異世界めぐりの白と黒

小望月 白

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第二の世界

計画

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「おはようございます。レイチェル様」

次の日の朝私を起こしに来たのはアリネスだった。

「おはようアリネス。えーっと」


「サランならば暫しお暇を頂く事となりました」


「えっ……」


「ご安心を。レイチェル様のせいではございません。昨日サランに連れられた彼女から上部への報告がなされ、それがたまたま王妃様の目に止まったのです」


「その……いつまで?」


「昨日の時点ではっきりとはしておりませんでしたが、少なくとも1ヶ月は先でしょう。職務怠慢も甚だしいですからね」

「そう。でもそうなればアリネスはまた負担が増えてしまうわね。誰か代わりの方が来るの?」


「いえ。正直申しますとレイチェル様の新たな噂が広まっており、レイチェル様の第二侍女を申し出る者が後を立たないのです。しかしこの状況で誰かを選べばいらぬ争いの種にしかなりませんし、何よりレイチェル様の身が危ないのです」


「私の身?」


「はい。レイチェル様がこの城へ来られてからというもの、使用人が随分と増えました」


「そうなの?」


「はい、しかし多少は良いのです。王族の客人ともなればそれなりに使用人も必要ですから。問題なのはこの何日かで不自然な程使用人が増えた事です」


「不自然って?」


「実は侍女長もどうしてこうなっているのかわからない程に人数が増えているのです。そしてそのほぼ全ての者達がこの国でも有数の貴族邸から移ってきた者達なのです」

「それがどうしてだめなの?」

「別に他の貴族の所から王城へ働き場所を移す者がいるのは別段珍しい事ではありません。現に私もそうでしたし。しかしいかんせん多過ぎるのです。そして時期がなんとも言えないのです」


ーー時期?どういう意味かしら


「働き場所を移してはいけない時期というものがあるの?」


「いえ、そうではなく……」


すると突然歯切れが悪くなるアリネス

「そうではなく?」

「その……」

「うん」

「『ヴォルフ様がレイチェル様に正式に婚約を申し込まれ、レイチェル様もはっきりとは承諾はしていないが密かに王妃になる為の教育者を招いた』という噂が現在使用人の間で広がっており……」


「………え?」

「以前からレイチェル様にお仕えしたいと願っていた者達が更に強く侍女長へと願い出ているそうなのです。そして負けじと新たに移動してきた者達も侍女長に売り込みを図り、現在収集がつきません」


ーーまってまって。その噂流したのって……


「つまりもしその者達が他の貴族からの刺客で、レイチェル様を王妃候補から引き摺り下ろす為に遣わされた者達ならば、今レイチェル様に新たな使用人をつけるのは危険なのです」


「あっ……はい。なるほど………」


「………」

「………」

「ご理解頂けましたか?」


「え、ええ」


ーー物凄く面倒な事になっている事は。


「ですがご安心下さい。レイチェル様にご不便をお掛けしない様に私が精一杯お世話をさせて頂きます」


「………それ結局アリネスに全部負担が行ってるのよね?全然安心できないんだけど」


「………問題ありません」


ーー不安だわ………



しかしアリネスが「問題ない」と言い張るので、とにかく、私はいらない事をしない様大人しく過ごそうと思う。


「ああそうでしたレイチェル様」

「何?」

「昨夜お話を伺った時にお手紙の返事を書くと仰っておいででしたので便箋をいくつかご用意しております。お好きな柄をお選び下さい。もし不足がございましたらすぐにご用意致します」


「あらありがとう!流石ね」


「恐れ入ります」


「ただ、お茶会になるんだけどこの手紙?招待状?も出す順番とか関係あるかしら。サランは順番がある様に言っていたんだけど」


「順番ですか?いえ、特にございません。というかお茶会の招待状以外の物でも特に順番等ございません。何故サランが順番などを気にするのかが理解できませんが私が知り得る限りのマナーでは特に問題ありません」


ーーそうなのね。なら適当に返すか………


「わかった。じゃあ今日はお茶会についての計画を立てたいのだけど、私何もわからなくて。アリネスにまた頼ってしまう事になるんだけどお手伝いお願いしてもいいかしら」

するとアリネスは少し嬉しそうに「お任せください」と言ってくれた。
基本的にずっと真顔のアリネス。しかし同じ真顔でも機嫌の良い時、悪い時が雰囲気で何となく分かるようになってきた。


ーーアリネスが可愛い……!


その後私達は昼食までの時間手紙をくれた方々を招待するお茶会についての計画を立てた。
とりあえずざっくり決まったのは

・日程は3週間後
これは一応ヴォルフが提案してくれた事とは言え王城でする事になるので申請やらが必要になる。それを考えると最短でも3週間後にする事になった

・お茶会の規模
そもそも手紙を送ってくれた人だけにするのか、それ以外の有名な貴族も呼ぶのかも考えたがとりあえず今回は手紙をくれた人だけにする事となった。なので招待はざっと30人程だ。十分多い。多すぎる。

・時間
王城から離れた所から来る方々もいると思うのでこれは昼食と夕食の間の時間になった

・王族の出席の有無
楽しい事好きそうなあの王族達だ。言えば来たがるかもしれないが正直来て欲しくない。何が何でも阻止したい。
私がお茶会を開けば王族が参加するだなんて噂が出ればますます面倒な事になるのは目に見えている。なのでアリネスにはくれぐれも、くれぐれも王族は不参加でとお願いした。
それでも少し不安が残るので近い内にナーニャに直接お願いするつもりだ。


「ふぅ。こんなものかしら」


「そうですね。当日のお菓子や飲み物等細かい所は追い追い決めて行くのでとりあえずはこれくらいかと」


「決める事……まだまだあるわよね」


「そうですね。席順や王城でやるのならどの場所を使うのか等まだまだ決めなければいけない事はありますね」


「ですよねー」


「ですがまあキリも良いのでこのまま昼食になさいますか?気分も少し切り替わりますし」


私は何だか少し楽しそうな様子のアリネスの提案に全力で乗る事にした。


「ぜひそうしましょ。そして昼食の間お茶会の事は一旦禁句よ。別の事考えましょ」


「かしこまりました」

ふっと軽く笑みを漏らしたアリネスは一礼して昼食の準備に取り掛かってくれた。


ーーなんだかさっきから機嫌いいわね……



鼻歌でも歌いそうに見えるアリネスを眺めながら私は今日の昼食のメニューに想いを馳せた。



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