異世界めぐりの白と黒

小望月 白

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第二の世界

小さな大家族

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隠れ、迷いながら何とか城門の辺りまで来た時には空はいつのまにか薄暗く、夕方になっていた。そして当然、城門には門兵が居た。
あそこを抜けるのには一体どうしたらいいだろうか。



ーーオルを一緒に連れてきて、門を開けさせればよかった?無理無理、そもそも多分私の能力がそんなに長くは保たなかったわ




ブンブンと首を振る



ーーそれとも交代を待ってその隙を狙う?これも現実的ではないわね




門兵は今見えるだけでも2人は居る。門は閉ざされているのできっと反対側にも2人以上は居るだろうし、もしかしたらここから見えて居ないだけで他にももっと居るかもしれない。



ーーそうなると能力を掛けて開けて通して貰うのも無理でしょうね



今の私の限界人数がわからないが、先程オル1人に掛けただけでもかなり体力を持っていかれた。今の私のレベルで何人にも同時に能力を使うのはできる気がしない。




ーーそういえばオルと初めて会った日にオルが使っていた裏門なら………!



あそこは確か門というか、ひたすら抜け道だったのでお城としてはアウトだが今の私にすれば天の導きかと思うレベルで誰も見張って居なかった。




ーーこの国、きっと平和なのね




しかしはたと気がついて足を止める。




ーー待って、道がわからない………!



一体どちらへ進めばいいのか。確か大きな橋を渡ったのは覚えている。




ーーていうか橋!ダメじゃない?あんな目立つ所通ったら絶対見つかるんじゃない?



もう橋が先だったか抜け道が先だったかも曖昧な上に橋は薄暗いとはいえ通るとなるとやはり目立つ。



ーー夜になったらなったで私が見えないし




早速行き詰まっていると、ふと足元の花に目が止まる。



ーー祈りの花ランカではできた………



ダメ元で芝生っぽい草やその周りの花にそっと能力の糸を絡ませてみる



ーー私に、人に見つからずにお城から出る道を教えて




するとふわりと草花が揺れる。そのままゆっくりと自らの身体を倒すと次はその近くの草花がどんどんと身体を倒し一本の道が出来た。



「! ありがとう!」



小声で草木にお礼を言い、草花が作ってくれた道を歩く。




ーーあれ?かなりの量の草花に能力がかかった筈なのに全然疲れてない




やはり小動物や植物との相性の方が良いのだろうか。そんな事を考えながら薄暗い道を1人で歩く。
途中、空腹を感じて近くの木に能力でそのまま食べられる果実などが無いかを聞いてみるとゆらゆらと揺れた後、ぽとんと数個の果実を分けてくれた。



「ありがとう」



果実を齧りながらひたすら歩く。



ーーなんだか森とお友達になった感覚になるわね



そして多分だが、人に見つからない道と言ったお陰で橋は渡らずに少し迂回して行くルートの様だ。その分歩くのは覚悟しなければいけない。




ーーピンヒールじゃない靴これで本当によかった………!



靴が無ければ間違いなく足の裏がズルむけである。想像しただけで痛い。
暫く歩いていると崖といっても良いくらいの岩場の傾斜に差し掛かった。



「待って、これ降りるの?いや頑張れば行けない事もない、か………?」




恐る恐る足を踏み出し少しずつ降りて行く。途中何度かヒヤッとはしたが何とか下まで降りられた。




ーーこれもしかしなくても降りた分また登ったりする………?




そろそろ脚が限界だ。先程残しておいた果実を齧り岩場に腰掛ける




「お城から出た後はどうしよう」




とりあえず、アリネスや護衛騎士達の事は気になるが今はまだ会えない。
きっと私と会う事によって彼らの立場が危うくなるだろう。




ーーそうだ





ポケットからペンダントチェーンを取り出して着け、声が聞こえるのを待つ。




ーーあれ、いつもならすぐに幼女ヨウが反応するのに




まあ2人だっていつも暇な訳ではないだろう。ペンダントチェーンは付けたまま置いておこう。


























「ん?」




ふと眩しくて目を開けた。どうやら眠ってしまっていたらしい。




「痛っ!」




立ち上がろうとすれば足が痛くてもう一度岩場へ座り込む




「うわぁ………」




靴を脱いで足を見てみると沢山マメが出来、そして潰れていた。明るい所で見ると結構痛グロい。





「薬草なんてわかんないしな………」



辺りを見渡すが岩場に雑草らしき物は生えているがその中に足の痛みを和らげる物があるかどうかなど知る由もない。





ガサガサッ



「!」



岩場の間の雑草が揺れる




ーーもしかして眠っている間に王城の兵達に見つかった?




ハラハラしながら見つめていると、そこから現れたのはリスっぽい生き物だった。物凄く黄色い。着色した?ってくらい黄色いが見た目は完全にリスだ。そして頬袋がパンパンになっている。
きっと沢山収穫して今から住処に帰るのだろう




「こんにちはリスさん。驚かせてごめんね。ほっぺた、パンパンね」



ホッと一息つきなからリスに話しかけるとリスはこちらを怖がる様子も無くトトトと近付いてきた。




ーーあれ、人間に馴れてる?




そしてそのまま私の膝の上まで乗ると徐に口をオエオエし出した。




「え、ええぇえ?!」



苦しいのかと思ったがどうする事もできず、リスの近くに手をやりアワアワとしているとリスが  んべっ! と頬袋から何かを吐き出した。




「あ、びっくりした。これを出そうとしただけなのね。これからお食事?
ふふ、それにしてもよくそんな小さなお口にこんな大きな塊が入っていたわね」




真っ黄っきのリスが取り出したのは草木っぽい塊だった。恐らくリスの唾液で少しベタついているのだろう。固まっている。



「てっきり木ノ実でも出すのかと思った。リスって葉っぱも食べるの?」



するとリスは塊を食べたりせずに鼻先でツンツンと突き出した。




ーー何してるのかな




そのまま眺めているとリスは突くのをやめ、塊を私の膝に乗せたままひらりと近くの岩に飛び乗った。





トトトトトトトト





「ん?!」




リスは突然ウサギの様に後ろ足でタッピングを始める。すると周りから沢山のこれまた真っ黄っきのリス達が集まってくる




「多いなー大家族だなー」





もう初めにいた子がどれだかわからなくなった。そしてリス達は初めのリスが私の膝に置いていった塊をそれぞれ少しずつ齧って行き、私の足元へと向かう




「何を……って、ちょ!あはは!まってやだくすぐったい!」




さわさわと柔らかい感覚と先程の塊だろうか。少し硬い物が足裏に擦り付けられているが物凄くくすぐったい。





「………お、おわった…………」




笑い過ぎてぐったりしながら足裏を見ると、茶色い汁が沢山付いている。





ーーもしかしてこれ、薬草か何かをつけてくれた?




リス達を見ると、リス達もまた私の事をじっと見つめている




「薬を塗ってくれたのね、ありがとう。何だか痛みが引いてきた気がするわ」



するとその言葉を聞くとリス達は満足そうに鼻をフンフンと少し動かすと一斉にどこかへと帰って行った。
そして本当に足の痛みが引いている。



「この森?森かな?私に至れり尽くせりね」





ーーよし、行くか





気合いを入れてまた歩きだす。

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