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第一の世界
凛花を捨てる日
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ラクナザスの話を聞き終わって一息つく。
何だか本当に知らない世界に来てしまったんだなと言う感想しかでてこない。
「ああ、それからね」
黙ったままでいるとラクナザスが話しだした。
「貴方のりんかと言う名前はとても素敵だと思うんだ。でもこの世界では珍しすぎて目立つとも思うんだ。不本意かもしれないけれど、この世界では名前を変えた方がいいかもしれない」
ーー名前。生まれてすぐに真っ白な私の髪を見た両親が『辛い事があっても凛とした花の様に強く生きて行けます様に』という願いを込めてつけてくれた名前。
確かに、髪や瞳を見て珍しそうな顔をしたりからかってきた人達が居なかった訳ではない。
でも私には心から私を愛してくれる両親や、見た目なんて関係ないと笑いながら仲良くしてくれた大切な友人達がいた。
この見た目を嫌だと思わなかった訳ではないが、それで両親を恨んだ事なんて1度もない。
そんな大好きな両親がつけてくれた名前を変える……
正直嫌だった。
私は私である事に誇りを持っている。名前なんて変えなくても大丈夫だと思う。
でも目の前のラクナザスは知り合った直後だけれど、多分本当に心配してくれている。と、思う。
それにここは私のいた世界じゃない。
見た目は似ていても私がいた世界の常識で動いたらいけないのかもしれない。
「わかり……ました。でも私、ここの世界の名前がどんなのかわかりません。
特に希望もないのでよければラクナザスさんが決めて下さいませんか」
そう言うとラクナザスは一瞬驚いた様な顔をした後すぐに微笑み「いいですよ」と言った。
ーーできれば覚えやすい名前にして欲しいな
そんな事を考えながら待っていると、顎に手を当てて考えていたラクナザスがこちらを見た。
「レイチェルと言うのはどうだろう。
初めて外でりんかを見た時に、『レイチェルの花』の様だと思ったんだ。」
「レイチェルの花・・ですか。どんな花なのでしょうか」
「白くて可憐な花だよ。厳しい環境程美しく咲き、いつでも凛としているんだ。
この世界では大きくて花弁が多い花が好まれる事が多いけれど、私はレイチェルの花がとても美しいと思っているよ」
にっこりと微笑みながら口説いているのかと思う様なクサイ台詞をさらりと言っているのに違和感がないのは、やはりイケメンだからだろうか。
残念ながら聞き慣れない台詞すぎてゲームをしている様な感覚になってしまい「ああ、どうも」くらいしか思わないけれど。
それにしてもレイチェルの花・・
どんな花だろうか
自分と似ていると言われると少し気になるな。白いという情報しか入ってなかった。
「レイチェルですか。素敵な名前ですね。ありがとうござきます。でもお花の名前をそのまま取っても良いのでしょうか」
そう聞くとラクナザスは「問題ないよ」と言った。花の名前をそのままつけるのは別に珍しい事でもないらしい。
確かに日本でもユリとかアイとかいたから変ではないのかもしれない。
そうして私は凛花からレイチェルになった。
話が終わった後はラクナザスが「疲れただろうから今日はここで休むといいよ」と言って出て行った。
確かに疲れた気がする。
保健室で一晩過ごすのか・・と微妙な気持ちにならないではないけれど、今から移動するのも面倒だ。
ここはお言葉に甘えておこう。
「ありがとうございます。ラクナザスさん。」
「また何か困った事があれば私を頼ってくれて大丈夫だから。それと、私のことはラクナザスと。おやすみ、レイチェル」
「わかりました。おやすみなさいラクナザス」
ラクナザスが出て行ってからすぐに睡魔がやってきた。よく働かない頭で何か忘れている気がするのを必死に思い出そうとする。
そして眠りにつく直前ぼーっと思い出した。
ーー私、ラクナザスにこの世界ではない所から来たって言ったかしら・・・
何だか本当に知らない世界に来てしまったんだなと言う感想しかでてこない。
「ああ、それからね」
黙ったままでいるとラクナザスが話しだした。
「貴方のりんかと言う名前はとても素敵だと思うんだ。でもこの世界では珍しすぎて目立つとも思うんだ。不本意かもしれないけれど、この世界では名前を変えた方がいいかもしれない」
ーー名前。生まれてすぐに真っ白な私の髪を見た両親が『辛い事があっても凛とした花の様に強く生きて行けます様に』という願いを込めてつけてくれた名前。
確かに、髪や瞳を見て珍しそうな顔をしたりからかってきた人達が居なかった訳ではない。
でも私には心から私を愛してくれる両親や、見た目なんて関係ないと笑いながら仲良くしてくれた大切な友人達がいた。
この見た目を嫌だと思わなかった訳ではないが、それで両親を恨んだ事なんて1度もない。
そんな大好きな両親がつけてくれた名前を変える……
正直嫌だった。
私は私である事に誇りを持っている。名前なんて変えなくても大丈夫だと思う。
でも目の前のラクナザスは知り合った直後だけれど、多分本当に心配してくれている。と、思う。
それにここは私のいた世界じゃない。
見た目は似ていても私がいた世界の常識で動いたらいけないのかもしれない。
「わかり……ました。でも私、ここの世界の名前がどんなのかわかりません。
特に希望もないのでよければラクナザスさんが決めて下さいませんか」
そう言うとラクナザスは一瞬驚いた様な顔をした後すぐに微笑み「いいですよ」と言った。
ーーできれば覚えやすい名前にして欲しいな
そんな事を考えながら待っていると、顎に手を当てて考えていたラクナザスがこちらを見た。
「レイチェルと言うのはどうだろう。
初めて外でりんかを見た時に、『レイチェルの花』の様だと思ったんだ。」
「レイチェルの花・・ですか。どんな花なのでしょうか」
「白くて可憐な花だよ。厳しい環境程美しく咲き、いつでも凛としているんだ。
この世界では大きくて花弁が多い花が好まれる事が多いけれど、私はレイチェルの花がとても美しいと思っているよ」
にっこりと微笑みながら口説いているのかと思う様なクサイ台詞をさらりと言っているのに違和感がないのは、やはりイケメンだからだろうか。
残念ながら聞き慣れない台詞すぎてゲームをしている様な感覚になってしまい「ああ、どうも」くらいしか思わないけれど。
それにしてもレイチェルの花・・
どんな花だろうか
自分と似ていると言われると少し気になるな。白いという情報しか入ってなかった。
「レイチェルですか。素敵な名前ですね。ありがとうござきます。でもお花の名前をそのまま取っても良いのでしょうか」
そう聞くとラクナザスは「問題ないよ」と言った。花の名前をそのままつけるのは別に珍しい事でもないらしい。
確かに日本でもユリとかアイとかいたから変ではないのかもしれない。
そうして私は凛花からレイチェルになった。
話が終わった後はラクナザスが「疲れただろうから今日はここで休むといいよ」と言って出て行った。
確かに疲れた気がする。
保健室で一晩過ごすのか・・と微妙な気持ちにならないではないけれど、今から移動するのも面倒だ。
ここはお言葉に甘えておこう。
「ありがとうございます。ラクナザスさん。」
「また何か困った事があれば私を頼ってくれて大丈夫だから。それと、私のことはラクナザスと。おやすみ、レイチェル」
「わかりました。おやすみなさいラクナザス」
ラクナザスが出て行ってからすぐに睡魔がやってきた。よく働かない頭で何か忘れている気がするのを必死に思い出そうとする。
そして眠りにつく直前ぼーっと思い出した。
ーー私、ラクナザスにこの世界ではない所から来たって言ったかしら・・・
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