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第28話 敵国ノクトリア
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不老不死の治療が開始されてから半年近くが経過した。
治療を止めたイチローの超回復力は変化しなくなり、ビールを飲み続けたサクラは大幅に低下した。強炭酸水を飲み始めた私も大幅に低下し、わずかに身長が伸びたようだ。
予想通り炭酸飲料が特効薬だったのだ。
探しものは案外近くにあるものだと言われるが、分かってみると呆気ないものだ。
イチローがコーラを持って帰ってきたときは、あれほどバカにしたのにね。
サクラは超回復力の低下に伴い、戦闘力が大幅に落ちているようだ。
最近ではハンデなしでカトーと互角となっているらしく、戦力が逆転するのは時間の問題と思われる。
私とイチローの関係も変わりつつある。
2人で外出することも増え、その際には手を繋いで歩くようになった。
先日は指輪を贈ってくれた。私の星では婚約者に指輪を贈る習慣はなかったのだが、地球ではこのような習慣があるためらしい。
いずれ私達は日本で夫婦になるのだと実感した。
そんな感じで私達の生活は日々充実してきており、明るい未来が待っていると思っていた。
「おい、大変だ。ニュースを見てみろ!」
誰かが大声で叫んでいた。
私はイチローと一緒にテレビを見る。
どのチャンネルでも同じニュースを放送している。日本だけでなく世界中どこでもだ。
内容を要約すると、こうだ。
・日本が異星人の攻撃を受け、多くの人質を取られた。
・異星人から地球人に対して奴隷になるか、全面戦争となるかの選択を迫っている。
・異星人は地球人を絶滅させるだけの力を持っていると言っており、その手段は強力なウィルス兵器だということ。
・異星人は【ノクトリア】と名乗っていること。
・選択のタイムリミットは10日間であること。
ニュースが一通り流れたあと、ボスから会議室へ集合の呼び出しがあった。
「皆、ニュースは見たと思う。私達の移住すべき星が侵略に遭っているということだ。しかも強力なウィルス兵器を持つ【ノクトリア】と名乗る異星人だという……これは恐らく、私達の国を滅ぼした連中の可能性が高い」
「【ノクトリア】と言えば……敵国の名前でしたね。攻撃手段が強力なウィルス兵器というのも共通ですし、偶然とは考えにくいですね」
ナカマツが神妙な表情でそう告げた。
ナカマツはウィルスの解析だけでなく、ウィルス兵器を使った可能性がある国、その後の世界情勢まで調査していた。
「でも、【ノクトリア】もウィルス兵器で滅亡したはずでは?」
「そうです。ボスが仰るように【ノクトリア】は滅亡していますが、一部の人間が私達と同じ様に宇宙に退避した可能性があります。兵器を作った側であればウィルスを持って脱出することも可能かもしれません」
「ふむ、そうだな。現時点ではまだ可能性の段階だが、日本への移住を考えている私達にとって大きな問題が起きてしまった。しかもタイムリミットが短すぎる。そこで皆の意見を聞きたいと思う。まずはカトー、君はどう思う?」
「俺は軍人だったから、当然戦うべきだと思う。地球は救うべきだし、やつらは俺達の大事な人を奪った仇である可能性が高いからだ。やつらが許されることはあってはならないと思う」
「なるほど、サクラはどう思う?」
「私もカトーと同意見よ。見逃す選択肢は無いと思うし、今なら私達の存在を知られていないだろうから作戦も立てやすいはずよ」
「戦闘担当は2人とも戦うという意見だな。ナカマツはどうだ?」
「医師の立場としても、ウィルス兵器の存在を明らかにされては……ここで消えてもらうしかありません」
「エディはどうだ?」
「俺様も海賊野郎の討伐に賛成なんだが、戦う前に連中のウィルスが俺達の国を滅亡させたものと同じかを確認したいところだな。もし違うウィルスだった場合はカトーとサクラでも非常に危険だ。逆に同じウィルスだった場合、俺達には耐性があるので有利に働くだろうしな」
「なるほど、もっともな意見だな。イチローはどうだ?」
「俺も皆と同意見だよ。奴らが仇かは分からないけど、俺達と同じような悲劇が生まれるのは防ぎたいと思う」
「ハカセはどうだ?」
私は戦争の頃は子供だったので、詳しい情勢はほとんど知らない。
戦いは怖いし、もしカトーやサクラに何かあったらと思うと……正直どうしていいのか分からない。
「私は正直どうすべきなのか分かりません。戦うべきのようにも思いますが、この戦いで誰かが欠けるようなことはあってはならないとも思います」
「そうだね、ハカセの言うこともよく分かる。私達は7人で家族だからな。だが、意見をまとめると、やはり戦うべきなのだと私も思う。カトー、サクラ……やってくれるか?」
「任せてください」
「分かりました」
カトーとサクラが同時に答える。
これまでも2人が戦ったことはあったけど、今度は情報が少なすぎる。
特にサクラの戦闘力が大幅に落ちていることもあり、不安が頭をよぎる。
「サクラ……戦闘力が落ちているんだから無理はしないでね。絶対生きて帰ってくるんだよ」
「あたりまえだろ。今まで私が負けたことはあったか?どんな時でも絶対勝つのがサクラさんだぜ」
そう言って、サクラが頭を撫でてくれた。
うん。知ってる。サクラは絶対負けないんだ。
でも……涙がこぼれてきてしまう。
「詳細な作戦会議は情報が集まり次第行うこととする。今日は解散だが、各自できることをやってほしい」
