異世界めぐりの白と黒

小望月 白

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第二の世界

辻褄

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「ご馳走さまでした」


「すぐに食後のお茶をご用意致しますね」


アリネスの背中を見送った後この後の事を考える



「えっと、とりあえず祈りの花ランカの花壇は行くでしょ?他には……久しぶりに図書館にも行きたいけど今日は外に出たい気分だし」



しかしどれくらい動けるか不明なので余り欲張らない方が良いだろう



「ランカの所に行った後に決めればいっか」



ーーそういえばミザン様はどうされているのかしら?



アリネスが戻ってきた後に聞けば眉を顰めながらアリネスは「ダラダラと臥せっているそうですよ」と言い舌打ちをしていた。


「なら私、お見舞いとかせめて謝罪の手紙を書いた方がいいわよね?」


思った事を言っただけなのだがそれを聞いたアリネスは般若の様な顔になり「必要ありません」と言い、ぷりぷりしながらどこかへ行ってしまった。



「えぇー……」








再びアリネスが戻ってきた後またアリネス作ドレスに着替えて散歩へと向かう。
部屋と廊下の間に出た所でアリネスに念を押される


「レイチェル様、約束して下さい。体調が悪くなったり、何か違和感を感じればすぐに帰る事。気になることがあればどんな些細な事でも構いませんのでお知らせ下さい」


「わかった」


相変わらず過保護な、とは思うが実際倒れていたので何も言わずにこくんと頷く。


「では参りましょうか」



ガチャリと開かれたドアの向こうには4日ぶりの外があった。
護衛騎士達に心配されながらも挨拶をしているの何だか人数が多い事に気づく


「あれ?どうして今日は全員いるの?」



するとカーヌがにこにことしながら教えてくれる


「皆、レイチェル様が目覚められたと聞いていてもたってもいられず出てきてしまったのですよ」



ーーまじか



そしてそのままカーヌが続ける


「それから皆で話し合った結果休暇を少し返上させて頂きたく」


「えっ」


「心配なさらなくとも、しっかりと休みは頂きます。ただ、レイチェル様が以前仰って下さったものでいくと少し休暇が多いと申しますか……どうせ皆鍛錬場に出てきてしまうのでそれならばレイチェル様にお仕えしようと思ったのです。」



「そう……でもちゃんとお休みは取ってね?あとお休みが必要になればすぐに言ってね?」


「ええ。ありがとうございます」




ーーなんだかなぁ



カーヌとの会話を終え、てくてくとランカの花壇迄歩く。廊下の窓からサワサワと入ってくる風が心地よい。




ーー過ごしやすい季節ね




ランカの花壇にもう少しで着くという所でアリネスが少し気まずそうにする。


「?」


振り返ればワカウィーも少しソワソワしている


ーー何かあったのかしら


しかし理由はすぐにわかった



「なに……これ……」




目の前には生い茂る可憐な花。
祈りの花ランカだ。



「ちょ、え?……え?」



見覚えのある花壇はランカの花で埋め尽くされており他の花々は枯れてはいないが何だか肩身が狭そうにしている。



「ご覧の通りでございます」



すっと隣へ来たアリネスが言う



「いや、うん。これは……すっごい……ね……」



わさわさと生えているランカは何というか、元気だ。


「これ、いつから?」



まさかとは思うが一応聞くと何と私がぷっちんした次の日の朝にはこうなっていたそうだ。


ーーこっわ!



やはり私が原因なのだろうか。でもそんな不思議な力がある自覚は無いし、今やれと言われても出来なさそうだ。


「あの、レイチェル様……」


おずおずとワカウィーが話しかけてくる


「ん?」


「その……もうお気付きかとは思うのですが、ここにあるランカの花の成長にはレイチェル様が関わっていると思われます」


ーーまあ誰が見てもそうなるわよね


「実は少し前からそういう可能性もあるなとは考えていたのですが、自信がありませんでしたのでお伝えせず……申し訳ありません」


「どういう事?」




ワカウイーが言うには以前ここの花壇にランカは咲いていなかったそうだ。しかし私が来てから誰も植えた覚えがないのに生えていた。皆『誰かが植えたのだろう』と思っていたそうだ。これは城の者に聞いて確認してくれたらしい。
そしてランカの成長、増殖。
私が少し近づかない日があると少し元気が無くなり、私が頻繁に行くようになってからはその数を増やしていた。
その辺りからもしかすると私、レイチェルは「何か」の能力持ちなのではないかという考えに至る。

王族が『能力発見の能力』を持っていることは一般的ではないが知っている人は知っている事だ。


どこの誰かもわからない私が『王族の客人』という高待遇を受けているのも見た目の珍しさだけではなく『能力』という問題が絡んでくるなら色々と辻褄が合う。
王族は内容まではわからずとも相手の能力の強さはある程度判別できると聞く。

しかし問題なのは私が一体『何の』能力者なのかだった。
『植物の成長を促す能力』は存在する。そしてこの世界では重宝される。なので王族が保護しようとしても何ら不思議はない。しかし私の場合は『植物の成長』というよりは「祈りの花ランカの成長・増殖」だ。

1つの植物だけを操る等聞いたこともない。しかし私の見た目もこの世界では異例。全てが自分の知っている常識で考えてはいけないのではないか、と思っている内に今回の騒動が起きた。




「と、言うわけなのでございます」


ワカウィーの話をアリネス、護衛騎士のみんなと共に静かに聞いていた私。


ーーまあ、思い出してみれば確かに……



思い当たる節がないわけでは無いな、と考えているとワカウィーが心配そうに見つめてくる。



「ご不安、ですか?」


ーー心配してくれるのね


「ううん大丈夫。ただ能力については知らないことだらけだからよくわからないんだけど、発動?させるのに意識したり呪文みたいなのは必要ないの?」


すると私以外の全員がキョトンとした顔になる



ーーあれ?


「レイチェル様、簡単に言ってしまえば能力は己の手足を動かす様な物なのです。能力の内容によっては多少時間がかかるものもございますが、呪文などは必要ありません」


アリネスの説明で納得がいった。


ーーそりゃあ手足動かすのにわざわざ呪文なんて使わないし、動かすスピードに個人差があるのも納得ね



わかりやすいな、と感心していると少し離れた所でガサリと音がする。振り返ると花壇には余り近く無い植木の裾から布の様な物が見えている。

ミザンの時のことを思い出し私が思わずビクリと肩を動かすと同時にウォレンが前へ出る。


「誰だ!!」
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