4 / 16
chapter 1
×1 (4)
しおりを挟む
食事をしながら泣きはらした後、僕は、いつの間にか片付けられていたテーブルの前で座ったままでいた。薄暗い部屋のテーブル。紛争地で荒れ放題の地域の、家主の居なくなった家に連れてこられて食事をしていた。
「……あいつ、何なんだ?」
辛うじてランプがあったので、それを灯そうと手持ちの道具を漁っていた。すると、天使が指先に火を灯し、ランプに近づけると本当に点いた。
これを見て、あいつは人間ではないのは分かる。でも、天使と言うには……。
「僕がどうかした?」
「うわっ?!」
もはや音にすら気付けないほど考え込んでいた。――それより。
「……何それ」
天使の手元の服を指さして尋ねた。
「着替え。シャワーは水だけど、まあそれほど冷たくはないよ。浴びてきて」
衣食住はどうにでもできる、と天使は言っていたけれど、揃っていれば揃っているほど気味が悪くなる。それはそれで『天使』らしい、とは思うから。
* * *
「……シャワー、上がったけど」
「ん、お疲れさま。――じゃあ、着替えようか。サイズは合うと思うけど」
言われるがままに、下着だけは先に履いて。
「……細いね。あまり食べてこられなかったからだね」
「止めて」
「言うことは聞きなよ」
ぺたぺたと、天使が肌に触れてくる。肌着やズボンも、『自分で出来る』と言っても聞かず、体型を確かめるように撫でてくる。抵抗はしてるのだけど、止めてくれない。これが食い繋ぐためなんて……。
服を着終えて解放されるかと思ったとき。ぐい、と顔を近づけ、僕の顎に指を添えられた。
「綺麗にしてみたけど……美味しそうだね」
「えっ――、んんっ」
突然のキス。だって、こいつは男の身体――?!
「や、め……!」
机に押しつけられそうなほど、僕の身体が反る。一応の気遣いなのか、ダンサーのように手を取っているけど、振りほどけない。
息が苦しい。早く、解放されたい……。
「んっ、はぁっ、はっ……!! 何を――」
言いかけて、すぐ言葉を失った。欲にまみれた天使の表情を見て。
「君は僕の所有物だよ。その印さ。僕のようになって貰いたいし、その契約だよ」
「そんなこと、させるか」
「無駄だよ。逃げたら、他の人間同様に『間引く』よ」
「……!」
間髪入れずに脅され、選択肢を奪われた僕は、何も言えなくなった。
「そうだね……100人は消して貰おうか。そうすれば、僕のように衣食住は困らなくなる。だって、僕と同じになれるからね。それと――君に選択権があると思わない方が良いよ」
ニタリ、と間近で笑みを浮かべる天使に、僕は希望を失った。
「さあ、そろそろ寝ようか」
「……分かった」
すぐに『普段』の笑顔に戻った天使に、僕はただ従うしかなかった。
「……あいつ、何なんだ?」
辛うじてランプがあったので、それを灯そうと手持ちの道具を漁っていた。すると、天使が指先に火を灯し、ランプに近づけると本当に点いた。
これを見て、あいつは人間ではないのは分かる。でも、天使と言うには……。
「僕がどうかした?」
「うわっ?!」
もはや音にすら気付けないほど考え込んでいた。――それより。
「……何それ」
天使の手元の服を指さして尋ねた。
「着替え。シャワーは水だけど、まあそれほど冷たくはないよ。浴びてきて」
衣食住はどうにでもできる、と天使は言っていたけれど、揃っていれば揃っているほど気味が悪くなる。それはそれで『天使』らしい、とは思うから。
* * *
「……シャワー、上がったけど」
「ん、お疲れさま。――じゃあ、着替えようか。サイズは合うと思うけど」
言われるがままに、下着だけは先に履いて。
「……細いね。あまり食べてこられなかったからだね」
「止めて」
「言うことは聞きなよ」
ぺたぺたと、天使が肌に触れてくる。肌着やズボンも、『自分で出来る』と言っても聞かず、体型を確かめるように撫でてくる。抵抗はしてるのだけど、止めてくれない。これが食い繋ぐためなんて……。
服を着終えて解放されるかと思ったとき。ぐい、と顔を近づけ、僕の顎に指を添えられた。
「綺麗にしてみたけど……美味しそうだね」
「えっ――、んんっ」
突然のキス。だって、こいつは男の身体――?!
「や、め……!」
机に押しつけられそうなほど、僕の身体が反る。一応の気遣いなのか、ダンサーのように手を取っているけど、振りほどけない。
息が苦しい。早く、解放されたい……。
「んっ、はぁっ、はっ……!! 何を――」
言いかけて、すぐ言葉を失った。欲にまみれた天使の表情を見て。
「君は僕の所有物だよ。その印さ。僕のようになって貰いたいし、その契約だよ」
「そんなこと、させるか」
「無駄だよ。逃げたら、他の人間同様に『間引く』よ」
「……!」
間髪入れずに脅され、選択肢を奪われた僕は、何も言えなくなった。
「そうだね……100人は消して貰おうか。そうすれば、僕のように衣食住は困らなくなる。だって、僕と同じになれるからね。それと――君に選択権があると思わない方が良いよ」
ニタリ、と間近で笑みを浮かべる天使に、僕は希望を失った。
「さあ、そろそろ寝ようか」
「……分かった」
すぐに『普段』の笑顔に戻った天使に、僕はただ従うしかなかった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【短編未満集】かけらばこ
Kyrie
BL
BL要素がメイン。
*
診断メーカーやお題、絵描きさんのイラストなどから得たインスピレーション、手慰み、書いてみたいお話の一場面などを集めています。
ジャンルもばらばら。許容範囲が広い人向け。
*
創作BLワンライ&ワンドロ! https://twitter.com/BL_ONEhour
*
他サイトにも掲載。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる