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下着も脱がせて、薄く白い身体を見下ろすと、良は居心地の悪さを表情に露わにして呟いた。
「……あんまりじろじろ見ないでほしいんだけど……」
その言い方に裕司は苦笑する。機嫌を取るような気持ちでその頬を撫でた。
「触るのはよくて、見るのはだめなのか?」
「……触られるのは気持ちいいけど、見られてるだけってどうしたらいいのかわかんないよ」
もっともだ、と思って、裕司は身を屈めて良の首に口づける。それを待っていたかのように、良の手が裕司の背中に回された。
首から肩に、胸に唇を這わせて、ごく小さな乳首を舐めると、ひや、と裏返った声がした。
「ちょ……そこ舐めんの?」
戸惑ったように言われて、裕司は良の顔を見る。良は思った以上に困った顔をしていた。
「いやか?」
「いやっていうか……、……てか、あんた、舐めるの好きなの?」
ここまで来て誤魔化すのも変な話だと思って、裕司は良の腰を撫でつつ言った。
「そうだなぁ、好きだと思うとキスしたくなるし舐めたくなる」
「……」
良はすぐに応答しなかった。嫌がらないならやめる理由はないぞと言う代わりに、親指の腹で乳首を転がしてやると、白い肩がわずかに震えて、どうやらそこは敏感なようだと察せられた。
「……そんなとこ触って楽しいの」
いよいよ弱い声で良は呟いた。恥ずかしいのか、いたたまれないのか、いずれにしても、嫌悪されている気配は感じられなかった。
「楽しいに決まってるだろ。ずっと触りたかったんだから」
そう言うと、良は拗ねた子どものような目をして、裕司の耳を引っ張ってきた。
「いたたた、痛ぇよ」
なんだ、と顔を覗き込むと、子どもじみた声が小さく呟いた。
「……なんでもっと早くしてくんなかったの」
裕司は瞬く。何に不満を述べられているのだろうと、考え込みそうになってしまった。
「なんでも何も……そんなホイホイ手ぇ出せねぇって言ったろうが」
「……あんたって、めんどくさいね……」
どの口が言うんだ、と思ったが、良はどういうわけか泣き出しそうな顔をしていて、裕司は何も言えなかった。
わがままも文句も言うようになったくせに、まだ胸の中に感情を溜め込んでいるのかと、慰めるように頬を撫でて、重ねるだけの柔らかいキスをした。
「……ほんとに泣くなら、抱っこしてやろうか?」
そう訊いてみると、良は泣き笑いのような顔をしてみせて、裕司の首に抱きついてきた。
大きな子どもだ、と思って、欲情よりも庇護欲が勝って、抱き返してやると、良はくぐもった声で呟いた。
「あんたほんとに俺の身体好きなんだね……」
それが確かめるような響きを持っていて、裕司は苦笑しながら良の背中をとんとんと叩く。もう何度抱き締めたか知れない、温かくて細い、愛しい身体だ。
良にはまだそれが伝わっていなかったのか、と、彼の心がそのことを受け止めるのを待った。
「……ねえ」
直接鼓膜に囁きかけるような声で、親しんだ呼び方をされて、それがひどく心地よくて、酔ってしまいそうだと思う。
「俺も……あんたのこと好きなの伝わってる?」
裕司はつい破顔する。そう訊いてくる彼の心があまりにもいじらしくて、たまらなかった。
「伝わってるよ。お前は意外と顔によく出るからな」
「……」
「俺じゃなかったら、こんな顔しないんだろうなって思って、浮かれてるよ」
そう言って、やんわりと良を引き剥がしてその顔を見下ろす。肌を赤らめて、困ったような顔をしながら、見返してくるのがどうしようもなく可愛かった。
「ねえ……」
「ん?」
「……もう一回キスして」
裕司は笑いながら、その唇に口づける。きっともう彼は口づけで安心してしまうに違いなかった。
顔を離すと、黒く濡れた幼い目が見上げてくる。床の中でそんな目をされたらたまらないな、と思いながら、裕司は言った。
「なあ、俺もお前にしてほしいことがあるんだが」
「なに……?」
問い返してきた良は、声音も、表情も、やけに無防備だった。
