幼女エルフの自由旅

たまち。

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プロローグ3

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『早かったのね……』

どういう事だろう
目の前には私と同じ姿の自称神が私を捉えて若干申し訳なさそうに見ている

「私、死んだの?」

あのまま寝てしまった為に凍死でもしたのだろうか
あの世界の気温は私には寒すぎたから

『えっと……貴方の国の言葉で言ったら、二酸化炭素中毒で貴方はしんだのよ?』

戸惑いを浮かべて答える自称神

「二酸化炭素中毒?」

一酸化炭素中毒は聞いたことがあるが、二酸化炭素中毒は聞き慣れないものだ

『貴方が書いた魔法陣が発動して二酸化炭素を放出したの、一番近くにいた貴方の周りは二酸化炭素だらけだったわ』

……魔法陣?

『ぁ、魔法陣は貴方が倒れた拍子に崩れたのだけど……放出が止まるのが遅くて貴方は死に至ったの』

……魔法陣、って科学記号のこと?
ぇ、つまり
私は意図せずに魔法を発動して自殺したってこと?

『そ、そうなるのかしら……』

あー、成る程……
死に方に納得は行かないけれども仕方が無いか
これから生まれ変わるらしい身としては、死に方云々に文句を垂れていても始まらない
さぁ、まずは何から始めようか?

『ぁ、それじゃあ……最初から、この世界ワンガーラの誕生から説明するわね』

え、そこ?
もっと簡単な事でいいよ
 
『簡単に言うとね、闇の神が蒔いた種を光の神が芽吹かせて私を含める神々が管理しているの』

凄い簡単に言ったねぇ……

『それで、ワンガーラには魔素が存在するのだけれど、本来は種を蒔くのは闇の神ではなくーーーーー……』

結局話始めた自称神の説明を要約すると
本来種蒔きは大地の神が行うらしく、それを闇の神が行った事で魔素と言う魔法の原材料的な物が出来たらしい
それは僅かではあったが、種蒔きをしたことで水やりを光の神のみに闇の神が任せた事によって魔素は濃い物となり、生物達が魔法を扱う事が出来るほどに膨れ上がっていった
芽吹いた星の面倒を見るのは若手の役目になるのだが、当時若手の神であった自称神等が現在は管理を行なっていると言う
そしてこのワンガーラは濃い魔素が存在する事によって星を管理する時に神々が使うポイントの消費量が高くなったらしいが、同じく発生するポイントも高いのだそうだ
対して地球は比較的発生ポイントは低く頻度も少ないが、消費量は圧倒的に少ない為にポイントを移行して使う事を思いついた
今回、ポイントの発生量が予想より大幅に少なかった為に地球を管理する神にポイントの移行を頼んだところ見返りが面倒な物であり、やけくそ気味に移行していたので私という生物まで一緒に移動してしまったらしい

この間、自称神は私の顔色を窺いつつも散々愚痴をこぼしていた
知ったこっちゃないっての……

そしてワンガーラに存在する濃い魔素により使用できる魔法やスキルだが、自称神でさえも全てを把握出来ないほど多い物らしい
そして、その把握出来ていないほど膨れ上がっているスキルは種族の特徴や本人の努力によって培われた物である為に自称神は手出しできない
今回、私が選ぶ事ができるのは自称神の手を加えられる才能と呼ばれるものである

「一覧表みたいな物は無いの?」

どれがいい?と聞かれた所で何があるのかも分からないのでは選ぶ事も出来ないだろう

『全ては多すぎて並べられないのよ……試しに何か欲しい才能をあげてみて?』

欲しい才能ねぇ……
そもそもスキルとは資格のような物だろうか
私が持っていたのは英検に漢検に秘書検定といった誰でも聞いたことのあるような物だ
今後取りたいと考えていたのは国家資格ではあったが
そもそも多数存在するという方のスキルの取得条件は解放されていないのだろうか

