迷宮転生記

こなぴ

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第1章

SIDE セリア王国

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「それで、ガイスよ。どうであったか?」

 ここは真人のダンジョンから馬車で3週間ほど移動したセリア王国、王都イルアの王宮の一室だ。
 精霊湖での薬草採取の依頼から帰還したBランクの冒険者が、洞窟が出現していることをギルドに報告し、王国からの依頼としてガイス率いる冒険者パーティ「守護者の翼」が調査に派遣されたのだ。

「はっ!報告通り魔の森の入口、迷宮樹海の浅層にダンジョンが出来ておりました。場所は精霊湖の近くです」

 ここで話を聞いているのは、この国の重鎮たちだ。
 国王ハイベスト・フォン・セリア、宰相リベルグ・スクエア、財務大臣モルドール・バルコ、軍務大臣ローアン・レックス、騎士団長ウィル・ファクト、冒険者ギルドのギルドマスターのザムである。
 しかし、極秘情報のため重苦しい雰囲気が漂っている。

「そうか・・・。それでダンジョンの規模と魔物の種類は?」

「魔物はスライムとゴブリンだけで、距離も短い洞窟型でした。現段階ではFランク程度の物かと。しかし・・・」

「なんだ?問題でもあったか?」

「我々が到着時、入口付近を調査した時には明かりがついておらず、ただの洞窟だと思っていました。翌日に足を踏み入れると、明かりがつき異様な雰囲気が漂っていました。そこで調査をすすめていくと、何の気配もなくスライムが現れたのです。ゴブリンの方は普段通り気配を察知できましたが、1日でこれだけの変化があることをふまえると、これから先、大規模なダンジョンへと成長する可能性があります。」

「ふむ。魔物が気配なく現れたと・・・。それに大規模に成長するか」

「もう一つあります」

「なんだ?」

「最奥に宝箱がありました」

「なんだと!?発生して間もないFランクのダンジョンに宝箱だと?それで中の物は持って帰ってこれたのか?」

「はい。ここに」

 ガイスは小さい袋をテーブルに置いた。
 これは収納袋という魔道具だ。
 見た目は小さいが空間魔法が付与されており、1000倍は入る品物だ。
 製作方法はわかっておらず、高ランクダンジョンでの宝箱や滅多に現れることのない空間魔法持ちのレアモンスターからしかドロップしないため、金額も半端ではない。
 ガイスたちも持ってはいるが、容量はそこまでない。
 この収納袋は王国から依頼と共に貸し出された物だ。
 ハイベストは宰相のリベルグに目配せし、リベルグは頷いて立ち上がり、ガイスから袋を受け取った。
 自分の席に戻ったリベルグが中身を取り出すと、ガイス以外は立ち上がり前のめりになった。

「ガイス殿。これは?」

 とリベルグは問いかける。

「ナイフのような物でしょうか。切れ味が鋭すぎて刃の部分は隠してあります。お気をつけ下さい」

 リベルグは恐る恐る隠してある刃先を慎重に露見させた。
「「「「お、おおっ!」」」」
 財務大臣、軍務大臣、騎士団長、ギルドマスターは感嘆の声をあげた。
 しかし、ハイベストとリベルグは怪訝けげんな顔をした。

「ガイス。確かにナイフのような形をしてるが、見たことあるか?材質も鉄には見えんが」

 リベルグも同じ考えだったため、ハイベストの問いかけにガイスの方を見る。

「いえ。形も材質も見たことなくわかりません。パーティメンバーもわかりませんでした」

「ザムよ。このような物がアイテムとしてギルドに持ち込まれたことはあるか?」

「いえ陛下。形は似たような作りがもしかしたら存在するかもしれませんが、材質の方は私も見たことありません」

「しかし陛下、この薄い刃を見ると武器ではなく装飾品のたぐいではないでしょうか?」

「ふむ。リベルグもそう思うか。ガイスよ、これは調べてから、王家の方で保管してもよいか?」

「はい陛下。我々の方でも手に余る品物ですので」

「礼を言う。この件については他言無用だ。依頼の分とは追加で報酬も出しておこう。ご苦労だったガイス。下がってよいぞ」

「はっ!失礼します」

 ◇◇◇
 ガイスが退出後、一室ではさらに話し合いがおこなわれていた。

「リベルグ。どう思う?」

「はい。ランクはFでよいかと。ギルドもそれでいいですか?」

「はい。スライムやゴブリンなら新人からDランクの冒険者の稼ぎになるかと。しかし、少々距離があるため、仮のギルドを設置するかローラ聖教国と連携すべきでしょうか?」

「いや。聖教国にはまだいいだろう。魔の森の深層ならまだしも入口付近の迷宮樹海だからな」

「おそれながら陛下」

「なんだ?ローアン」

「ガイスはダンジョンが急激に成長するのを危惧しておりました。それでダンジョン内部や外部を見回りさせるべきでしょう。案としては、騎士団から新人4名ベテラン1名を定期的に派遣して訓練させるのはいかがでしょうか?」

「ふむ。いいかもしれんな。人員はウィルに任せるとしよう。よいかウィル?」

「はっ!承知しました」

「となると陛下。ギルドの方でも精霊湖での薬草採取の依頼を定期的に出して、中級あたりの冒険者を見回りさせるのはどうでしょうか?」

「そうだな。そのあたりが妥当だな。モルドールよ」

「はい陛下。予算としては、仮ギルドと騎士団の仮宿舎程度なら問題ないかと」

「よし。大体決まったか。問題が起きたら最優先で報告するように!」

「「「「はっ!」」」」

 セリア王国は知らない。
 この定期的というのが真人をさらに成長させてしまうことを・・・。
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