10 / 40
第10話 走馬灯④
しおりを挟む
警察署から3人が無事に帰還した事は大きな収穫となっていた。
大量の実弾銃に加えて、少しではあるがレーザー銃も入手することができた。
レーザー銃は弾薬を必要としない反面、エネルギーのチャージを必要とするため使い所は限られてくるが、女性でも使いやすく威力も大きいためだ。
銃だけでなく、エマが【ナビレ】を一撃で仕留めた話も留守番メンバーを驚愕させた。
この先も【ナビレ】のように銃が効きにくい敵性生物との戦闘も想定されるからだ。
エマの実力を測るため急遽チャールズとの模擬戦を行ったのだが、結果はエマの圧勝であった。
チャールズの攻撃はエマを掠ることさえなく、全て空を切るだけとなった。
ゴム弾を装填した銃をチャールズに持たせてみたが、やはりエマの動きが早すぎて1発も当てることができなかった。
軍の特殊部隊にいたチャールズが全く相手にならないほどの強さを、普通の女性だと思われていたエマが持っていたことは嬉しい誤算であった。
その分、チャールズの落ち込み方といったら……見ていられないほどだった。
そりゃあそうだよね……。
――
武器を入手したことで、新たな拠点での生活をスタートさせることができた。
資源の調達や研究資料の充実を考慮し、俺達は宇宙科学研究所に引っ越しを行った。
生活に必要な機材は3Dプリンタで作成が可能なのだが、そのためには資源と設計図データの両方が必要となる。
この研究所はどちらも豊富なので生活に困らないし、その気になれば宇宙船の建造すら可能かもしれない。
また、研究施設だけにライフラインも独自のものが用意されており、当面の生活に困らないことも判明している。
新生活に合わせて担当にも少し動きがあった。
と言っても、エマがチャールズと共に防衛担当になったことと、俺が雑務担当となったくらいだが。
雑務担当?と思ったのだが、食料確保や資材運搬など人手の足りていない仕事は多いため、毎日忙しく働いている。
問題はベラだ……。彼女に何を担当してもらうべきなのか……非常に難しかったようだ。
彼女はまだ12歳でやれることが非常に少ないためだ。
真面目な性格なので、自分が貢献できないことに後ろめたさを感じていたようだが、ダニエルがうまくフォローしてくれた。
「ベラ、君にお願いしたい仕事があるんだ」
「私でもできる仕事なら……喜んで!」
「ありがとう。実は君にお願いしたいことは学習なんだ。これから毎日勉強をして、私達を助けられるような知識を沢山身につけてほしい」
「勉強ですか?私はすぐにでも働きたいと思っていたんですが……」
「気持ちはとても嬉しいよ。でもね、焦ってはいけないな。これは君を仲間だと思っているから……これからずっと一緒に生活することを考えて、ベストだと考えたからなんだ。言い換えれば、私達は君の可能性に投資をするということだな」
「具体的には何を勉強すればいいの?」
「ここは研究所だからね、科学を中心に勉強してほしい。もし設計図を発明できれば、3Dプリンタで様々なものを作ることができるんだよ」
「そうなんだ……少しやる気が出てきたかも。勉強方法はどうすればいいの?」
「学習用の人工知能が教えてくれるみたいだよ。それでも分からないところはアダム、ジョージ、フレデリックが分担して教えるから安心してほしい」
「分かりました。早くみなさんの役に立てるよう、頑張ります」
「ありがとう、とても助かるよ」
ダニエルは笑顔でベラにお礼を言った後、仕事に戻っていった。
その様子を見ていたエマがベラに声を掛けた。
「ある意味一番大変な仕事かもしれないけど、頑張ろうね。私は勉強が苦手だからあまり教えられないけど、色々フォローするからさ」
「ありがとう。ここのみんなはとても優しくて……本当に感謝しています」
「あ、ここだけの話だけどさ……ダニエルにはベラと同じ歳の娘さんがいたんだって……勉強が好きな子だったらしいからさ、この国がこんなことになってしまって娘さんに勉強させてあげられなくなったことが残念だと思っていたみたい……」
「そうだったんですね……あんな優しいお父さんなら娘さんは幸せだったでしょうね」
「私はあんな悪人顔のお父さんは嫌だな……。それでね……ベラが暇なときに本を読んでいるのを見て、勉強が好きなら存分に学ばせてあげたいって思ったみたい。案外いい所あるよね、悪人顔なのに!」
「あはは、悪人顔言い過ぎ~」
「でもさ、人間は第一印象ってすごく大事なんだよ。そのうち化粧とかファッションとか色々教えてあげるね。私、本業はモデルだったんだ」