会議は解散となり、各自が部屋に戻っていく。
私は涙が止まらなかったが、イチローが優しく抱きしめてくれた。
治療を止めたイチローの超回復力は変化しなくなり、ビールを飲み続けたサクラは大幅に低下した。強炭酸水を飲み始めた私も大幅に低下し、わずかに身長が伸びたようだ。
予想通り炭酸飲料が特効薬だったのだ。
探しものは案外近くにあるものだと言われるが、分かってみると呆気ないものだ。
イチローがコーラを持って帰ってきたときは、あれほどバカにしたのにね。
サクラは超回復力の低下に伴い、戦闘力が大幅に落ちているようだ。
最近ではハンデなしでカトーと互角となっているらしく、戦力が逆転するのは時間の問題と思われる。
私とイチローの関係も変わりつつある。
2人で外出することも増え、その際には手を繋いで歩くようになった。
先日は指輪を贈ってくれた。私の星では婚約者に指輪を贈る習慣はなかったのだが、地球ではこのような習慣があるためらしい。
いずれ私達は日本で夫婦になるのだと実感した。
そんな感じで私達の生活は日々充実してきており、明るい未来が待っていると思っていた。
「おい、大変だ。ニュースを見てみろ!」
誰かが大声で叫んでいた。
私はイチローと一緒にテレビを見る。
どのチャンネルでも同じニュースを放送している。日本だけでなく世界中どこでもだ。
内容を要約すると、こうだ。
・日本が異星人の攻撃を受け、多くの人質を取られた。
・異星人から地球人に対して奴隷になるか、全面戦争となるかの選択を迫っている。
・異星人は地球人を絶滅させるだけの力を持っていると言っており、その手段は強力なウィルス兵器だということ。
・異星人は【ノクトリア】と名乗っていること。
・選択のタイムリミットは10日間であること。
ニュースが一通り流れたあと、ボスから会議室へ集合の呼び出しがあった。
「皆、ニュースは見たと思う。私達の移住すべき星が侵略に遭っているということだ。しかも強力なウィルス兵器を持つ【ノクトリア】と名乗る異星人だという……これは恐らく、私達の国を滅ぼした連中の可能性が高い」
「【ノクトリア】と言えば……敵国の名前でしたね。攻撃手段が強力なウィルス兵器というのも共通ですし、偶然とは考えにくいですね」
ナカマツが神妙な表情でそう告げた。
ナカマツはウィルスの解析だけでなく、ウィルス兵器を使った可能性がある国、その後の世界情勢まで調査していた。
「でも、【ノクトリア】もウィルス兵器で滅亡したはずでは?」
「そうです。ボスが仰るように【ノクトリア】は滅亡していますが、一部の人間が私達と同じ様に宇宙に退避した可能性があります。兵器を作った側であればウィルスを持って脱出することも可能かもしれません」
「ふむ、そうだな。現時点ではまだ可能性の段階だが、日本への移住を考えている私達にとって大きな問題が起きてしまった。しかもタイムリミットが短すぎる。そこで皆の意見を聞きたいと思う。まずはカトー、君はどう思う?」
「俺は軍人だったから、当然戦うべきだと思う。地球は救うべきだし、やつらは俺達の大事な人を奪った仇である可能性が高いからだ。やつらが許されることはあってはならないと思う」
「なるほど、サクラはどう思う?」
「私もカトーと同意見よ。見逃す選択肢は無いと思うし、今なら私達の存在を知られていないだろうから作戦も立てやすいはずよ」
「戦闘担当は2人とも戦うという意見だな。ナカマツはどうだ?」
「医師の立場としても、ウィルス兵器の存在を明らかにされては……ここで消えてもらうしかありません」
「エディはどうだ?」
「俺様も海賊野郎の討伐に賛成なんだが、戦う前に連中のウィルスが俺達の国を滅亡させたものと同じかを確認したいところだな。もし違うウィルスだった場合はカトーとサクラでも非常に危険だ。逆に同じウィルスだった場合、俺達には耐性があるので有利に働くだろうしな」
「なるほど、もっともな意見だな。イチローはどうだ?」
「俺も皆と同意見だよ。奴らが仇かは分からないけど、俺達と同じような悲劇が生まれるのは防ぎたいと思う」
「ハカセはどうだ?」
私は戦争の頃は子供だったので、詳しい情勢はほとんど知らない。
戦いは怖いし、もしカトーやサクラに何かあったらと思うと……正直どうしていいのか分からない。
「私は正直どうすべきなのか分かりません。戦うべきのようにも思いますが、この戦いで誰かが欠けるようなことはあってはならないとも思います」
「そうだね、ハカセの言うこともよく分かる。私達は7人で家族だからな。だが、意見をまとめると、やはり戦うべきなのだと私も思う。カトー、サクラ……やってくれるか?」
「任せてください」
「分かりました」
カトーとサクラが同時に答える。
これまでも2人が戦ったことはあったけど、今度は情報が少なすぎる。
特にサクラの戦闘力が大幅に落ちていることもあり、不安が頭をよぎる。
「サクラ……戦闘力が落ちているんだから無理はしないでね。絶対生きて帰ってくるんだよ」
「あたりまえだろ。今まで私が負けたことはあったか?どんな時でも絶対勝つのがサクラさんだぜ」
そう言って、サクラが頭を撫でてくれた。
うん。知ってる。サクラは絶対負けないんだ。
でも……涙がこぼれてきてしまう。
「詳細な作戦会議は情報が集まり次第行うこととする。今日は解散だが、各自できることをやってほしい」
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