『取得条件は私にも分からない……あ!!』

え、なに?
いきなり大声を出した自称神に視線を向ける

『あるわ!!取得条件が分かる才能!!私が加えられる才能よ!!』

そんなに興奮して大声を出さなくても聞こえるんだけど

『ぁ、ごめんなさ……あの、≪解析≫って言う鑑定スキルと似た才能があるのよ』

鑑定スキルと似てる才能?
どう違うのかがよく分からないんだけども……

『≪鑑定≫スキルは努力によって取得できるスキルなんだけどね、スキルを使って人物を≪鑑定≫した場合はこう出るの』

いきなり目の前に青白い光が現れた
その光は板のようになっていて、文字が書いてある

+++++++++++++++++++++++++++++++
名前:生駒 縁
称号:死人
体力:0/9623
魔力:0/0
攻撃力:12
防御力:267
スキル:集中a 話術a 速読c 不眠b
+++++++++++++++++++++++++++++++

何このステータス
称号が死人とか、体力が0/9623って……
え、もしかしてコレが普通なの?

『あ、いや……普通はこんな感じよ?』

+++++++++++++++++++++++++++++++
名前:リンリア
称号:シスター
体力:32/35
魔力:21/25
攻撃力:8
防御力:27
スキル:俊敏g 水魔法e 信仰c
+++++++++++++++++++++++++++++++

再び出てきたのは普通と言われても納得できるステータスだった
……誰のだろう
ぼんやりと姿が浮かんだのはあの親切にしてくれた兎だけれど、生憎と名前を知らない

『あ、これは貴方が一番関わった相手のステータスよ』

やっぱり?
へぇ、あの兎はリンリアって名前なんだ
可愛らしい名前だなぁ

『それで、コレが≪解析≫で見ることのできるステータスよ』

+++++++++++++++++++++++++++++++
名前:リンリア
年齢:21
状態:健康
才能:歌唱5
徳位:108
好物:赤根にんじんスープ
+++++++++++++++++++++++++++++++

重要なような、重要でないような……

『≪解析≫の才能を上げれば、身長や体重も閲覧可能になるわよ』

乙女の体重を許可も無しに見るなんてちょっと……

『で、でも!≪鑑定≫で気になったスキルに思念を飛ばせばこんなに便利な使い方も出来るわ!!』

++++++++++++++++++++++++++++++
スキル:信仰
ランク:5
特徴:少しだけ運が良くなる
条件:神を信じて1000回祈りを捧げる
+++++++++++++++++++++++++++++++

何この納得できないスキルは
つまり兎は1000回も神に祈りを捧げたって事だよね
そもそも祈りって何よ?

『えっと、日々に感謝したり……かしら』

神自身も分かっていないのに何故スキルとして存在したのか……

『で、でも!この才能はどうかしら!』

うん、良いと思うよ
まずは鑑定スキルを取得する必要がありそうだけどね
じゃないと、どんなスキルがあるのかすら分からない
才能は神が与える物であって、生まれた後の私が努力で取得出来る物では無さそうだしね

『そうよね……』

少ししょんぼりとする自称神
そう言えば、才能は幾つ選べるのかな

『ぁ、そうね……2つが限界だわ、ごめんなさい』

2つね
1つは解析に決めた
残りはどうしようか……
この世界に来たときにあんな目に遭ったし丈夫な体とか?
それよりも情報収集能力を向上させる才能がいいかも知れない
そしたら解析を上手く使いこなす事も出来るだろう

『えっと……だったらコレかな?』

自称神が呟いたと同時に再び青白い光が目の前に現れる

++++++++++++++++++++++++++++++
才能:観察
ランク:g
特徴:探索系スキルの向上を図り、周囲の情報をいち早く集める
条件:1/50の確率で神から与えられる
+++++++++++++++++++++++++++++++

50人に1人が持つ才能か
割とメジャーな才能なのかな

『庶民に多い才能よ、≪解析≫はこんな感じだけど……』

++++++++++++++++++++++++++++++
スキル:解析
ランク:g
特徴:関係性を細かく調べる
条件:1/2000の確率で神から与えられる
+++++++++++++++++++++++++++++++

そう言えば、≪解析≫があるって事は≪分析≫って才能もあるのかな

『あるわ!コレよ!』

++++++++++++++++++++++++++++++
スキル:分析
ランク:g
特徴:事柄を細かく調べる
条件:1/2000の確率で神から与えられる
+++++++++++++++++++++++++++++++

事柄?

