ヒロインは放棄します！〜私はお茶を極める！〜

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「グーは……大いに悩めばいいと思うよ」

あれ？
グーの事じゃないのか

……ん？
そもそもグーが何に悩んでいるか知ってる口ぶり？

「ミズキはどうしてキーマンに会ったの？」

……キーマン？

「誰？」
「あー……路上孤児の親玉、いつも銅像広場でヘラヘラしてる子」

へぇ、アイツの名前ってキーマンって言うんだ
どっかで聞いたことがあるような……

「ミズキ？」
「あ、えっと、なんでそんな事聞くの？」

そうだ
なんでサムがそんな事聞くのか
そもそもなんで私がキーマンに会った事を知ってるのか……

「……それは」

それは？

少し話が長引きそうな気がしてちょこんと飛び出た石に私は腰掛ける
サムにも進めると戸惑いながらも座り、視線をさ迷わせながらゆっくりと口を開く

「僕、実は……」

ゴクリ、と唾を飲む音が聞こえた

実は、なんて前置き
大袈裟なカミングアウトでも無いだろうに
と思いながらも考えうる最悪な告白を考えてしまう

私にとって最悪になりうる事態と言えば乙女ゲームの舞台が開始する事だ
ならば彼が乙女ゲームの……

「路上孤児だったんだ」

攻略対象である、とか……？

「そ、そうなんだ……」

えっと、最悪の事態では無いようだけど路上孤児だったってカミングアウトだけ？

いや、隠すべき事だと思うけど！
それってそんなに重大発表的に言うこと？？？

「サムって言うのはシスターが付けてくれた仮の名前でね、路上成果していた時はキーマンが付けてくれたナッツって名乗ってたんだ」

……え？
ナッツ……ナッツって、乙女ゲームの攻略対象である情報屋の補佐役の名前じゃなかった？

情報屋の名前は確か……キーマン

「まさか……」
「驚くよね、違う名前だとか言われても……ミズキ？」

いや、まさか……まさか、まさかサムが登場人物だったなんて！！
しかも結構重要な役割よ！？

キーマンとヒロインを引っ付けて静かに去っていく有難くも可哀想な役柄よ！？

サム……優しい奴とは思ってたけど可哀想な人だったのね

いや、まぁ……でも、うん
納得かな

「えっと、サムはナッツって呼んで欲しいの？」

攻略対象に耳つんぼ天使が入って、サムが入っていなかったのかがなんか納得行かないわぁ

そもそもあの天使の登場は無いものだったのかもしれないけどね

「いや……そうじゃなくて、キーマンとの事を聞きたかったんだ、僕の事は今まで通りサムって呼んで？僕がキーマンと知り合いだって事を言いたかっただけなんだ」

知り合いって言うより悪友って感じじゃないの？
そもそもキーマン？とは今日初めて喋った訳だし……

「サム、私の事探ってたの？」
「ち、違ッ……探ってなんかいないよ！ちょっと見てただけ！」

おいおい、それは見張ってたって事かな？