異世界めぐりの白と黒

小望月 白

文字の大きさ
上 下
3 / 149
第一の世界

凛花を捨てる日

しおりを挟む
ラクナザスの話を聞き終わって一息つく。
何だか本当に知らない世界に来てしまったんだなと言う感想しかでてこない。

「ああ、それからね」

黙ったままでいるとラクナザスが話しだした。

「貴方のりんかと言う名前はとても素敵だと思うんだ。でもこの世界では珍しすぎて目立つとも思うんだ。不本意かもしれないけれど、この世界では名前を変えた方がいいかもしれない」


ーー名前。生まれてすぐに真っ白な私の髪を見た両親が『辛い事があっても凛とした花の様に強く生きて行けます様に』という願いを込めてつけてくれた名前。

確かに、髪や瞳を見て珍しそうな顔をしたりからかってきた人達が居なかった訳ではない。
でも私には心から私を愛してくれる両親や、見た目なんて関係ないと笑いながら仲良くしてくれた大切な友人達がいた。
この見た目を嫌だと思わなかった訳ではないが、それで両親を恨んだ事なんて1度もない。

そんな大好きな両親がつけてくれた名前を変える……



正直嫌だった。
私は私である事に誇りを持っている。名前なんて変えなくても大丈夫だと思う。
でも目の前のラクナザスは知り合った直後だけれど、多分本当に心配してくれている。と、思う。

それにここは私のいた世界じゃない。
見た目は似ていても私がいた世界の常識で動いたらいけないのかもしれない。


「わかり……ました。でも私、ここの世界の名前がどんなのかわかりません。
特に希望もないのでよければラクナザスさんが決めて下さいませんか」

そう言うとラクナザスは一瞬驚いた様な顔をした後すぐに微笑み「いいですよ」と言った。


ーーできれば覚えやすい名前にして欲しいな



そんな事を考えながら待っていると、顎に手を当てて考えていたラクナザスがこちらを見た。

「レイチェルと言うのはどうだろう。
初めて外でりんかを見た時に、『レイチェルの花』の様だと思ったんだ。」

「レイチェルの花・・ですか。どんな花なのでしょうか」


「白くて可憐な花だよ。厳しい環境程美しく咲き、いつでも凛としているんだ。
この世界では大きくて花弁が多い花が好まれる事が多いけれど、私はレイチェルの花がとても美しいと思っているよ」


にっこりと微笑みながら口説いているのかと思う様なクサイ台詞をさらりと言っているのに違和感がないのは、やはりイケメンだからだろうか。
残念ながら聞き慣れない台詞すぎてゲームをしている様な感覚になってしまい「ああ、どうも」くらいしか思わないけれど。


それにしてもレイチェルの花・・
どんな花だろうか
自分と似ていると言われると少し気になるな。白いという情報しか入ってなかった。

「レイチェルですか。素敵な名前ですね。ありがとうござきます。でもお花の名前をそのまま取っても良いのでしょうか」


そう聞くとラクナザスは「問題ないよ」と言った。花の名前をそのままつけるのは別に珍しい事でもないらしい。
確かに日本でもユリとかアイとかいたから変ではないのかもしれない。

そうして私は凛花からレイチェルになった。

話が終わった後はラクナザスが「疲れただろうから今日はここで休むといいよ」と言って出て行った。
確かに疲れた気がする。
保健室で一晩過ごすのか・・と微妙な気持ちにならないではないけれど、今から移動するのも面倒だ。
ここはお言葉に甘えておこう。


「ありがとうございます。ラクナザスさん。」

「また何か困った事があれば私を頼ってくれて大丈夫だから。それと、私のことはラクナザスと。おやすみ、レイチェル」

「わかりました。おやすみなさいラクナザス」
































ラクナザスが出て行ってからすぐに睡魔がやってきた。よく働かない頭で何か忘れている気がするのを必死に思い出そうとする。
そして眠りにつく直前ぼーっと思い出した。





ーー私、ラクナザスにこの世界ではない所から来たって言ったかしら・・・

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】契約結婚は円満に終了しました ~勘違い令嬢はお花屋さんを始めたい~

九條葉月
ファンタジー
【ファンタジー1位獲得!】 【HOTランキング1位獲得!】 とある公爵との契約結婚を無事に終えたシャーロットは、夢だったお花屋さんを始めるための準備に取りかかる。 花を包むビニールがなければ似たような素材を求めてダンジョンに潜り、吸水スポンジ代わりにスライムを捕まえたり……。そうして準備を進めているのに、なぜか店の実態はお花屋さんからかけ離れていって――?