『えっと、つまりこんな感じよ』

+++++++++++++++++++++++++++++++
性別:女
種族:兎族
父:兎族
母:兎族
兄妹:兄2 姉1 弟4 妹3
+++++++++++++++++++++++++++++++

これは……
重要なような、重要でないような
あれば便利な情報かも知れないけれど、自力で調べることが可能そうなもの
才能としてまで持たなくても言い気がする

『簡単に言えば≪解析≫は変わるけれど、≪分析≫は変わる事のない物かしら……付けるのは≪解析≫と≪観察≫の才能で良いかしら』

成る程ねぇ
やっぱり≪解析≫だけで良いかな……
 
『そう……後々才能が増えることもあるから期待するのも有りよ』
「そう言えば貴方が使ってた言霊って言うのはスキルなの?」

ふと思い出して尋ねると自称神は苦々しい顔つきに変わる
実を言えば未だにあの時の私の姿のままなのだ

『あれは、神言といって……神の扱う言葉の一つなの』

神言ねぇ
まぁ、神専用のスキルみたいなものか

『本当は神託を下す時なんかに使うのよ……本当にごめんなさい』

そんな大層な物を使われた事に多少の苛立ちはあるが、十分に反省もしているようなので掘り下げるのは辞めておこう
許した訳じゃ無いけどね?
反省もしない相手もいるからそれよりはマシだろう

『それで、あの……種族なんだけどね』

種族って、どの動物になるかって事?

『獣人だと貴方を生まれ変わらせる意味が無くなると思うの、それに……私の権限下にないし』

どういう事?

『獣人は子孫が多い変わりに寿命が短くてね、人間だと少し寿命は長いけれども弱いし……何と言っても輪廻転生が私の手を加えられるものじゃないのよね』

手を加えられる物じゃないって、一応神なんでしょ?

『神だって、神だって万能じゃないわよ……それにワンガーラに住む多くの種族は元からいた生物じゃないんだもの』

なんだかややこしい歴史がありそうだ

『ドワーフも竜人も今は子作りの時期じゃない……って事でエルフでも良いかしら』

良いかしらって……
エルフしか選べないのならば仕方ない
いや、そもそもどんな種族がいるのかすら分かっていないのだから簡単に承諾するのも可笑しいだろう

『そうよね、色んな生物が存在するけれど……』

自称神が言うにはワンガーラには大きく分けて9種類の種族が社会を築いているらしい
人間、獣人、魚人、爬人、虫人、竜人、エルフ、ドワーフ、ハーフリング
その内、自称神の管理下にあるのは
竜人
力が全てであり、弱いものは淘汰される脳筋種族
エルフ
寿命が長く、多くの知識をためる文官種族
ドワーフ
寿命は短いが、生活基盤の安定した職人種族
ハーフリング
一箇所に留まらず、様々な土地を旅する絶滅危惧種
この4種族だそうだ

『だから、貴方がワンガーラで生活するにあたってはエルフが良いと思うのだけれど……どうかしら』

どうやら人間や獣人などは何処かの星から迷宮に落ちてしまった生き物が進化した生物であるらしい
それを省いて生き抜くのが比較的簡単なのがエルフかドワーフではあるが、寿命を考えると竜人かエルフだと言うことか

「他に説明しとくことはある?」

私の言葉にビクリと肩を揺らす自称神

『あの……生まれ変わらせるのには、そのぉ』

そんなモゴモゴ言わずにハッキリ言ってくれて良いのに
どうせ伝えようが伝えまいが状況は変わらないのだろうしね

『そ、そうよね!』

気合を入れた自称神が言うには
本来は生まれ変わった場合、赤子の間に徐々に記憶が消えるのだという
しかし元々ワンガーラの魂ではない私にはそれが応用されない
よって、私の記憶を一時的に消すことになる
生まれた後に急に思い出す事になるだろうと言うことだ
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