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第23話 「からい」と「つらい」は同じ漢字
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「サクラ氏、これが最後の一品だよ」
「ちょ……何これ?カップが近づいただけで目が痛いんだけど!」
「最後は超激辛やきそばを用意したよ。パッケージはこれだ!」
超激辛やきそばのパッケージを3人に見せる。
サクラ氏の顔色がみるみる青ざめていく……。
「イチロー、ふざけないでよ。そんなもの食えるわけないじゃん!すっごい怖い顔の人が青ざめて泣いているパッケージじゃない……」
「無理ならギブアップしてもいいんだよ。カトー氏とエディ氏はやる気みたいだけど?」
「くっ、覚えてなさいよ!わかったわよ!食べてやろうじゃないの!」
絶望の表情を浮かべるサクラ氏に対し、カトー氏とエディ氏は追い上げのチャンスと見て、再びやる気を出してきたようだ。
ルールではサクラ氏は2人の倍なので4食分になるのに対し、カトー氏とエディ氏はそれぞれ1食分で良いのでかなり有利になるのだ。
「ぎゃああ……痛い。辛いじゃなくて痛い……」
たった一口で痛さにのたうち回るサクラ氏。
さすがにこれはやりすぎだったか……。
「さ、サクラ……大丈夫?無理しないでね……」
「は、はかしぇ……わたし、だめかもしゅれない……」
ハカセの心配に応えようとしているのだが、痛みで呂律が回っていない。
泣きながら、麺を口に運ぶが少しずつなので麺の量はほとんど減っていかない。サクラ氏はこれを4食分食べないといけないのだ。
そこにカトー氏とエディ氏も追いついてきた。
「イチロー、こっちにも例のやつをくれ!」
2人にも超激辛やきそばを渡す。
まずはカトー氏が口に運んだ。
「ぎゃあああ……これは本当に痛い!」
サクラ氏に続いてカトー氏も、痛みにのたうち回る。エディ氏はなんとか耐えようとしているようだ。
大人2人が泣きながらのたうち回るという地獄絵図が目の前に広がっている。
まあ、俺の仕業なんだけど……。
「イチロー君、これはダメだ!もう中止しよう。サクラ君、カトー、エディもそれでいいね?」
この惨状を前にして、ボス氏が中止の提案をしてきた。
俺もさすがにこれは無理だと思った矢先……。
「とめるにゃよ……これはしょうぶなんにゃよ……」
よく聞き取れないのだが、サクラ氏は続行を希望しているようだ。
「あちゃりまえにゃ……やっとしゃくらにかちぇるしゃんすなんにゃ……」
カトー氏も続行を希望している。さすが、防衛のツートップ!
俺なら、確実にギブアップしているというのに。
「俺も続行でいいぞ。確かに辛いが……あと少しだ。最後まで付き合うぜ!」
エディ氏も続行希望なのだが……まさか……この辛さに耐えられるとでも言うのか!
まさかのダークホース出現に沸き上がる。
その状況に焦ったのか、サクラ氏は意を決して例の丸呑み作戦で一気にスパートをかけた……が、3食分を完食した頃には手が止まっていた。
「サクラの手が止まったな。今がチャンスだな!カトー、それをこっちに寄越せ」
エディ氏はそう言うと、1食分を完食した後にカトー氏の分まで食べ始めた。
お互いに残り1食となり、サクラ氏はずっと黙って目を閉じている。一方、エディ氏は少しずつではあるが食べ続けている。
これはサクラ氏の敗北か?と誰もが思ったその瞬間……。
サクラ氏がカッと目を見開いて、一気に最後の1食分を完食した。
「ふう、なかなかキツかったわね……口とお腹が痛い……」
サクラ氏はそう言うと、お腹を押さえて横になった。
「くそう……またサクラに勝てなかったか……もう少しだったのに」
カトー氏が地団駄を踏んで悔しがっている。
俺が知る限り、戦闘訓練以外でもカトー氏がサクラ氏に勝ったところを見たことが無い。
どういう訳か、どんな勝負でもサクラ氏が勝ってしまうのだ。
「サクラ……教えてほしいんだが、俺様は一体何で負けたんだ?俺様が勝っていた流れだったはずだ」
エディ氏も納得がいかないようだ。
まあ、実際に俺もエディが勝つと思ってたしな……。
サクラ氏の強さは反則レベルだよな。
「そうかしら?私から見たら常に私が勝っていたはずよ。だから実際に私が勝ったじゃない」
「全く理解できないな……。まあ、確かに俺様は負けた訳だが……」
