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辿り着いたのは路地裏ではなく、謎の銅像の立つ広場

いつもは遠目で見ていただけだから、彼等に自分から近づくのは初めてだ

「ねぇ、お願いがあるんだけど」

ずっと観察していて、リーダー格っぽいと当たりを付けていた子に話かける

「なぁに?」

きゅるん♡
と効果音でも着きそうな庇護欲を唆る笑顔で振り向いた少年……

私を視界に入れた瞬間、瞳の奥のハイライトが消えた……
しかし!!笑顔はそのままだ!!
なんと言うプロ意識!!

「お願いって?迷子?」
「迷子じゃないよ、私はあそこの孤児院の子なんだけど「金がねぇなら帰れ」

完全に金にならないと分かるまで演技を続けるなんて君、俳優になれるよ

チッと舌打ちをして座り直す少年

子供の眉間に皺って……
将来、極悪人顔になるから辞めなよ

「お願いがあるんだってば」
「知らねぇよ、食いもんでも持ってんのか?持ってねぇだろ」

うん、持ってないね
お金も食べ物も私が少年に差し出せる物は持っていない

そう、物は持ってない

「知識は?君が目も向けていない物が食べ物になると言ったら?」

彼等に計算や文字を教えるのは、ハッキリ言って時間の無駄だ
今日明日の飯を必要とする彼等には来るかも分からない将来に役立つスキルなんて覚える必要すら感じないだろう

ただし、食べ物に関する知識だったら?
己が知らない物が食べ物になると言われたら?

「……巫山戯てんのか?」

確かに彼等は何でも口にいれて来たのだろう
野ネズミの肉も木の実も生ゴミや土だって食べて生き抜いて来たに違いない

だから今更私に「これは食べ物だよ」と教えられても「知ってるよ!」ってなると思うのも当然だろう

「巫山戯てない、2日前に花売りをしていた子が取ってきた花は覚えてる?」
「……ぁあ」

聞く気になってくれたようで嬉しいよ

そう、2日前に町の外に花を取りに行き、取ってきた花を売っていた子が持っていた花
その中に私の知っている花があった

朝顔を少し小さくしたような形状の薄紫色の花とスっと伸びた茎の先にナスの花ににた形状の小花が数個ついた花
前者はさつまいも、後者はじゃがいもの花だ

多分彼等でも根菜の存在は知らないのでは無いだろうか
と花の存在を示すと眉をギュッとよせる少年……

「さっさと教えろ……」
「私のお願い聞いてくれる?」

別に先に教えてもいいんだけど、なんか悔しいから言質を取りたい!

「……役に立ったら聞いてやる」
「それっていつ分かる?言ってすぐ?食べてから?それとも食べて安全だと分かるまで?」
「はぁ……食いもんだって言うなら食ってからだよ」

呆れられても君の常識なんて流石に分からないよ
でも、食べてからなら……

「それは私が調理法を教えてから?君が食べるまで?それとも君の周りの子達も食べるまで?」
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