「道理で……すごく綺麗な人だと思ってたから、納得できました。私も大人になったら……エマみたく綺麗になれるかな?」
「なれるわよ。お姉さんが責任をもって美人にいたします!」
「やった~。大人になるのが楽しみです」
「その前に……しっかり勉強しないとね。目指せ!知的美人!」
その日から、ベラの表情はどんどん明るくなっていった。
目標があるということは、人生を有意義なものにするのだろう。
俺はベラを見て、そう思っていた。
あの事実を知るまでは……。
大量の実弾銃に加えて、少しではあるがレーザー銃も入手することができた。
レーザー銃は弾薬を必要としない反面、エネルギーのチャージを必要とするため使い所は限られてくるが、女性でも使いやすく威力も大きいためだ。
銃だけでなく、エマが【ナビレ】を一撃で仕留めた話も留守番メンバーを驚愕させた。
この先も【ナビレ】のように銃が効きにくい敵性生物との戦闘も想定されるからだ。
エマの実力を測るため急遽チャールズとの模擬戦を行ったのだが、結果はエマの圧勝であった。
チャールズの攻撃はエマを掠ることさえなく、全て空を切るだけとなった。
ゴム弾を装填した銃をチャールズに持たせてみたが、やはりエマの動きが早すぎて1発も当てることができなかった。
軍の特殊部隊にいたチャールズが全く相手にならないほどの強さを、普通の女性だと思われていたエマが持っていたことは嬉しい誤算であった。
その分、チャールズの落ち込み方といったら……見ていられないほどだった。
そりゃあそうだよね……。
――
武器を入手したことで、新たな拠点での生活をスタートさせることができた。
資源の調達や研究資料の充実を考慮し、俺達は宇宙科学研究所に引っ越しを行った。
生活に必要な機材は3Dプリンタで作成が可能なのだが、そのためには資源と設計図データの両方が必要となる。
この研究所はどちらも豊富なので生活に困らないし、その気になれば宇宙船の建造すら可能かもしれない。
また、研究施設だけにライフラインも独自のものが用意されており、当面の生活に困らないことも判明している。
新生活に合わせて担当にも少し動きがあった。
と言っても、エマがチャールズと共に防衛担当になったことと、俺が雑務担当となったくらいだが。
雑務担当?と思ったのだが、食料確保や資材運搬など人手の足りていない仕事は多いため、毎日忙しく働いている。
問題はベラだ……。彼女に何を担当してもらうべきなのか……非常に難しかったようだ。
彼女はまだ12歳でやれることが非常に少ないためだ。
真面目な性格なので、自分が貢献できないことに後ろめたさを感じていたようだが、ダニエルがうまくフォローしてくれた。
「ベラ、君にお願いしたい仕事があるんだ」
「私でもできる仕事なら……喜んで!」
「ありがとう。実は君にお願いしたいことは学習なんだ。これから毎日勉強をして、私達を助けられるような知識を沢山身につけてほしい」
「勉強ですか?私はすぐにでも働きたいと思っていたんですが……」
「気持ちはとても嬉しいよ。でもね、焦ってはいけないな。これは君を仲間だと思っているから……これからずっと一緒に生活することを考えて、ベストだと考えたからなんだ。言い換えれば、私達は君の可能性に投資をするということだな」
「具体的には何を勉強すればいいの?」
「ここは研究所だからね、科学を中心に勉強してほしい。もし設計図を発明できれば、3Dプリンタで様々なものを作ることができるんだよ」
「そうなんだ……少しやる気が出てきたかも。勉強方法はどうすればいいの?」
「学習用の人工知能が教えてくれるみたいだよ。それでも分からないところはアダム、ジョージ、フレデリックが分担して教えるから安心してほしい」
「分かりました。早くみなさんの役に立てるよう、頑張ります」
「ありがとう、とても助かるよ」
ダニエルは笑顔でベラにお礼を言った後、仕事に戻っていった。
その様子を見ていたエマがベラに声を掛けた。
「ある意味一番大変な仕事かもしれないけど、頑張ろうね。私は勉強が苦手だからあまり教えられないけど、色々フォローするからさ」
「ありがとう。ここのみんなはとても優しくて……本当に感謝しています」
「あ、ここだけの話だけどさ……ダニエルにはベラと同じ歳の娘さんがいたんだって……勉強が好きな子だったらしいからさ、この国がこんなことになってしまって娘さんに勉強させてあげられなくなったことが残念だと思っていたみたい……」
「そうだったんですね……あんな優しいお父さんなら娘さんは幸せだったでしょうね」
「私はあんな悪人顔のお父さんは嫌だな……。それでね……ベラが暇なときに本を読んでいるのを見て、勉強が好きなら存分に学ばせてあげたいって思ったみたい。案外いい所あるよね、悪人顔なのに!」
「あはは、悪人顔言い過ぎ~」
「でもさ、人間は第一印象ってすごく大事なんだよ。そのうち化粧とかファッションとか色々教えてあげるね。私、本業はモデルだったんだ」
「道理で……すごく綺麗な人だと思ってたから、納得できました。私も大人になったら……エマみたく綺麗になれるかな?」
「なれるわよ。お姉さんが責任をもって美人にいたします!」
「やった~。大人になるのが楽しみです」
「その前に……しっかり勉強しないとね。目指せ!知的美人!」
その日から、ベラの表情はどんどん明るくなっていった。
目標があるということは、人生を有意義なものにするのだろう。
俺はベラを見て、そう思っていた。
あの事実を知るまでは……。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】その同僚、9,000万km遠方より来たる -真面目系女子は謎多き火星人と恋に落ちる-
未来屋 環
ライト文芸
――そう、その出逢いは私にとって、正に未知との遭遇でした。
或る会社の総務課で働く鈴木雪花(せつか)は、残業続きの毎日に嫌気が差していた。
そんな彼女に課長の浦河から告げられた提案は、何と火星人のマークを実習生として受け入れること!
勿論彼が火星人であるということは超機密事項。雪花はマークの指導員として仕事をこなそうとするが、日々色々なことが起こるもので……。
真面目で不器用な指導員雪花(地球人)と、優秀ながらも何かを抱えた実習生マーク(火星人)、そして二人を取り巻く人々が織りなすSF・お仕事・ラブストーリーです。
表紙イラスト制作:あき伽耶さん。
異世界日帰りごはん【料理で王国の胃袋を掴みます!】
ちっき
ファンタジー
【書籍化決定しました!】
異世界に行った所で政治改革やら出来るわけでもなくチートも俺TUEEEE!も無く異世界での日常を全力で楽しむ女子高生の物語。
暇な時に異世界ぷらぷら遊びに行く日常にちょっとだけ楽しみが増える程度のスパイスを振りかけて。そんな気分でおでかけしてるのに王国でドタパタと、スパイスってそれ何万スコヴィルですか!

モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
毒小町、宮中にめぐり逢ふ
鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました🌸生まれつき体に毒を持つ、藤原氏の娘、菫子(すみこ)。毒に詳しいという理由で、宮中に出仕することとなり、帝の命を狙う毒の特定と、その首謀者を突き止めよ、と命じられる。
生まれつき毒が効かない体質の橘(たちばなの)俊元(としもと)と共に解決に挑む。
しかし、その調査の最中にも毒を巡る事件が次々と起こる。それは菫子自身の秘密にも関係していて、ある真実を知ることに……。
あやかし憑き男子高生の身元引受人になりました
森原すみれ@薬膳おおかみ①②③刊行
キャラ文芸
【あやかし×謎解き×家族愛…ですよね?】
憎き実家からめでたく勘当され、単身「何でも屋」を営む、七々扇暁(ななおうぎあきら)、28歳。
そんなある日、甥を名乗る少年・千晶(ちあき)が現れる。
「ここに自分を置いてほしい」と懇願されるが、どうやらこの少年、ただの愛想の良い美少年ではないようで――?
あやかしと家族。心温まる絆のストーリー、連載開始です。
※ノベマ!、魔法のiらんど、小説家になろうに同作掲載しております

春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる
釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。
他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。
そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。
三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。
新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる