異世界めぐりの白と黒

小望月 白

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第二の世界

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ーーさっき言ってた所なのに忘れてた………


ナファリの言葉にまだ問題がある事を思い出し頭を抱える



「問題、まだ残ってましたねぇ・・」


少しため息混じりにノメルが呟く


「ええ。なんていうか、うん。忘れてた」


ははは、と乾いた笑いを出しながら現実逃避をしたくなる


ーーああー……護衛騎士のみんなやアリネスと一緒にしたあの簡易お茶会、楽しかったなー………



「あ!!!」



思い出した。あの場所、確か沢山花が咲いていた。それにそれぞれ仄かに香りはするがそんなにきつくもなかった。


「ど、どうされました?!」



焦った様に皆んなが見てくるが花が何とかなりそうな私は一気にご機嫌だ。近くにいたノメルの手を掴んでブンブンと上下に振る



「あ、あの!レイチェル様?!」


「ねえ!みんなで前にお茶会したあの丘の広場!あそこ沢山お花が咲いてたわよね?あのお花を使いましょうよ」


するとノメルの表情がパッと明るくなる


「いいですね!あそこはだいたいいつもお花が沢山ですよ!今ならなんか細長いのとか、でっかい花びらのとかあります!」



ノメルの言っている『細長いの』や『でっかい花びらの』がどんなものかはわからないが何かしら使えそうな物はありそうだ。


「どうかしらアリネス」


アリネスを振り返ると彼女は少し難しい顔をしていた。



「そうですね……確かにあそこなら花は咲いているでしょうが……」


「でしょうが?」


「あれ、野花なんですよね………」


「えーでも綺麗ですよ?」


ノメルが残念そうに言うがアリネスはまだ難しい顔をしている



「やっぱり野花を使うのはマナー違反になる?」


私が聞くとアリネスは首を振る


「いえ、特にその様な決まりはございませんが……まあ基本的に貴族が開催するお茶会で野花を出す人がまずいないので決まり以前の問題ではありますが………
色味や見た目がやはり少し物足りない気が致します」


ーー成る程



「派手な花瓶に入れればカバーされませんか?」


ノメルが言うと隣からワカウィーが「花瓶に花が負けそうですね」と苦笑する


「じゃあじゃあ、花が負けてしまわない様にシンプルな花瓶に入れるのは?」


もう一度ノメルが言うと次はウォレンが呆れた様に「だからそれだと見た目寂しいんだろ」と言う。ノメルはんんんー!と暫く唸っていたが何も思いつかなかったのか「うええぇー」と言うと項垂れた。


「あ、アリネス。あれは?ほら。女性ってよくこんなうっすーい布使ってる気がするんだけど。なんだっけ、ヴェール?あーゆーの重ねて花瓶に巻いたりしちゃだめなの?」


ナファリの言葉に皆ハッとなる


「よし。それで行きましょう。アリネス、ナファリの言う様に薄い布を2枚くらい色違いで花瓶に巻いたりするのはどうなのかしら」



するのアリネスも今度はすぐに頷く


「そうですね。それなら見た目もある程度華やかさが出せますし、派手すぎる事も無いでしょう。早速直ぐにでも取り掛かる者を手配しましょう」


そう言ってアリネスはまたバタバタと忙しそうに動き回り始めた。



「えーっと。とりあえず引き続きカーヌにはアリネスに付いてって貰おうかな」


「かしこまりました」


アリネスの動く様子を見ながら少し考える



ーー私ここにいても邪魔か。ならサランあの子に話を聞かないと、か。あとチェックしないとだめな場所もありそうだし。



なんだかなぁと思いながら空を見上げる。お茶会日和の良い天気だ。


そのままぐーっといける所まで首を後ろに倒して行くとぽすっと首と頭を支えられた


「何をなさっているのですかレイチェル様」


ぐっと視線を移すとふふふ、と笑うワカウィーがいた


ーーかっわ……!


そしてすかさずナファリを見ると案の定ワカウィーを眺めていた。私の視線に気がつくとこちらを向いたのでとりあえずぐっと親指を立てると真顔で同じ様に親指をぐっと立ててくれた。



「さて、じゃあ私は私にできる事をやりますか」



よっと身体を戻し先程までいたお茶会の会場を目指す


ーールル、大丈夫かなー






















結果から言うと全然大丈夫じゃなかった。
何というか、サランが物凄く暴れていて色々ルルに対して『行き遅れ』だの『年増』だの色々と口汚く罵っていた。
そして色々と口汚く罵られているのにも関わらず、私が任せた時と同じ笑顔のまま何も言わずにサランの腕を離さないルルが怖かった。



「あっちゃー………ルル、だいぶ怒ってますねー」


私の後ろからひょっこりと顔を出したノメルが言う



「あ、やっぱり?そりゃ怒るわよね……結構な事言われてるし」


今もどんどん近付くにつれてサランの言葉が聞こえてくるがまあ簡単に言えば女のくせに男の様な仕事をしてみっともない、的な事を言っている。
ていうか休憩所的な所に連れて行くんじゃなかったのか。あ、もしかしてサランが暴れてそれどころじゃなかったのかな。



「ああ、いえいえ。女騎士なんて物はあれくらい普段から言われ慣れています。女騎士という立場は絶対数必要ではありますが男勝りだったり、行き遅れたりする事は実際よくある事ですからね。だから騎士になる女は家督問題にあまり関係のない次女以降や、そもそも結婚に対して興味の無いもの、女性本人やその実家に何か問題があるものが多いです。実際私も四姉妹の四女です」


「そう……」


「まあ、それが全てではないんですがね」


ーーあれ?じゃあどうしてあんなにルルは怒っているのかしら



「レイチェル様!」



理由がわからないなと思っているとサランが私達に気付く



「あんまりではございませんか!何故この様に酷い仕打ちをされるのでございますか?」


「ああ、それは」


しかし言いかけたが何かとまだチェックなどが残っている事を思い出した。



ーーうん、とりあえずお引き取り願おう



しかしこのまま帰してもまた何かやらかしてくれそうなのでルルに侍女長の所まで一緒に連れて行って貰い事情を話してお茶会の間大人しくしておいて貰うことにした。



「ごめんねルル。嫌な役ばかりさせてるわね」



するとルルは「いえ、とんでもございません」と優しく微笑んだ後「では行って参ります」と言って納得いかないと怒るサランを連れて行ってくれた。



「何でしょうね。ルルはカーヌの事でも言われたんでしょうかね」


ルルの遠くなった後ろ姿を見てノメルが言う



「どう言う事?護衛騎士長だから?」


するとノメルは悪戯っぽい顔でシシシと笑うと私の耳元で囁く


「実はですねレイチェル様。カーヌとルルは恋人同士なのですよ」


「!」


「ふっふっふっふー」


「なにそれちょっと詳しく」


すると後ろから「ん゛ん゛っ!」と咳払いが聞こえる
ノメルと共にそろーりと振り向くと、とても良い笑顔のワカウィーがいた


「レイチェル様。今はとりあえず他の場所を回られるのでしょう?」


「はい………」


「では参りましょうか」


「はい」

歩き出すワカウィーをちらっと見た後にノメルに小声で「近々教えてね!」と言うとばちーんとウィンクをされた



ーーかっわ。うちの護衛騎士達かっわ。




お茶会が終わった後の楽しみが増えた。


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