「私はちゃんと計算していたわよ。まずは一食分を食べてみて、4食分を一気に食べるのは不可能だと判断したわ。なのでギリギリまで一気に食べてしまって、口とお腹のダメージが回復するまでじっと待っていたのよ。で、最後の1食分が食べられるくらいに回復したから一気に片付けたという感じね。これはね、ギリギリ回復が間に合うと思ってた」
「サクラって本当に凄いよな……」
カトー氏が真剣な表情で呟いた。
サクラ氏を一番近い所で見ていたカトー氏だから分かることもあるのだろう。
「私は負けるのが嫌いだからね。どんな手を使っても勝ちたいと思ってるし、勝つためにできるだけ頭を使うことを心がけてる。勝負を決める一番大事な事はね、勝ちへの執着心だと思うわよ」
「そうか、今ならはっきり分かるけど、俺はサクラより勝ちへの執着心は低いのだろうな……。俺はサクラと違ってダメージが回復する時間を正確に把握できていないからな」
勝負に負けて落ち込んでいるかと思いきや、カトー氏は何かを掴んだような清々しい顔をしている。
一方、サクラ氏はさすがに4食分は限界だったらしく、青ざめた顔のまま横になっている。
「いや、いい勝負だったと思うわよ。最後のアレはさすがにキツかったし、エディがあそこまでやるとは計算外だったわよ」
「でもねサクラ、こういう無茶な戦い方は良くないと思うの。今回はイチローが全面的に悪いと思うけどね」
ハカセはいつも正論を言うので反応に困る。
「まああれだな……盛り上げるために色々考えた結果なんだよ。実際盛り上がっただろ?」
「いや、ダメね。イチローはいつもそう……。すぐに悪ノリしちゃうのが問題なのよ!ちゃんと皆に謝って!」
ハカセがプンプン怒っている。その雰囲気で他の皆も俺を睨んでいる。
これはやりすぎだったらしい……。
「悪ノリしてしまい、本当にすみませんでした。」
「当然、イチローもあの焼きそばを食べるんだよな?えっと残りは3食分もあるんだな~」
サクラ氏がニヤニヤ笑っている。
その後、宇宙船内に俺の悲鳴が響いたのは言うまでもない。
「ちょ……何これ?カップが近づいただけで目が痛いんだけど!」
「最後は超激辛やきそばを用意したよ。パッケージはこれだ!」
超激辛やきそばのパッケージを3人に見せる。
サクラ氏の顔色がみるみる青ざめていく……。
「イチロー、ふざけないでよ。そんなもの食えるわけないじゃん!すっごい怖い顔の人が青ざめて泣いているパッケージじゃない……」
「無理ならギブアップしてもいいんだよ。カトー氏とエディ氏はやる気みたいだけど?」
「くっ、覚えてなさいよ!わかったわよ!食べてやろうじゃないの!」
絶望の表情を浮かべるサクラ氏に対し、カトー氏とエディ氏は追い上げのチャンスと見て、再びやる気を出してきたようだ。
ルールではサクラ氏は2人の倍なので4食分になるのに対し、カトー氏とエディ氏はそれぞれ1食分で良いのでかなり有利になるのだ。
「ぎゃああ……痛い。辛いじゃなくて痛い……」
たった一口で痛さにのたうち回るサクラ氏。
さすがにこれはやりすぎだったか……。
「さ、サクラ……大丈夫?無理しないでね……」
「は、はかしぇ……わたし、だめかもしゅれない……」
ハカセの心配に応えようとしているのだが、痛みで呂律が回っていない。
泣きながら、麺を口に運ぶが少しずつなので麺の量はほとんど減っていかない。サクラ氏はこれを4食分食べないといけないのだ。
そこにカトー氏とエディ氏も追いついてきた。
「イチロー、こっちにも例のやつをくれ!」
2人にも超激辛やきそばを渡す。
まずはカトー氏が口に運んだ。
「ぎゃあああ……これは本当に痛い!」
サクラ氏に続いてカトー氏も、痛みにのたうち回る。エディ氏はなんとか耐えようとしているようだ。
大人2人が泣きながらのたうち回るという地獄絵図が目の前に広がっている。
まあ、俺の仕業なんだけど……。
「イチロー君、これはダメだ!もう中止しよう。サクラ君、カトー、エディもそれでいいね?」
この惨状を前にして、ボス氏が中止の提案をしてきた。
俺もさすがにこれは無理だと思った矢先……。
「とめるにゃよ……これはしょうぶなんにゃよ……」
よく聞き取れないのだが、サクラ氏は続行を希望しているようだ。
「あちゃりまえにゃ……やっとしゃくらにかちぇるしゃんすなんにゃ……」
カトー氏も続行を希望している。さすが、防衛のツートップ!