魔術師セナリアンの憂いごと

野村にれ
ファンタジー
エメラルダ王国。優秀な魔術師が多く、大陸から少し離れた場所にある島国である。 偉大なる魔術師であったシャーロット・マクレガーが災い、争いを防ぎ、魔力による弊害を律し、国の礎を作ったとされている。 シャーロットは王家に忠誠を、王家はシャーロットに忠誠を誓い、この国は栄えていった。 現在は魔力が無い者でも、生活や移動するのに便利な魔道具もあり、移住したい国でも挙げられるほどになった。 ルージエ侯爵家の次女・セナリアンは恵まれた人生だと多くの人は言うだろう。 公爵家に嫁ぎ、あまり表舞台に出る質では無かったが、経営や商品開発にも尽力した。 魔術師としても優秀であったようだが、それはただの一端でしかなかったことは、没後に判明することになる。 厄介ごとに溜息を付き、憂鬱だと文句を言いながら、日々生きていたことをほとんど知ることのないままである。

傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される

中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。 実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。 それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。 ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。 目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。 すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。 抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……? 傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに たっぷり愛され甘やかされるお話。 このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。 修正をしながら順次更新していきます。 また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。 もし御覧頂けた際にはご注意ください。 ※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

転移先は薬師が少ない世界でした

饕餮
ファンタジー
★この作品は書籍化及びコミカライズしています。 神様のせいでこの世界に落ちてきてしまった私は、いろいろと話し合ったりしてこの世界に馴染むような格好と知識を授かり、危ないからと神様が目的地の手前まで送ってくれた。 職業は【薬師】。私がハーブなどの知識が多少あったことと、その世界と地球の名前が一緒だったこと、もともと数が少ないことから、職業は【薬師】にしてくれたらしい。 神様にもらったものを握り締め、ドキドキしながらも国境を無事に越え、街でひと悶着あったから買い物だけしてその街を出た。 街道を歩いている途中で、魔神族が治める国の王都に帰るという魔神族の騎士と出会い、それが縁で、王都に住むようになる。 薬を作ったり、ダンジョンに潜ったり、トラブルに巻き込まれたり、冒険者と仲良くなったりしながら、秘密があってそれを話せないヒロインと、ヒロインに一目惚れした騎士の恋愛話がたまーに入る、転移(転生)したヒロインのお話。

外れスキル持ちの天才錬金術師 神獣に気に入られたのでレア素材探しの旅に出かけます

蒼井美紗
ファンタジー
旧題:外れスキルだと思っていた素材変質は、レア素材を量産させる神スキルでした〜錬金術師の俺、幻の治癒薬を作り出します〜 誰もが二十歳までにスキルを発現する世界で、エリクが手に入れたのは「素材変質」というスキルだった。 スキル一覧にも載っていないレアスキルに喜んだのも束の間、それはどんな素材も劣化させてしまう外れスキルだと気づく。 そのスキルによって働いていた錬金工房をクビになり、生活費を稼ぐために仕方なく冒険者になったエリクは、街の外で採取前の素材に触れたことでスキルの真価に気づいた。 「素材変質スキル」とは、採取前の素材に触れると、その素材をより良いものに変化させるというものだったのだ。 スキルの真の力に気づいたエリクは、その力によって激レア素材も手に入れられるようになり、冒険者として、さらに錬金術師としても頭角を表していく。 また、エリクのスキルを気に入った存在が仲間になり――。

司書ですが、何か?

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。  ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。

危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル
ファンタジー
初めての彼氏との誕生日デート中、彼氏に裏切られた私は、貞操を守るため、展望台から飛び降りて・・・ 気がつくと、薄暗い洞窟の中で、よくわかんない種族に転生していました! 2人の子どもを助けて、一緒に森で生活することに・・・ だけどその森が、実は誰も生きて帰らないという危険な森で・・・ 出会った子ども達と、謎種族のスキルや魔法、持ち前の明るさと行動力で、危険な森で快適な生活を目指します!  ♢ ♢ ♢ 所謂、異世界転生ものです。 初めての投稿なので、色々不備もあると思いますが。軽い気持ちで読んでくださると幸いです。 誤字や、読みにくいところは見つけ次第修正しています。 内容を大きく変更した場合には、お知らせ致しますので、確認していただけると嬉しいです。 「小説家になろう」様「カクヨム」様でも連載させていただいています。 ※7月10日、「カクヨム」様の投稿について、アカウントを作成し直しました。

処理中です...