異世界めぐりの白と黒

小望月 白

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第二の世界

キャラ

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「ん゛ん゛っ……やっぱりある………」



スッキリ爽快!とは確実に言えない微妙な睡眠を取り朝を迎えた私はオルが運び込んでくれた朝食を摂り、オルに形だけの『行ってらっしゃい、早く帰ってきてね』の擬似新婚さんごっこを終えた。そして1人になってから




できれば夢であって下さい




と何度も神様にお祈りをしながら昨日自分が思考と共に閉じ込めた箱を引っ張り出してきた。




はぁ




ここが日本と違ってがっつりファンタジーな世界なのはわかった。もう理解した。
だからもう突然声が聞こえるこのシステムを廃止して欲しい。

この間だって山頂でノメルの口からボーカロイドみたいな甲高い声がいきなり聞こえて正直めちゃくちゃ怖かった。
昨日なんて入浴中で防御力ゼロの状態で喋られた。あんな状態で話しかけられて



「あっ、はいはい聞こえてますよ。音質良好ですっ」



みたいな返しをいきなりできる奴がいるのなら見てみたい。
得体の知れないものに返事をするのは危険かなとかちょっと冷静になれてる雰囲気が自分ではあったが今考えたらあれ普通にビビって咄嗟に声が出なかったから『危ないかも』と考える事ができただけだ。





「まあそれは置いといて、これね」



とりあえず暫く戻らないだろうとは思うが一応オルが突然帰ってきても大丈夫な様に寝室で鍵をかけてベッドの上に例の箱を置いて向かい合っている。





ーーオル鍵持ってるけどね






そろりそろりと慎重に箱を開け、中を見てみる。昨日と変わらずぐるぐるのタオルが見える



「これでペンダント消えてたら怖すぎるわね………」



自分で言って泣きそうになってきた



ーーそんなホラーな展開になりませんようになりませんようになりませんように




精一杯の距離を取るためにタオルをベッドの上に出した後はペンを持ってきてツンツンとつつきながら中のペンダントを取り出した。



シャラ



窮屈そうなタオルから解放されたペンダント2つは軽い音を立ててベッドの上へと姿を現した。




「特に変化は………なしと。」




箱の蓋を盾代わりにしながらペンでペンダントを突くが何も起こらない



「やっぱり着けるのがポイントなのかなぁ」



しかし昨日は何も思わず着けたからよかったが幼女達の声が聞こえた後では着ける時に必要な覚悟が違う。
ていうか聞こえる前は覚悟なんていらなかった。



ふぅ



「よ、よーし。何事にもチャレンジ………」






とりあえずペンダントトップが付いている方を持ってみる



「あれ?そういえばこれどっちが鍵なんだろう」



よくよく考えてみると昨日はもう突然聞こえてきた声が怖すぎて急いでペンダントを取ったので外した順番なんて全く覚えていない。



「とりあえずペンダントトップ有りの方から………」



1つ深呼吸をしてそうっと付ける。カチャリという軽い金属音が聞こえ、耳を澄ます。
特に何も聞こえてこない。



「って事はこっちか…………」



ペンダントチェーンのみの方を持ち上げてじっと見つめる



「これが日本なら極小の盗聴器とかなんかそういうのを疑うんだけど。あ、盗聴器は聞くだけか」


ブツブツと独り言を言いながら恐怖心を紛らわす



「よ、よーし。付ける。付けます。レイチェル行きます」



カチャリ



再び軽い金属音。



「………」



何も聞こえない



「ま、まあ昨日のあれが聞き間違いって事も有りえるし」



少し拍子抜けだがよかった。少し湿ったタオルを洗濯物の所に持っていかないとな、と思って持ち上げる



「ああぁ!繋がったぁぁぁああ!」



「ぎゃぁぁ!出たあぁぁ!」



「ぎゃぁぁ!叫んだああぁ!!」








まただ。気を抜いた瞬間やってくる。
わざとか!
ちなみに台詞は


幼女



幼女


の順だ。
自分から話しかけて置いてびっくりしないでほしい。
まだ心臓がバクバクしている。



「おい小娘!お主何を考えておる!繊細な私の心臓が止まった一体どうしてくれ………おい、まて。わかったちゃんと話すから」


「やあレイチェル、再び驚かしてすまないね。聞こえているかな?」


「酷い。わしとてきちんとやればできるのじゃ。お前ちょっと心が狭いのではないかぁあああぁごめんなさいいいい」



ーーうるさ



もう怖い気持ちがどこかへ吹っ飛んでいってしまった。



「あの、あなた達は誰ですか?」



すると頭でガンガンと響いていた声が数泊沈黙する。



「そうじゃの。とりあえずママンとパパンと呼ぶがよいぞ」



「お断りします」



とりあえず幼女の方は何となく放って置いていい気がしてきた。



「ごめんねレイチェル。今は詳しくこちらの事を話す事はできないんだ。でも安心して欲しい。僕らは君の味方だ」


「………証拠は?」


「ふふふ。証拠、か。そうだね、悪いけど何もないね」



ーーえぇー



「そんな嫌そうな顔をしないで。証拠は無いけど、僕たちは僕達なりに君の手助けをしたいと思っているんだ」



「待って待って、こっちが見えてるんですか?」



思わずキョロキョロと周りを見渡す



「ん?ううん。見えてないよ」


「え、でも『そんな顔しないで』って………」



「あぁ、面倒臭そうな顔してるかなと思って。勘。ははは」




ーーめ、めんどくせぇ




思わず白目を剥いてしまった。どうやら幼女声の方だけがおかしく、ショタ声がまともだと思っていたのは間違いだった様だ。
正確には2人とも面倒臭い。



「はぁ、もういいです。それで、私に何の用でしょうか。ていうかこれどうやって話してるんですか?他の人には聞こえないのでしょうか。私の手助けって何のですか?」


「お、なんじゃ質問責めじゃな」


嬉しそうな幼女声がする



「そうだね、まず1つめの質問。もう分かっているとは思うけれどペンダントを通じて話しかけているよ。そして2つめ。この声はレイチェルにだけしか聞こえていない。だから君が今みたいに声に出して私達と対話をしていれば周りから見たら君は完全に不審者だね。やった!おめでとう!
それから3つめ。君の手助けは君の手助けだよ。とりあえず今はその世界から抜け出したいんだろう?」



どうしよう。
「何が不審者でおめでとうだこのやろう」とか「じゃあ今の状況完全にBluetoothのイヤホンマイクで喋ってる人だな」とか「抜け出したいんじゃなくて日本に帰りたい。でもこっちにも思い入れはある」とか。
色々と思った事はあったがとりあえず口から出たのは1つ。





「…………キャラが濃いぃ」



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