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第6話 それって某シチューですよね

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 翌日、俺イチローとカトー氏、サクラ氏はハカセの研究室に呼び出された。
 なんでも、コーラ再現のヒントを得ることに成功したらしいのだ。

 研究室に入ったところ、目隠し拘束された地球人の姿が目に入った。
 え?これはどういうことなの?
 コーラと何の関係があるの?

「ハカセ、その人は一体……?」

 サクラ氏が恐る恐る尋ねた。
 こういう聞きにくい事を空気を読まずに言えるサクラ氏を少し尊敬する。

「この人はコーラ工場の責任者で、秘伝とされるレシピを知っている人なの。これから、この人にレシピを聞いて完全再現しようと言う訳よ」

 得意げに話すハカセ。
 いや、それ科学力とか関係ないじゃん……。完全に拉致じゃん……。
 と思ったが、ハカセの目が怖かったので心に留めておいた。

「さあ、コーラのレシピについて知っていることを洗いざらい全て話して!」

 コーラ工場の責任者に激しく詰め寄るハカセ。
 だが、コーラ工場の責任者は話す雰囲気ではないようだ。

「おい、お前のせいでまたハカセが暴走しちゃってるじゃねえか……どうすんだよ?」

 そう言ってサクラ氏が小声で俺を責めるのだが、これって本当に俺のせいなの?

「黙ってないでなんとかしろよ……ほら、お前が分析する女だとか言うから……ムキになってるんだよ」

 あ、確かに言いましたね。
 やはり俺のせいということになってしまうらしい……。
 理不尽だなと思いつつも……やはりそのままにしておく訳にもいかないだろう。

「ハカセ、ちょっとやりすぎじゃないか?少し冷静になろうよ……もしかしたら、この人レシピ知らないかもしれないじゃん?」

 そう言ってハカセをなだめてみる……。
 ところが……。

「レシピの事は……死んでも話すものか!」
 
 コーラ工場の責任者は唐突にそう叫んだ。
 せっかくフォローしたのに……レシピを知ってるって自分で言っちゃったよ……。

 あ、ほら……ハカセの顔が引き攣ってるよ……。
 また何かやらかさなければいいんだが……。
 
「そんなこともあろうかと……」

 そう言いながら、ハカセは注射器を何本か持ってきた。
 もう嫌な予感しかしない……。

「やはり、このくらいでは口を割らないようね……流石といったところかしら……。ならばここからは私の科学力で勝負よ!」

 そう言って注射器を取り上げる。

「地球で使用されている自白剤の300倍の効果がある薬。その名も【ハキタクナール】!」

 だ、ダセえ……。
 いや、その前に300倍って……。
 サクラ氏とカトー氏もあまりにダサいネーミングに唖然としている。

 だが、そんなことは気にせず、何の躊躇もなく、【ハキタクナール】をコーラ工場の責任者に注射するハカセ……。

「さあ、レシピを話すのよ!」

「ううう……し、死んでも言うもんか……」

 うめき声を上げるが……コーラ工場の責任者はまだ白状しない。
 見事な職人魂としか言いようがない。
 コーラはこのような崇高な職人によって作られていたのだ!

「バ、バカな……【ハキタクナール】が効かないなんて!ならばさらにもう一本……!」

 さらに注射するハカセ。
 ハカセの言う科学力とは一体何なのか……。

「うあああ……はあはあ……」

 コーラ工場の責任者は白目を向いている……。
 そろそろ限界のようだ……。

「ハカセ、それ以上はダメだ!死んでしまう!」

 サクラ氏とカトー氏が必死に止めに入った。
 しかし、ハカセは止まらない。

「さあ、知っていることを全て話すのよ!」

 さすがにこれ以上の薬は打たなかったが、尋問を続けるハカセ。
 怖いんですが……。
 
「ひき肉……たくあん……しおから……ジャム……にぼし……大福……味噌……を煮て、セミの抜け殻……」

 【ハキタクナール】の効果なのか、ついにコーラ工場の責任者がレシピをボソボソ話し始める。
 え?コーラってそんな材料なの?

「ふむふむ……なるほど……これで再現できる!」

 門外不出だったはずのレシピはついにハカセの手に渡ってしまった……。

「この人はもう不要ね……記憶を消して……元いた場所に転送しましょう」

 何事も無かったかのように犯罪の痕跡を消すハカセ……あなた本当に子供ですか?
 大の大人が3人もいて、何も出来ずにただ見ているだけになってしまっていた。

「では、レシピ通りに精製するのでちょっと待ってね」

 そう言ってハカセはレシピを片手にコーラの精製を始めた。
 コーラとは大分違う異様な匂いが漂い出したので、研究室を離れて会議室で待つことにした。

 ――

 俺、カトーは混乱していた。
 ハカセの大暴走を目の当たりにしたからだ……。
 ある意味ではサクラより恐ろしい……。

 とりあえず会議室に避難してきたが、もう一波乱ありそうな予感がしている。

「完成したわよ!」

 意気揚々とハカセが会議室に入ってきた。
 手には黒い液体の入った瓶が握られている。コーラなのだろうか?

「さあ、味見をしてちょうだい。うまいかおいしいかのどちらかよ!」

 思わずイチローの顔を見る。
 同時にサクラもイチローの顔を見ていたらしい。考える事は同じようだな。
 頼む、イチロー……お前が飲んでくれ。

「えっと、俺が飲むのかな?」

 雰囲気を察知し、イチローが反応した。
 そうだ、お前が飲むのだ!

「他に誰がいるのよ!イチローのために作ったんだからね!」

 ハカセにそう言われて……何も言えず、意を決して黒い液体を飲み込むイチロー……。
 そのまま動かなくなり、泡を吹いて倒れてしまった!

「やばいぞ、ナカマツ呼んでこい!」

 イチローの頬を叩きながら、サクラに叫んだ。
 サクラがナカマツを呼びに行ったのを確認しながら、俺はイチローの頬を叩き続けた。

「イチロー……ごめんね……。お願いだから死なないで!」

 ハカセは泣きながらイチローにしがみついていた。
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