「こんなときぐらい、名前で呼ばないか?」
良はいくらか目を見開いて、そして瞬いた。
彼は裕司の名前をよく覚えているくせに、まだ一度も名前で呼んでくれたことがない。こだわっているつもりはなかったが、彼の声で呼んでほしいという気持ちは確かにあった。
「な……何て呼んだらいいの……」
「何って、普通に下の名前で」
良はやけに躊躇って、目を泳がせ、裕司の顔をちらちらと窺った後、ごく小さな声で、裕司さん、と言った。
「……あんまりじろじろ見ないでほしいんだけど……」
その言い方に裕司は苦笑する。機嫌を取るような気持ちでその頬を撫でた。
「触るのはよくて、見るのはだめなのか?」
「……触られるのは気持ちいいけど、見られてるだけってどうしたらいいのかわかんないよ」
もっともだ、と思って、裕司は身を屈めて良の首に口づける。それを待っていたかのように、良の手が裕司の背中に回された。
首から肩に、胸に唇を這わせて、ごく小さな乳首を舐めると、ひや、と裏返った声がした。
「ちょ……そこ舐めんの?」
戸惑ったように言われて、裕司は良の顔を見る。良は思った以上に困った顔をしていた。
「いやか?」
「いやっていうか……、……てか、あんた、舐めるの好きなの?」
ここまで来て誤魔化すのも変な話だと思って、裕司は良の腰を撫でつつ言った。
「そうだなぁ、好きだと思うとキスしたくなるし舐めたくなる」
「……」
良はすぐに応答しなかった。嫌がらないならやめる理由はないぞと言う代わりに、親指の腹で乳首を転がしてやると、白い肩がわずかに震えて、どうやらそこは敏感なようだと察せられた。
「……そんなとこ触って楽しいの」
いよいよ弱い声で良は呟いた。恥ずかしいのか、いたたまれないのか、いずれにしても、嫌悪されている気配は感じられなかった。
「楽しいに決まってるだろ。ずっと触りたかったんだから」
そう言うと、良は拗ねた子どものような目をして、裕司の耳を引っ張ってきた。
「いたたた、痛ぇよ」
なんだ、と顔を覗き込むと、子どもじみた声が小さく呟いた。
「……なんでもっと早くしてくんなかったの」
裕司は瞬く。何に不満を述べられているのだろうと、考え込みそうになってしまった。
「なんでも何も……そんなホイホイ手ぇ出せねぇって言ったろうが」
「……あんたって、めんどくさいね……」
どの口が言うんだ、と思ったが、良はどういうわけか泣き出しそうな顔をしていて、裕司は何も言えなかった。
わがままも文句も言うようになったくせに、まだ胸の中に感情を溜め込んでいるのかと、慰めるように頬を撫でて、重ねるだけの柔らかいキスをした。
「……ほんとに泣くなら、抱っこしてやろうか?」
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大きな子どもだ、と思って、欲情よりも庇護欲が勝って、抱き返してやると、良はくぐもった声で呟いた。
「あんたほんとに俺の身体好きなんだね……」
それが確かめるような響きを持っていて、裕司は苦笑しながら良の背中をとんとんと叩く。もう何度抱き締めたか知れない、温かくて細い、愛しい身体だ。
良にはまだそれが伝わっていなかったのか、と、彼の心がそのことを受け止めるのを待った。
「……ねえ」
直接鼓膜に囁きかけるような声で、親しんだ呼び方をされて、それがひどく心地よくて、酔ってしまいそうだと思う。
「俺も……あんたのこと好きなの伝わってる?」
裕司はつい破顔する。そう訊いてくる彼の心があまりにもいじらしくて、たまらなかった。
「伝わってるよ。お前は意外と顔によく出るからな」
「……」
「俺じゃなかったら、こんな顔しないんだろうなって思って、浮かれてるよ」
そう言って、やんわりと良を引き剥がしてその顔を見下ろす。肌を赤らめて、困ったような顔をしながら、見返してくるのがどうしようもなく可愛かった。
「ねえ……」
「ん?」
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