4 / 41
第1章
SIDE セリア王国
しおりを挟む「それで、ガイスよ。どうであったか?」
ここは真人のダンジョンから馬車で3週間ほど移動したセリア王国、王都イルアの王宮の一室だ。
精霊湖での薬草採取の依頼から帰還したBランクの冒険者が、洞窟が出現していることをギルドに報告し、王国からの依頼としてガイス率いる冒険者パーティ「守護者の翼」が調査に派遣されたのだ。
「はっ!報告通り魔の森の入口、迷宮樹海の浅層にダンジョンが出来ておりました。場所は精霊湖の近くです」
ここで話を聞いているのは、この国の重鎮たちだ。
国王ハイベスト・フォン・セリア、宰相リベルグ・スクエア、財務大臣モルドール・バルコ、軍務大臣ローアン・レックス、騎士団長ウィル・ファクト、冒険者ギルドのギルドマスターのザムである。
しかし、極秘情報のため重苦しい雰囲気が漂っている。
「そうか・・・。それでダンジョンの規模と魔物の種類は?」
「魔物はスライムとゴブリンだけで、距離も短い洞窟型でした。現段階ではFランク程度の物かと。しかし・・・」
「なんだ?問題でもあったか?」
「我々が到着時、入口付近を調査した時には明かりがついておらず、ただの洞窟だと思っていました。翌日に足を踏み入れると、明かりがつき異様な雰囲気が漂っていました。そこで調査をすすめていくと、何の気配もなくスライムが現れたのです。ゴブリンの方は普段通り気配を察知できましたが、1日でこれだけの変化があることをふまえると、これから先、大規模なダンジョンへと成長する可能性があります。」
「ふむ。魔物が気配なく現れたと・・・。それに大規模に成長するか」
「もう一つあります」
「なんだ?」
「最奥に宝箱がありました」
「なんだと!?発生して間もないFランクのダンジョンに宝箱だと?それで中の物は持って帰ってこれたのか?」
「はい。ここに」
ガイスは小さい袋をテーブルに置いた。
これは収納袋という魔道具だ。
見た目は小さいが空間魔法が付与されており、1000倍は入る品物だ。
製作方法はわかっておらず、高ランクダンジョンでの宝箱や滅多に現れることのない空間魔法持ちのレアモンスターからしかドロップしないため、金額も半端ではない。
ガイスたちも持ってはいるが、容量はそこまでない。
この収納袋は王国から依頼と共に貸し出された物だ。
ハイベストは宰相のリベルグに目配せし、リベルグは頷いて立ち上がり、ガイスから袋を受け取った。
自分の席に戻ったリベルグが中身を取り出すと、ガイス以外は立ち上がり前のめりになった。
「ガイス殿。これは?」
とリベルグは問いかける。
「ナイフのような物でしょうか。切れ味が鋭すぎて刃の部分は隠してあります。お気をつけ下さい」
リベルグは恐る恐る隠してある刃先を慎重に露見させた。
「「「「お、おおっ!」」」」
財務大臣、軍務大臣、騎士団長、ギルドマスターは感嘆の声をあげた。
しかし、ハイベストとリベルグは怪訝な顔をした。
「ガイス。確かにナイフのような形をしてるが、見たことあるか?材質も鉄には見えんが」
リベルグも同じ考えだったため、ハイベストの問いかけにガイスの方を見る。
「いえ。形も材質も見たことなくわかりません。パーティメンバーもわかりませんでした」
「ザムよ。このような物がアイテムとしてギルドに持ち込まれたことはあるか?」
「いえ陛下。形は似たような作りがもしかしたら存在するかもしれませんが、材質の方は私も見たことありません」
「しかし陛下、この薄い刃を見ると武器ではなく装飾品のたぐいではないでしょうか?」
「ふむ。リベルグもそう思うか。ガイスよ、これは調べてから、王家の方で保管してもよいか?」
「はい陛下。我々の方でも手に余る品物ですので」
「礼を言う。この件については他言無用だ。依頼の分とは追加で報酬も出しておこう。ご苦労だったガイス。下がってよいぞ」
「はっ!失礼します」
◇◇◇
ガイスが退出後、一室ではさらに話し合いがおこなわれていた。
「リベルグ。どう思う?」
「はい。ランクはFでよいかと。ギルドもそれでいいですか?」
「はい。スライムやゴブリンなら新人からDランクの冒険者の稼ぎになるかと。しかし、少々距離があるため、仮のギルドを設置するかローラ聖教国と連携すべきでしょうか?」
「いや。聖教国にはまだいいだろう。魔の森の深層ならまだしも入口付近の迷宮樹海だからな」
「おそれながら陛下」
「なんだ?ローアン」
「ガイスはダンジョンが急激に成長するのを危惧しておりました。それでダンジョン内部や外部を見回りさせるべきでしょう。案としては、騎士団から新人4名ベテラン1名を定期的に派遣して訓練させるのはいかがでしょうか?」
「ふむ。いいかもしれんな。人員はウィルに任せるとしよう。よいかウィル?」
「はっ!承知しました」
「となると陛下。ギルドの方でも精霊湖での薬草採取の依頼を定期的に出して、中級あたりの冒険者を見回りさせるのはどうでしょうか?」
「そうだな。そのあたりが妥当だな。モルドールよ」
「はい陛下。予算としては、仮ギルドと騎士団の仮宿舎程度なら問題ないかと」
「よし。大体決まったか。問題が起きたら最優先で報告するように!」
「「「「はっ!」」」」
セリア王国は知らない。
この定期的というのが真人をさらに成長させてしまうことを・・・。
6
お気に入りに追加
92
あなたにおすすめの小説
「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
異世界のんびり冒険日記
リリィ903
ファンタジー
牧野伸晃(マキノ ノブアキ)は30歳童貞のサラリーマン。
精神を病んでしまい、会社を休職して病院に通いながら日々を過ごしていた。
とある晴れた日、気分転換にと外に出て自宅近くのコンビニに寄った帰りに雷に撃たれて…
================================
初投稿です!
最近、異世界転生モノにはまってるので自分で書いてみようと思いました。
皆さん、どうか暖かく見守ってくださいm(._.)m
感想もお待ちしております!
勇者が街にやってきた
覧都
ファンタジー
大地震とともに空間に亀裂が入り、そこから勇者が現れた。
こいつら、事もあろうに人間をスライムといいながら経験値稼ぎとほざき殺しだした。
事もあろうに、こいつらには、こっちの兵器はほとんど通用しない。
だがおれは、偶然手に入れた異世界の魔法で、こいつらに逆襲する。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる