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「巫山戯んな!!!」
「え???」

あ、いや
君に言ったんじゃないけど、君の存在も否定はしたい

「……ちょっと混乱してるみたいで、すみません」
「いや、僕は大丈夫だよ」

聞いてない
ゲーム上での話がリアルで異世界に飛ばされる承諾だったとか知らない
そんな話聞いたことないし!!!

『私を思い出した時点で準備は整っております』
とか言われても私の準備は全く、微塵も、一生、これっぽっちも、整っちゃいないっての!!!

「えっと、君大丈夫?」
「大丈夫じゃありません」

うん、早急に帰還を希望する
世界の調和とか知ったこっちゃあない

乙女ゲームとかマジで勘弁して欲しい
俺様自己中男の王子もナルシスト野郎の教師も脳筋馬鹿騎士も他の攻略対象だってお呼びじゃない

攻略対象ではないけど、耳つんぼ天使だって全く好みじゃない!

私が好きなのは厄介なイザコザのない平穏な日常である
トラウマや婚約者といった城壁のある相手との恋愛は端からお断りだっての!

「えっと、立てる?」

……この人まだ居たの?
いや、まぁ
私に差し出した手の行き場が無いのは分かるけどさ

「お気遣い頂きありがとうございます」

この男は乙女ゲームの攻略対象ではない
しかし、冒頭から登場するチュートリアル君だ
一応その他モブより顔の作りはしっかり表示されてたモブである

「怪我が無いなら良かったよ、僕はサム」

そう、つまりここで私は彼に名乗りを上げる
ヒロインの名前は自分で記入できるものだった

しかも、ヒロインは孤児
そして彼も孤児
22歳だった私は8歳の弱々しい女の子になってしまった……

記憶の曖昧な状態で座り込んでいた少女をサムが自分の住む孤児院に連れて行き、12歳の誕生日を迎えた少女を貴族の親が連れ帰るシナリオだ

「君の名前は……?」

うん、ごめん
黙って考え込んだままの私なんか放置したらいいのに律儀にシナリオを守って孤児院に連れて行こうとしてくれているんだよね

「私は瑞希」
「そっか、変わった名前だね」

そうだね
この世界では変わった名前だよね
日本開発のゲームなのに何故みんな外国風の名前なんだろうね

「お家まで送るよ、何処に住んでるの?」

この少年大丈夫だろうか……
この世界に詳しくはないけど、治安が悪いのは何となく分かる

シナリオだから仕方がないのかもだけど、この世界で親切心は危険を伴うと思うよ?

「あー……家は、ないんだよね」
「そうなの!?……ごめんね」

いや、君に謝られてもね
謝るべきはあの耳つんぼ天使だと思う

「えっと、それじゃあ……僕の住んでる孤児院においでよ!」

わーお!
そんな誘い方で着いていく私もどうかと思うけど、君は純粋なまま大人になると危険だよ?
もう少し人を疑うことを覚えた方がいいよ、少年

私が少女の皮を被った悪人だったらどうするのさ
この世界にはヤンデレ優男のように幼少期から暗殺を刷り込まれてる子供だっているんだから
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