俺なら、確実にギブアップしているというのに。
「俺も続行でいいぞ。確かに辛いが……あと少しだ。最後まで付き合うぜ!」
エディ氏も続行希望なのだが……まさか……この辛さに耐えられるとでも言うのか!
まさかのダークホース出現に沸き上がる。
その状況に焦ったのか、サクラ氏は意を決して例の丸呑み作戦で一気にスパートをかけた……が、3食分を完食した頃には手が止まっていた。
「サクラの手が止まったな。今がチャンスだな!カトー、それをこっちに寄越せ」
エディ氏はそう言うと、1食分を完食した後にカトー氏の分まで食べ始めた。
お互いに残り1食となり、サクラ氏はずっと黙って目を閉じている。一方、エディ氏は少しずつではあるが食べ続けている。
これはサクラ氏の敗北か?と誰もが思ったその瞬間……。
サクラ氏がカッと目を見開いて、一気に最後の1食分を完食した。
「ふう、なかなかキツかったわね……口とお腹が痛い……」
サクラ氏はそう言うと、お腹を押さえて横になった。
「くそう……またサクラに勝てなかったか……もう少しだったのに」
カトー氏が地団駄を踏んで悔しがっている。
俺が知る限り、戦闘訓練以外でもカトー氏がサクラ氏に勝ったところを見たことが無い。
どういう訳か、どんな勝負でもサクラ氏が勝ってしまうのだ。
「サクラ……教えてほしいんだが、俺様は一体何で負けたんだ?俺様が勝っていた流れだったはずだ」
エディ氏も納得がいかないようだ。
まあ、実際に俺もエディが勝つと思ってたしな……。
サクラ氏の強さは反則レベルだよな。
「そうかしら?私から見たら常に私が勝っていたはずよ。だから実際に私が勝ったじゃない」
「全く理解できないな……。まあ、確かに俺様は負けた訳だが……」
「私はちゃんと計算していたわよ。まずは一食分を食べてみて、4食分を一気に食べるのは不可能だと判断したわ。なのでギリギリまで一気に食べてしまって、口とお腹のダメージが回復するまでじっと待っていたのよ。で、最後の1食分が食べられるくらいに回復したから一気に片付けたという感じね。これはね、ギリギリ回復が間に合うと思ってた」
「サクラって本当に凄いよな……」
カトー氏が真剣な表情で呟いた。
サクラ氏を一番近い所で見ていたカトー氏だから分かることもあるのだろう。
「私は負けるのが嫌いだからね。どんな手を使っても勝ちたいと思ってるし、勝つためにできるだけ頭を使うことを心がけてる。勝負を決める一番大事な事はね、勝ちへの執着心だと思うわよ」
「そうか、今ならはっきり分かるけど、俺はサクラより勝ちへの執着心は低いのだろうな……。俺はサクラと違ってダメージが回復する時間を正確に把握できていないからな」
勝負に負けて落ち込んでいるかと思いきや、カトー氏は何かを掴んだような清々しい顔をしている。
一方、サクラ氏はさすがに4食分は限界だったらしく、青ざめた顔のまま横になっている。
「いや、いい勝負だったと思うわよ。最後のアレはさすがにキツかったし、エディがあそこまでやるとは計算外だったわよ」
「でもねサクラ、こういう無茶な戦い方は良くないと思うの。今回はイチローが全面的に悪いと思うけどね」
ハカセはいつも正論を言うので反応に困る。
「まああれだな……盛り上げるために色々考えた結果なんだよ。実際盛り上がっただろ?」
「いや、ダメね。イチローはいつもそう……。すぐに悪ノリしちゃうのが問題なのよ!ちゃんと皆に謝って!」
ハカセがプンプン怒っている。その雰囲気で他の皆も俺を睨んでいる。
これはやりすぎだったらしい……。
「悪ノリしてしまい、本当にすみませんでした。」
「当然、イチローもあの焼きそばを食べるんだよな?えっと残りは3食分もあるんだな~」
サクラ氏がニヤニヤ笑っている。
その後、宇宙船内に俺の悲鳴が響いたのは言うまでもない。
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