96 / 149
第二の世界
ウィンク
しおりを挟むーーさっき言ってた所なのに忘れてた………
ナファリの言葉にまだ問題がある事を思い出し頭を抱える
「問題、まだ残ってましたねぇ・・」
少しため息混じりにノメルが呟く
「ええ。なんていうか、うん。忘れてた」
ははは、と乾いた笑いを出しながら現実逃避をしたくなる
ーーああー……護衛騎士のみんなやアリネスと一緒にしたあの簡易お茶会、楽しかったなー………
「あ!!!」
思い出した。あの場所、確か沢山花が咲いていた。それにそれぞれ仄かに香りはするがそんなにきつくもなかった。
「ど、どうされました?!」
焦った様に皆んなが見てくるが花が何とかなりそうな私は一気にご機嫌だ。近くにいたノメルの手を掴んでブンブンと上下に振る
「あ、あの!レイチェル様?!」
「ねえ!みんなで前にお茶会したあの丘の広場!あそこ沢山お花が咲いてたわよね?あのお花を使いましょうよ」
するとノメルの表情がパッと明るくなる
「いいですね!あそこはだいたいいつもお花が沢山ですよ!今ならなんか細長いのとか、でっかい花びらのとかあります!」
ノメルの言っている『細長いの』や『でっかい花びらの』がどんなものかはわからないが何かしら使えそうな物はありそうだ。
「どうかしらアリネス」
アリネスを振り返ると彼女は少し難しい顔をしていた。
「そうですね……確かにあそこなら花は咲いているでしょうが……」
「でしょうが?」
「あれ、野花なんですよね………」
「えーでも綺麗ですよ?」
ノメルが残念そうに言うがアリネスはまだ難しい顔をしている
「やっぱり野花を使うのはマナー違反になる?」
私が聞くとアリネスは首を振る
「いえ、特にその様な決まりはございませんが……まあ基本的に貴族が開催するお茶会で野花を出す人がまずいないので決まり以前の問題ではありますが………
色味や見た目がやはり少し物足りない気が致します」
ーー成る程
「派手な花瓶に入れればカバーされませんか?」
ノメルが言うと隣からワカウィーが「花瓶に花が負けそうですね」と苦笑する
「じゃあじゃあ、花が負けてしまわない様にシンプルな花瓶に入れるのは?」
もう一度ノメルが言うと次はウォレンが呆れた様に「だからそれだと見た目寂しいんだろ」と言う。ノメルはんんんー!と暫く唸っていたが何も思いつかなかったのか「うええぇー」と言うと項垂れた。
「あ、アリネス。あれは?ほら。女性ってよくこんなうっすーい布使ってる気がするんだけど。なんだっけ、ヴェール?あーゆーの重ねて花瓶に巻いたりしちゃだめなの?」
ナファリの言葉に皆ハッとなる
「よし。それで行きましょう。アリネス、ナファリの言う様に薄い布を2枚くらい色違いで花瓶に巻いたりするのはどうなのかしら」
するのアリネスも今度はすぐに頷く
「そうですね。それなら見た目もある程度華やかさが出せますし、派手すぎる事も無いでしょう。早速直ぐにでも取り掛かる者を手配しましょう」
そう言ってアリネスはまたバタバタと忙しそうに動き回り始めた。
「えーっと。とりあえず引き続きカーヌにはアリネスに付いてって貰おうかな」
「かしこまりました」
アリネスの動く様子を見ながら少し考える
ーー私ここにいても邪魔か。ならサランに話を聞かないと、か。あとチェックしないとだめな場所もありそうだし。
なんだかなぁと思いながら空を見上げる。お茶会日和の良い天気だ。
そのままぐーっといける所まで首を後ろに倒して行くとぽすっと首と頭を支えられた
「何をなさっているのですかレイチェル様」
ぐっと視線を移すとふふふ、と笑うワカウィーがいた
ーーかっわ……!
