少年が気持ちよくなる方法

三木

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「前戯だけでこんなに体力使うの……? 嘘じゃん……」
 裕司の腕に収まって、ぐったりとしながら良は呟いた。
 裕司は苦笑しながら、その後ろ頭を撫でてやる。
「それだけ緊張してんだろ」
 他に言いようもない、と思いながら言葉を掛けると、とろりと濡れた黒い瞳が裕司を見た。
「……あんたもだいぶ汗かいてる」
 指摘されると恥ずかしいな、と思いつつ、裕司は笑った。
「正直かなり……興奮した」
 良は瞬いて、おもむろに布団に肘をついて身を起こすと、裕司の胸に手を乗せて上から顔を覗いてきた。
「興奮したの? 俺に?」
「……他に何があるんだよ」
 良は真顔になって裕司を見つめて、そしてこう訊いてきた。
「……俺、変じゃなかった? 萎えるとこなかった?」
 真正面から訊かれて、裕司は苦笑いを浮かべる。何故何もかも白状させたがるのだろうと思った。
「萎えるどころか、えろすぎてどうしようかと思ったよ……」
 良の頬に触れても、良は裕司の目から視線を外さなかった。その濃い黒の瞳で何を見透かすつもりなのか。
「……ねえ」
「ん?」
「はやく俺のこと抱いてよ……俺に挿れて」
 裕司は一瞬声の出し方も忘れて、良を見返した。自分の耳を疑って、そしてすぐにその生々しさに我に返る。
「……くそ、お前……」
 呟いて目を覆う。視界を塞いだところで、良の体温も感触も裕司を逃しはしなかった。
「誘惑ばっかすんじゃねえよ……」
 呻くように言って、目を開けても、やはり良は裕司を真っ直ぐに見つめていた。
 良といると、裕司の心の領土は端から切り崩されていくようで、心を奪われるとはこういうことを言うのだと痛感せずにはいられなかった。思考や感情の主導権が彼に握られていくようで、もはや彼なしで自分という個人は成り立たないのではないかと感じる瞬間があった。
 それは恋にとても似ていて、恋よりも深く温かかった。この感情の名前を裕司は知らなかったが、もう彼に逆らえないことは確かなように思われた。
「だって俺……ずっとあんたに抱いてほしかったんだよ……」
 静かで、耳に好い声をとても否定する気にはなれなくて、裕司は良の身体を抱き寄せて再びシーツの上に横たえた。首を引き寄せられてキスをねだられて、緩やかで温かい口づけをした。
「……もうちょっと準備しないと入らないな」
 焦らすつもりはないのだと言いたくて呟くと、良は素直な声で言った。
「うん……あんたの好きなようにして」
 良の言葉のすべてが麻薬のようで、黙っていてほしいと思う気持ちと、もっと聞かせてほしいと思う気持ちがもつれあった。
 結局裕司はそれ以上何も言えなくて、返事の代わりに短いキスをして、良の白い脚に手を掛けた。
 良はもう自分から脚を開いて、何もかも裕司の前に差し出してくれて、裕司はつい喉を鳴らしてしまう。
 もう一度指を濡らして、良が受け入れてくれる場所に差し入れた。中の熱さと柔らかさにたまらない気持ちになりながら、指を動かし始めると、細い腰が大きく震えた。
「んっ……ん……!」
 良が息を詰めて身をよじって、裕司はその腰を撫ぜながら様子を見る。濡れて柔らかくなりつつある場所は、指を使うと水音が立った。
「……良?」
 名前を呼ぶと、良はぶるぶると首を振った。呼吸が浅く速くなって、その間に声になり切れないような喘ぎが混じる。
「待っ……ごめん、それ、ゆっくり、して……」
 耐えかねた、という様子で言われて、裕司は良の顔を見ようと身を乗り出す。良の赤い唇が喘ぎに揺れるのが見えて、それがたまらなく艶めいていた。
「……ん、う……」
 良は裕司の視線に気付いたのか、両手で顔を隠そうとした。その指を舐めて、ゆるく噛んでやると、観念したように潤んだ目で裕司を見る。そして熱い息をつきながら、細い声でたどたどしく言った。
「…………これ、ヤバイ……きもちいいかも……」
 良は泣きそうに眉を寄せたが、裕司は安堵で笑ってしまった。
「……俺は、これでも一生懸命お前を気持ちよくしようとしてるんだぞ?」
「……」
「お前が感じてくれたら、俺はすごく嬉しいよ……」
 そう言って震える喉に口づけても、返事はなかった。その代わりに、吐息に混じって切れ切れに、切なく艶を帯びた声が聞こえた。

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