世界に生まれれば、敬れる力。でも、精霊すらいない世界では『異端』として認識されるだけで。
……生まれてすぐに、千利の人生は苦しい人生になるのが決定された。

元の世界に生まれ直そうとしても、世界を渡るのは多大な負荷がかかる。
世界を渡って生まれ直したら、千利が負荷に耐えられずに死んでしまう。

神々と精霊王達で2年間話し合って決めたのは、負荷に耐えられる20歳になったら神の領域に呼び出して、事情を説明して世界を渡ってもらうこと。

それまでは僕も、地球にいる精霊も何があっても千利に手を出さない。
だから、千利が死にそうになっても手を出さない。…………………………………そう決めた。

精霊使いを自身の子供のように愛する精霊王達は反対したけれど、助けようとするだけで大きすぎる力ゆえに千利まで傷つけてしまう。

時間をかけて、しぶしぶ納得してもらってただ待った。

予想以上に、いや、精霊使いに対する行動と思えば予想通りに、精霊王達は何度も地球に行かせろと言っていた。千利が傷ついているから早く、千利が泣いているから早く、と。


何度も何度も精霊王達を説得して、説得自体に慣れてきたころ、千利は20歳を迎えたんだ。
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