そしてすかさずナファリを見ると案の定ワカウィーを眺めていた。私の視線に気がつくとこちらを向いたのでとりあえずぐっと親指を立てると真顔で同じ様に親指をぐっと立ててくれた。
「さて、じゃあ私は私にできる事をやりますか」
よっと身体を戻し先程までいたお茶会の会場を目指す
ーールル、大丈夫かなー
結果から言うと全然大丈夫じゃなかった。
何というか、サランが物凄く暴れていて色々ルルに対して『行き遅れ』だの『年増』だの色々と口汚く罵っていた。
そして色々と口汚く罵られているのにも関わらず、私が任せた時と同じ笑顔のまま何も言わずにサランの腕を離さないルルが怖かった。
「あっちゃー………ルル、だいぶ怒ってますねー」
私の後ろからひょっこりと顔を出したノメルが言う
「あ、やっぱり?そりゃ怒るわよね……結構な事言われてるし」
今もどんどん近付くにつれてサランの言葉が聞こえてくるがまあ簡単に言えば女のくせに男の様な仕事をしてみっともない、的な事を言っている。
ていうか休憩所的な所に連れて行くんじゃなかったのか。あ、もしかしてサランが暴れてそれどころじゃなかったのかな。
「ああ、いえいえ。女騎士なんて物はあれくらい普段から言われ慣れています。女騎士という立場は絶対数必要ではありますが男勝りだったり、行き遅れたりする事は実際よくある事ですからね。だから騎士になる女は家督問題にあまり関係のない次女以降や、そもそも結婚に対して興味の無いもの、女性本人やその実家に何か問題があるものが多いです。実際私も四姉妹の四女です」
「そう……」
「まあ、それが全てではないんですがね」
ーーあれ?じゃあどうしてあんなにルルは怒っているのかしら
「レイチェル様!」
理由がわからないなと思っているとサランが私達に気付く
「あんまりではございませんか!何故この様に酷い仕打ちをされるのでございますか?」
「ああ、それは」
しかし言いかけたが何かとまだチェックなどが残っている事を思い出した。
ーーうん、とりあえずお引き取り願おう
しかしこのまま帰してもまた何かやらかしてくれそうなのでルルに侍女長の所まで一緒に連れて行って貰い事情を話してお茶会の間大人しくしておいて貰うことにした。
「ごめんねルル。嫌な役ばかりさせてるわね」
するとルルは「いえ、とんでもございません」と優しく微笑んだ後「では行って参ります」と言って納得いかないと怒るサランを連れて行ってくれた。
「何でしょうね。ルルはカーヌの事でも言われたんでしょうかね」
ルルの遠くなった後ろ姿を見てノメルが言う
「どう言う事?護衛騎士長だから?」
するとノメルは悪戯っぽい顔でシシシと笑うと私の耳元で囁く
「実はですねレイチェル様。カーヌとルルは恋人同士なのですよ」
「!」
「ふっふっふっふー」
「なにそれちょっと詳しく」
すると後ろから「ん゛ん゛っ!」と咳払いが聞こえる
ノメルと共にそろーりと振り向くと、とても良い笑顔のワカウィーがいた
「レイチェル様。今はとりあえず他の場所を回られるのでしょう?」
「はい………」
「では参りましょうか」
「はい」
歩き出すワカウィーをちらっと見た後にノメルに小声で「近々教えてね!」と言うとばちーんとウィンクをされた
ーーかっわ。うちの護衛騎士達かっわ。
お茶会が終わった後の楽しみが増えた。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。
なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。
二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。
失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。
――そう、引き篭もるようにして……。
表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。
じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。
ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。
ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
魔王のジョブを持っているVRMMOのアバターで異世界へ転移してしまった件
Crosis
ファンタジー
借金まみれになり自殺した滝沢祐介は、目覚めると自分がプレイしていたVRMMOのアバター、クロ・フリートの身体とチート能力を持ち異世界に転生してしまう。
しかしいくら強力な力があってもお腹は満たせない為転生してすぐ、空腹により気を失うのであった。
そんな彼のハーレム異世界奮闘記である。
異世界召喚された俺は余分な子でした
KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。
サブタイトル
〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜
[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ
エルリア
ファンタジー
第一部完結済み
どこにでもいる普通の中年オタクサラリーマンが、ひょんなことからダンジョンの店長を任されて成長していきます。
もちろん、目的は店舗だけにあらず。
ダンジョン拡張、村の拡大、さらには人を雇って最後はどこに行きつくのか。
え、お店以外のことばかりしてるって?
気のせいですよ気のせい。
ゲーム好きのオタクが妄想と知識を振り絞って他力本願全開で頑張ります。
ムフフもあるよ!(多分)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる