異世界めぐりの白と黒

小望月 白

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第二の世界

ジト目

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「う、うええええええ」



バターーンとベッドへと倒れこむと私はうつ伏せのまま叫ぶ



「つっかれたぁぁあ」


「お疲れ様でございますレイチェル様」


「うん。アリネスも大変だったでしょう。おつかれ様。色々とありがとう」


「いえ」



コロンと仰向けになるとこちらを見ているアリネスと目が合った。



「レイチェル様、お疲れ様の所申し訳ありませんが少しお話しておきたい事がございます」


「わかった」



私も気になる事があるし、長くなりそうなのでアリネスにお茶を淹れてもらう事にした。

今日のお茶会は何とか終わった。
会場である精霊メイルーンの庭の匂いは布製品を一掃する事で何とかなったし、花も使用人の人達が本当にこれでいくのかと言いながら不安そうに摘んできてくれた。
ティーセットも料理も色々とギリギリになり少し間に合わないかとヒヤヒヤしたが皆の頑張りで恙無く終わらせられた。
もう準備段階で疲れていたので、お茶会中沢山のご令嬢達に話しかけられて頭がパンクするかと思った。


「お茶会の準備を手伝ってくれた使用人の人達へのお礼は何がいいかしら」


ここはやはり食べ物とかの方が良いだろうか。


ーーでもなぁー。正直私のお金じゃないんだよなぁ



普段私の身の回りの物を揃えてくれるのはアリネスだが、そのアリネスは王城から私用の予算を沢山貰っているらしい。
私に渡した予算だから私のお金だと王族側は言ってくれているらしいがやはり違うと思う。



ーーでも私お金持ってないし……



「レイチェル様はただ『ご苦労でした』と一声かけられるだけで良いのですよ。それだけで十分でございます。」


テーブルにお茶を置きながらアリネスが言う。



「えー。でも今回かなりバタバタしたし、ややこしい事にもなったし」



「確かにバタつきましたがそれはレイチェル様のせいではございませんし、それを含めても使用人は仕事ですので。
まずわざわざお礼の声を掛ける方ですら中々いらっしゃいませんよ」


少し呆れた様にアリネスは言うが本当に大変だったと思う。



「もし、どうしてもお言葉以外の方法でも何かお礼がしたいと申されるのでしたら舞などはいかがですか?」


「え、舞?」


「ええ。お茶会も終わりましたし、お身体の調子も戻ってこられた様なので明日からはまた扇舞の練習ができますね」


「舞……舞?!待って待って。私の舞がまずお礼になるのかが疑問な上にまだ全部覚えてない……わよね………」


「ええ。早く皆にお礼を伝えられる様頑張らないといけませんね」


「ひーーー!」



アリネスのスパルタ教育を思い出し悲鳴を上げているうちに話す準備が整った様だ。


「まあ、舞についてはまた後程お話しましょうか」


「う、うん……」



「それで、本日のお茶会についてですが、やはりサランの謹慎は解けておりませんでした。しかし明日から謹慎を解くという伝言だけが先程届き、抗議に向かった所侍女長には会えませんでした」


「そう。侍女長もお忙しいのかしら」


「いえ、どちらかというと私を通さない様にしている様に見えました」


「どういう事?」


「実は4回程直訴に向かったのですが何故か毎回『席を外して』いる様で会えませんでした。待つと言っても無理矢理追い出されました。それにサランの謹慎も予定ではまだ暫く解ける予定ではなかったはず。色々と不自然なのです」


「それは変よね。私もサランの事が気になっていたのよ。一応サランの主人は私ということになっているから流石に謹慎が解ける時は知らせがないとおかしいと思って」


するとアリネスは頷く。


「ええ。それにサランは我が物顔で見知らぬ使用人達を使っていたのも気になります。あの女はレイチェル様の為などと宣っておりますがわかったものではありません」


「そうね……」 


紅茶を一口飲むと少し肌寒かった身体がじんわりと内側から温まる



結局サランに関しては明日謹慎が解かれるらしいので本人から直接聞こうという話になった。



ーーちゃんと話ができるかどうかは別だけど。




とにかく本当に色々と疲れた。
お茶会が終わったのでとりあえずもう平和になるとは思うがサランの事だけは早めに何とかしたい。
元々アリネスとの相性が余り良くなさそうだなとは思っていたが今回の事で割と頭が痛い問題となっている。



ーー私から侍女長にお願いしてみるか




本来ならアリネスの負担を減らすという名目でつけられたはずのサランだが、今の所心身共にアリネスの負担にしかなっていないのは間違いないので、少しでも話が上手く進むように今回の騒動の内容や対応をメモしておくことにした。



ーーあとやらなきゃいけない事は……




「ああ、思い出した」


「如何なさいましたか?」


私と同じく少し考え事をしていたアリネスが顔を上げる



「あ、うん。急ぎでやらなきゃいけない事を色々何があるかを思い出してたんだけど。1つ大事な事を思い出したから」


「サランや見知らぬ使用人についてとはまた別の事でしょうか」


アリネスは少し首傾げながら考える素ぶりを見せる


「ええ。とっても大事な事を思い出したのよ」


「成る程。ぜひお聞かせ願っても宜しいでしょうか」


「ええ勿論!」


そして私は1つ呼吸をし、姿勢を正して胸に手を当てる



「カールとルルがお付き合いをしていると聞いてね。詳細を詳しく聞くのよ!」























一瞬で細められたアリネスの目は冷たかった。

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