幼女エルフの自由旅

信用と経験

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「婆さんが安月給の巣窟に出向くなんて珍しいな、娼婦の格を下げるのか？」
　
ドン、とミードと果実水らしきものを置きながら話しかけてきた猪は店員だろうか
この町には熊種以外の獣人は住んでいないと思っていたけれど他種も少なからず住んでいるらしい
とは言っても草食寄りの雑食種が多い様だけれど
　
「馬鹿な事をお言いでないよ、私はこの子の付き添いだよ」
「付き添い？こんな小さい嬢ちゃんが冒険者やってんのか？」
　
猪の視線がこちらを向く
因みに私は彼の鼻をガン見している最中だ
なんかさ、豚や猪の鼻って触りたくなるんだよね
泥も食べかすも付いていない綺麗な鼻だ
　
「世話になった冒険者を探してるって言うから付いてきたんだよ、それよりアンタこの子に何かしたのかい？」
「し、してねぇよ！何でこんなに見られてんだ？猪種なんて珍しくもねぇだろ！」
　
そして口元から伸びる麻色の牙
歯の一部が伸びただけの様にも見えるが、定期的に手入れを行なっているのだろう
根元以外は比較的白に近い麻色
牙で戦う訳でも無いだろうに進化の過程で損なわれなかったのが興味をそそられる
　
「この子には珍しいのかも知れないねぇ、この町に猪種なんてアンタぐらいじゃないかぃ？」
「そりゃぁこの町に住んでんのは俺ぐらいだが……もしかして森育ちのエルフなのか？」
　
それに、見るからにブラシとして上質そうな毛
　
「な、なんだ？なんか今寒気が……」
　
ブワッと逆立った毛にやはり、と見とれていると猪が数歩後ろに下がる
通常獣毛ブラシに使われるのは背中の毛は衣服に隠れて見えないが、頭部辺りの毛なんて太さも艶も丁度いいのでは無いだろうか