27 / 149
第一の世界
別ルート
しおりを挟むさてどうするか。
せっかく見つけたと思った秘密基地がどうやらナルザルクも知っていたらしい。
というか私が見つけた時に見られてたらしい。
ーー1人で、って言われたけど。前のディードレーヤの事を考えたらやめておいた方がいいわよね
結局あの図書館の後サルティナやリリアンナと一緒に講義を受けたが全然頭に入らなかった。
ーー次から次へと………
思い出したら現実逃避で眠たくなってきた
「レイチェル。夕飯ができましたが食べられそうですか?」
部屋でうんうん考えているとドアからひょっこりパールが顔を出していた。
「ありがとうパール。食べる。あとラクナザスに連絡を取ってもらえる?後でいいから」
「わかりました」
パールがリビングに向かったのを見送ってため息をつく
「のんびり暮らしたいだけなんだけど」
夕食が終わった後ラクナザスと通信をして今日あったことをざっくりと話したら盛大なため息が聞こえてきた
「ラクナザス?ごめんなさい。怒ってる?」
今までラクナザスにはここまで落胆した態度を取られた事がない。よっぽどやらかしてしまったのだろうか
「いや、違うよ。大丈夫。レイチェルは悪くないんだ」
そう話すラクナザスの声はやはり少し疲れていそうだった
「とりあえず明日のその『秘密基地』とやらには私も行こう」
と言ってその日の通信は切った。
「私も行きましょうか?」
パールが心配そうに聞いてくれるが「大丈夫」と笑って断った。元々1人でと言われているのにラクナザスを連れていくのだ。さすがに2人は何だか悪い気がする。
ーーもしナルザルク様が本当にラクナザスの友達でいい人だったら何かお詫びになる様なものが必要よね
丁度おやつ用のクッキーが切れていた所だ。明日の秘密基地には何かお菓子と紅茶でも持って行こう
そう思ってパールとチョコチップクッキー、ストロベリーチーズタルトを作った。飲み物は明日の朝でいいか。
この学園の時間割的には
9:00~10:30 1限
10:30~11:00 休憩
11:00~12:30 2限
12:30~14:30 昼休憩
14:30~16:00 3限
という具合だ。
しかも3日行って4日休むなんともやる気の感じられない学校だがこの世界ではこんな物らしい。在学率が高く、外に仕事を持つ人も多くいるこの学園ではずっと学校に拘束する訳にもいかない。なのでこの時間内で自分の興味のある物を受講したりはするがとりたくなければ取らなくても特に罰則なども無い。
ーーつくづくここが元の世界とは違う場所なのだと実感する瞬間ね
寝支度をして布団に入りながら考える
「とにかく明日は余計な事を喋らずにできるだけボロを出さないようにしないと」
そう決意して目を閉じた
朝。とりあえず普通に学校に行って授業を受けた。どうすればボロを出さずにいられるか。とりあえず曖昧にニコニコしておけば乗り越えられるか?等をダラダラと考えていたらあっという間に放課後になってしまった。
手元には昼食の時に持ってきたクッキー達。
夕飯に響くといけないのでタルトは持って帰って貰える様にパールが包んでくれた。ラクナザスとナルザルクの分で2人分。
とりあえず人目につかなさそうな所でラクナザスと待ち合わせをしてから秘密基地に向かう事になっている。
「ああレイチェル。ごめんね、待ったかい?」
ラクナザスが急いだ様子で来てくれた。
「大丈夫。私も来た所よ。じゃあ行きましょうか」
秘密基地に着くまでに作戦会議をする
「じゃあレイチェル。大まかな事は私に任せてくれたらいいから」
とりあえずラクナザスが色々と話してくれる事になったので私は無難にニコニコしておく事になった
「あ、念の為に確認したいんだけど」
「ん?」
「ラクナザスとナルザルク様はちゃんとお友達なのよね?」
そう聞くとラクナザスは笑い出し「そうだね。ちゃんと友達だと私は思っているよ」と言っていた。ならきっと変な人ではあっても悪い人ではないのだろう
「確かここを曲がって奥に進んでいって………」
私が案内するのに前を歩いていると後ろから「へぇ、こんな奥の方までは来たことがなかったな。よく見つけたね」と言う声が聞こえてきた。
「そうなの!こう、こっちに素敵な場所がありそう!って言う直感がね!」
そう言うとラクナザスは「直感なんだね」とクスクス笑っていた。直感は大事だと思う。
そうこうしているうちに例の植木部分に来た。
「それでね、ここをこう潜っていくの」
「!!!!ちょ、ちょっとレイチェル!」
ハイハイスタイルになって進もうと思った瞬間、少し焦った声のラクナザスに腕を掴んで立たされてしまった
「え、なに?この先なんだけど」
「まさかと思うけど、さっきみたいなポーズで入っていかないといけないのかな?」
ちょっと眉毛が下がって情けない顔のラクナザスが聞いてくるが仕方ないじゃないか。
でも確かに貴族のラクナザスは地べたにハイハイする事なんて抵抗しか感じないかもしれない
「でも他に入り口はないし……」
そう呟くと何かを少し考えていたラクナザスがため息混じりに「わかった」と言い出した
「じゃあ、私は後ろを向いて待っているからレイチェルは先に行ってくれる?後から私も行くよ」
ーーおお、ハイハイを決心してくれたみたい
「わかった。じゃあお先に」
ラクナザスが後ろを見張りだしたのを横目に見ながら穴を進んでいった。
ーーやっぱりわくわくする!!
ハイハイで進むと秘密基地に着いた。この『誰も知らない特別感』が何とも言えない。
……がっつりあと2人増えるけど
「………レイチェル、そこ少しずれて貰ってもいい?」
しまった。ずっと入り口に突っ立っていたら後ろのラクナザスがつっかえてしまった
「あ、ごめん。わかった」
横にずれるとラクナザスが出てきて立ち上がり、秘密基地を一目見て「こんな場所があったんだね」と楽しそうに目を細めた
「でしょう!わくわくするわよね!」
そう言うとラクナザスは「そうだね」と言いながら私の頭をポンポンと優しく叩いた
ーーはしゃぎすぎたかしら?
「随分とその子を気にかけているんだね」
突然声が降ってきた。慌てて上を向くとザッと言う音と共に見事な着地を決めたナルザルクが降ってきた。
「う、上から飛び降りたの……?」
思わず口に出してしまった。確かに枝は1つ1つしっかりしていそうだし登りやすそうな木ではあるけれど、降りてくるならせめて枝を伝ってきて欲しい。上から降ってきて着地失敗すると捻挫どころか下手をすれば骨だって折れる高さだ
「また会ったねレイチェル嬢。でも護衛付きだなんて信用されてないねぇ」
楽しそうにラクナザスを見ながらナルザルクがこちらへ近づいて来る。
どうすればいいかなと思いラクナザスの方を見上げてみると呆れた顔をしていた。
「どうせ私が来る事も想定していたんだろう?さっさと要件を話せ」
「要件?伝えた通りだよ。レイチェル嬢と仲良くなりたいんだ」
呆れた様子のラクナザスに飄々としているナルザルク。本当に友達なのだろうか
「あっ」
「どうしたのレイチェル」
「私余り多くはないけどお菓子を持ってきたのよ。せっかくだから食べない?」
「ああ、だから荷物が多かったんだね」
本当は待ち合わせで合流した時にラクナザスが荷物を持ってくれようとしたのだが、流石に今日の荷物は重たいので遠慮しておいたのだ
「レイチェル嬢は食べ物を持ってきてくれたの?」
わくわくした様子でナルザルクが私の鞄を覗き込んできた
「ええ。下に敷くものもあるから少し座りませんか?」
そうして芝生の上に布を広げていく。本当はブルーシートの様なものがあれば軽くて便利だけど、この世界には無いようだった。流石に布は重たかった
「こっちを引っ張ればいいのかな?」
「おいラクナザス、余りそっちを引っ張るとこっちに皺が入るだろ」
1人でやろうと思っていたのに普通に2人が手伝ってくれたのでスムーズに準備ができた。
「あの、お口に合うかはわからないのですが」
そう言って持ってきたクッキーと甘くないミルクティーを並べるとラクナザスがハッとした顔になった
「まってレイチェルこれもしかして……」
「ありがとう。いただきます」
ラクナザスが何かを言い切る前にナルザルクがクッキーを頬張る。するとすぐにナルザルクが目を見開き、手元のクッキーをまじまじと見始めた
ーーえ?美味しくなかったかな?結構美味しくできたと思ったんだけど……
「レイチェル………」
呼ばれた方を見るとラクナザスが片手で顔を覆いながら肩を落としていた
ーーまだ何も話してないのに何かまずかったのかな?目上の人にはお菓子渡しちゃいけないとかあるのかな
「ラクナザス?」
どんどん不安になってきてラクナザスを覗き込もうとした時
「レイチェル!!」
突然隣から衝撃が伝わり驚いて見上げるとナルザルクに抱きしめられていた
「!!!」
「!!!」
私とラクナザスが驚いていると今度は激しく頭をワシワシ犬のように撫でられた
「?!」
「俺こんなうまいもん食ったの初めてだよ!まじでうまいなこれ!どこで買ってきたんだ?」
もう訳が分からなくなってきた。ナルザルクの態度も口調も別人の様に変わってしまったし、クッキーをどうやら喜んでくれているのはいいが結構苦しい。
あとそろそろ髪がぐしゃぐしゃになるからやめて欲しい
「ナルザルク!」
ラクナザスがナルザルクの腕を掴み奇行を止めてくれた
「何をしている。話をするんじゃないのか」
「ははは、って言っても特にこれを話そうってのはないんだよ。適当に喋ろうと思ってはいたけどな」
ーーまじか。
とりあえず解放して貰った後にどうしてこんな奇行に走ったか聞いてみた所、今までに食べた事のない美味しいお菓子に興奮したそうだ。お気に召された様で何より。
「で、これどこで売ってたんだ?」
次のクッキーに手を伸ばしつつナルザルクが聞いてきたから「これは私が」まで言って思い出した
ーー私のクッキー他の人にあげたらいけないんだった!!!!!
咄嗟にラクナザスを見ると少し引き攣った笑顔でこちらを見ている。申し訳ないが利用させて頂こう
「ラクナザスにお願いして用意して貰いました」
にっこり微笑みながら答えるとナルザルクはニヤニヤしながら「へえ」と言いながらクッキーを口へ放り込んだ
ーー誤魔化せたかしら
ふふふと曖昧に笑っておいたが背中に変な汗が流れる
結果的に言うとバレた。というかもう最初の方から割とバレていたらしい。そして芋づる式にどんどんばれた。
結局もうここまできたら巻き込まれて貰おうと言う事で本人も望んだので全て話し、ラクナザス・パール・ゼルウィンドに続いて4人目の情報共有者になった。
クッキーの事を知っている事を考えればゼルウィンドよりも知っている情報が多いくらいだ。
疲れた顔のラクナザスが言うには『変人だが信用はできる』人らしい。ちなみに雑な方の話し方が素で、丁寧に話している時は他の生徒と余計なトラブルを起こさない様猫をかぶっているらしい。この世界も身分差が面倒臭そうだ。
とりあえず今日はお開きにするのでお土産を2人に渡してまた穴に向かおうとするとナルザルクが声をかけてきた
「あのさ。前も思ったんだけど」
「?」
「あっちに入り口あるぞ」
「!!!」
驚いた私を見てナルザルクは大爆笑しながら転げ回っているし、ラクナザスは何とも言えない微妙な表情をしていた。
「そういう事は図書室の時点で教えてよ……」
私の呟きはナルザルクの笑い声に掻き消されて消えていった
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。
まゆみ。
ファンタジー
今回は公爵令嬢に転生ですか。あ、でも子沢山の末っ子らしい。
ま、チートスキルがあるわけでもないし、普通の人生ですよって…え?ちょっと待って?番ですか?聖女ですか?花?なにそれ?……いやいやいや、記憶を『忘れない』で転生を繰り返してるだけの何の取り柄も無い私に、無理難題吹っかけないでくださいよ?
『忘れない』けど、思い出せない、このポンコツの私にどうしろと?
──3歳から始まる異世界見聞録。
龍にエルフに獣人に……その他もろもろ世界での目標は、成人まで生き延びる事。
出来れば長生きしたいんです。
******
3歳児から始るので、最初は恋愛的なものはありません。
70話くらいからちょこちょこと、それっぽくなる……と良いな。
表紙のキャラも70話以降での登場人物となります。
******
「R15」「残酷な描写あり」は保険です。
異世界→現代→異世界(今ココ)と転生してます。
小説家になろう。カクヨム。にも掲載しております。
挿絵というほどのものでは無いのですが、キャラのラフ画をいくつか載せていきたいと思っています。
異世界召喚されたのは、『元』勇者です
ユモア
ファンタジー
突如異世界『ルーファス』に召喚された一ノ瀬凍夜ーは、5年と言う年月を経て異世界を救った。そして、平和まで後一歩かと思ったその時、信頼していた仲間たちに裏切られ、深手を負いながらも異世界から強制的に送還された。
それから3年後、凍夜はクラスメイトから虐めを受けていた。しかし、そんな時、再度異世界に召喚された世界は、凍夜が送還されてから10年が経過した異世界『ルーファス』だった。自分を裏切った世界、裏切った仲間たちがいる世界で凍夜はどのように生きて行くのか、それは誰にも分からない。
異世界召喚された俺は余分な子でした
KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。
サブタイトル
〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜
転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!
akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。
そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。
※コメディ寄りです。
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
祈り姫
花咲蝶ちょ
ファンタジー
現代日本と似たファンタジーです。(強調)
日和国の祈り姫、法子は学校で「戦犯王の子孫は消えろ!」と机に書かれるいじめにあった。
先の戦争、自分の血筋、存在に嫌気をさし家出するが、若く宮を守衛をしていた桜庭李流に出会い本当の日和国を知ることに・・・
国とは歴史とは帝とは戦争とは?
★運命と宿命の縁
李流が主人公の神様と家族の物語。
(主婦と神様の恋愛事情と関連します)
★伝統の縁
国と伝統の大切さがテーマの物語
(あやかしと神様シリーズと関連します。祈り姫恋日和も関連します。)
単体でも読めます。
祈り姫のスピンオフ
☆主婦と神様の恋愛事情
★あやかしと神様の恋愛成就【完結】
★ネトウヨのお姫様【完結】
☆祈り姫☆恋日和
※祈り姫の十年後のお話です。
よろしくお願いいたします。
より世界観広がります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる