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第二の世界
ロリ巨乳
しおりを挟むどうやら止まったらしいアリネスの鼻血とその処理が終わる頃、私は今日の予定を考えていた。
王族の方々からは私が望むならいつまでもいてくれて構わないと言われた。しかしいつまでも、と言われてもずっとお世話になるのは心苦しい。
しかし行く当てもなければ金銭を稼ぐ術も無い。
なので一先ずはお言葉に甘えさせて頂く事にして、この世界の事を調べる事にした。そうすれば何か思い出すかも知れないし、そうこうしている間に私の両親や親族が探しに来てくれるかもしれない。
「アリネス」
「何でしょうか」
「王宮図書館を利用させて頂きたいんだけど、どなたに許可を頂ければいいかしら」
「かしこまりました。手配して参りますので少々お待ちを」
さっと礼をして部屋を出て行くアリネス。
ーーああしていれば本当に有能な侍女なんだけど………
少しすればすぐにアリネスは戻ってきた。
「今、他の者に許可を取りに行かせましたので少々お待ち下さい」
そうしてまた静かに私の後方で控える彼女。どうせ待っているだけで暇なので少しお話しをする事にした。
「そういえばアリネス。貴方いくつなの?」
「今年で24になります」
「そうなの。私………は今自分がいくつかわからないから貴方が年上か年下かもわからないわね」
そう言うとアリネスは「私よりも年上には見受けられませんが」と言って少し笑った。
「ちょっとそれどういう意味?私が子供っぽいって事?」
私も笑いながら答える
「大丈夫です。いついかなる時もレイチェル様はお可愛らしいです」
再び鼻を抑え出す彼女を見てこの話はやめておこうと思った時、コンコンとノックの音が聞こえる。すると今までの変態ぶりが嘘の様にできる侍女オーラを撒き散らしながらアリネスがドアへ向かい、訪問者の対応を始める
ーーまた暇になった。
ふと肩にかかる髪の毛を手に取り眺めてみる。何度見ても違和感がある。
ーーどうして私、自分の髪色が黒だと違和感があるんだろう
「お待たせ致しましたレイチェル様」
すっと音もなくアリネスが正面へ立つ
「王宮図書館の使用許可が降りました。ですのでこれからはレイチェル様が御覧になりたいと思えばお好きな時間、王宮図書館へ赴いて本を読んで頂くことが可能となります」
「ありがとう。なら早速今から行ってもいいかしら」
「はい。そう仰るのではないかと思い先程図書館の者に先触れを出しておきましたのでいつでも可能です」
キビキビと答え、すっと礼をするアリネス
ーーおおおお。アリネスが変態じゃない
「それは助かるわ。アリネス、着いてきて下さる?」
「勿論でございます」
図書館へ向かう際部屋の入り口付近に何人かの護衛の人がいたので別に付いて貰わなくても大丈夫だと何度か言ってみたのだが「王妃様が『どうしても心配なの』と仰るので受け入れて欲しい」と困った顔で告げられればそれ以上は言えなかった。
ーーただの居候なのに図書館へ行くだけで護衛まで動かして何様よって感じね
図書館は正に『荘厳』というに相応しい建物だった。外側はシンプルな作りで白を基調にきているのに対し図書館の内部は木の温かみを感じられる作り。
しかし天井まで届く高い本棚、そこにぎっしりと収められている古そうな本。
そのまま上を見上げれば巨大な天井画。
ーーあれは何の絵かしら。細長い……龍?と、槍を持った人々?
天井画の一角に少し気になる絵を見つけ指差す
「ねぇアリネス。あれは何の絵かしら」
「ああ、あれはとても有名な御伽噺の一つで『龍神様からの天罰』の一場面ですね。興味がおありならば龍神様の本をお持ちいたしましょうか?」
「っ!!」
「レイチェル様?どうされました?!」
何故か急に頭が痛くなり目の奥が刺されている様な感覚がする。しかし今はアリネスが先だ。
「ごめんなさい、大丈夫よアリネス。余りにも熱心に上を見上げていたから首が攣ってしまったみたい」
ーー頑張って笑ってみたけどどうかしら
少し脂汗が出てきた。正直どこかへ座りたい。すると少しこちらを見ていたアリネスは頷くと
「成る程。では首を休ませる為にも少しお座りになられては?」
と言いながらさり気なく私の事を支えてテーブルのある所まで誘導してくれた。彼女の優秀さにただただ感謝をしながら足を進める。余り利用する人が居ないのか閑散としている図書館内に私とアリネス、そして護衛の人の足音が響いている。
「ありがとうアリネス」
「いえ」
軽く首を振りながら真顔で答えた彼女はすぐに席を離れ、急いだ様子で戻ってきた。
戻った彼女の後ろには小人族らしき女性がトコトコと歩いている。
「初めまして。私はスーク・ルードと申します。どうぞスークとお呼び下さいませ。
こちらの王宮図書館で司書の1人を務めさせて頂いておりますので、御用がございましたら何なりとお申し付け下さい」
そう言って微笑む女性は薄い緑の髪に大きな大きな丸眼鏡。そして長い髪を両サイドの低い位置で三つ編みにして垂らしていた。
「初めまして。レイチェルと申します。」
ぺこりと頭を下げるとにこにことしたスークが言った。
「本日は初めて王宮図書館へお越し下さったと聞きしました。ですのでよろしければ本を探すお手伝いをさせて頂こうかと」
「それは助かります。ぜひお願いします」
そうして私はいくつか見てみたい系統の本を伝え、スークはそれをメモすると他の司書へと渡してから図書室の案内を申し出てくれる。
「では参りましょう」
「よろしくお願いします」
ーーさあ、わくわくする図書館探索の始まりね!
消えた頭痛をすっかり忘れ去った私は立ち上がり、スークの案内に従った。
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