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異世界っぽい現実のような夢 第3章

C-3

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 図書館でのデジャヴ以来、俺の頭の中にある疑いがよぎるようになってきた。
 もしかしたら今の俺又はデジャヴの時に出てくる記憶は夢なんじゃないんだろうか。根拠といえるようなものはほとんどないに等しいのだが、なんとなくそう考えると合点がいく。
 今の俺かデジャヴの時に出てくる俺のどちらかは、もう一方の俺が見ている夢ってことだ。
 おぉ。俺が西田の影響を受けて中二病になっちまったと考えるよりよっぽどわかりやすく納得のいく説明だろう。
 どちらかが夢を見ているということはもしかしたら今の俺が夢の中ってことかもしれない……。
 できればデジャヴを感じる方が夢であってほしいものだ。突如現れた猫から変化する謎の少女vs変な置き方の中華鍋や黒い煙に包まれて現れたデカグモヤローvsショートカットの寡黙少女の戦いなんて目の前でやられたらたまったもんじゃない。よく分からん連中に命を狙われているなんてことがもしも現実だったらと思うと……おおこわい。こんなに俺が余裕をぶっかましていられるのも、魔法少女とかが出てくる世界が夢だと思って疑わなかったからだ。
 魔法? それを使うことができるとかいう魔法少女? そんなのいるわけねぇ。なんでこの21世紀の科学が進歩しまくった時代にいまさら魔法なんだよ。なんで今まで魔法とやらが人類に使えないのか知りたいね。
 ついでに言うと、なんで魔法使い的な役割で出てるヤツらがみんな少女なんだ? 
 ツッコミどころが満載の夢を見るようになっちまったらしい俺だが、結局それって俺の深層心理は中二病ってことにならないか? それはけっこうまずい気がする。
 つまり西田のアホが俺にも感染しちまってるってことになってしまい、俺の気休めは無駄になってしまったというわけだ。おのれ西田。許すまじ西田。
 そんな感じのことを思いながら過ごした週末はあっという間に過ぎてしまい俺のダラダラライフは終了してしまった。
 あれ以来中華鍋のことやデカグモヤローのことについて考える時以外はデジャヴを感じることもなく、ひどい頭痛もしなくなった。まだわけのわからない怪物の人数(?)が足りないような気がするが気のせいということで忘れておこう。
 この俺の夢と思われるデジャヴに詮索しても無駄に決まってる。無駄骨に違いない。そんなことを考えていたある日、なんとなくいつもの道とは違った道で家に帰ろうかと思いつき俺は急遽(ってほどでもないが)針路を変更した。
 いつもは駅の東口から帰るのだが、今日は西口から帰ろう。まぁぶっちゃけ少し家が遠くなるだけで本当になんの意味もないただの徒労なのではあるが。
 ただどことなく、そしてなんとなく感じた強迫観念に近いようなものに従わなければいけない気がしたのだ。
 西口のすぐ近くにある信号を渡ろうとすると、頭の中に激しいデジャヴが襲ってきた。何故か岩石地帯で信号機と戦っている記憶が俺の頭の中に流れ込んできたのだ。
 なんでそのヘンの信号機と謎の魔法少女(らしき三人衆)が戦っているのだろうか。俺の動体視力でも見えるくらいのろくなった(ような感覚がする)元気いっぱいそうな女の子のスピードや寡黙少女的な女子生徒が召喚(?)した拘束具に縛られている信号機、そしてやたらマジメそうな女子生徒のバカでかくてゴツイライフルが俺の頭の中でジタバタと暴れている。
 正夢を見たような感覚よりも鮮明な記憶だ。ってことは……夢じゃないのか……? 俺が今まで感じてきたデジャヴはたまたま見た夢のものじゃないのか? 考えれば考えるほど分からなくなってきたので俺はとっとと家に帰ったあと、ソッコーでベットに潜り込んだ。
 そしてその翌日。
 何故か生徒会の手伝いに任命された俺は熱血脳筋教師山下に昼休み中生徒会室へ行くよう言われてしまった。
「ひゃははっ! 残念だったなマスター。これでお前は生徒会の雑用係として一生を過ごさねばならん運命になっちまった」
 するとなにか? 俺は一生この高校に通い続けなければならないというのか?
 俺は西田の嘲笑を無視して昼メシをわざと遅くすまして生徒会室に向かった。これなら今ごろ来たのかよ的な雰囲気になって、大して手伝うこともなくなるだろう。
 ドアをノックして中に入ると、そこには誰もいなかった。
 なんだ、もう終わったのか? やったぜ。
 とっとと教室に帰ろうかと回れ右をしたところで、デジャヴが襲来してきやがった。頭の中に釘を打たれているあの痛みにはやはり慣れない。
 今度のデジャヴは今まで出てきた3人の女子生徒たちと生徒会長&副会長っぽい人たちが口論をしている様子だった。何故かそこに俺も加わっている。どうなってんだ? 見覚えのない女子生徒のために口論するほど俺はお人好しでも人格者でもない。
 それに俺の通っている高校にこんなモデル並みの超美人が生徒会長なんてやっていない。入学式の日に西田が愚痴っていたように我らが生徒会長はドブスなのだ。
 一体どうなってんだ? 俺は見知らぬ女子生徒のためにそんなことをした覚えはないし、生徒会長と副会長が全く見覚えのない人物になっているなんて……。
 混乱しながら教室に戻っていた俺は頭の中でこんなことを考えていた。いや、正確にはそう感じたと言った方がいいだろうか。
 謎の超美人生徒会長、同じく見覚えのない副会長、中華鍋の時に猫から変化して戦ってくれた元気いっぱいの少女、図書館で感じたデジャヴに出現したデカグモヤローと戦ってくれた寡黙らしい少女、そしてそのヘンの何の変哲もない信号機と戦ってくれた多分マジメそうな女子生徒。
 俺のデジャヴ的記憶(又は妄想)に頻繁に出てくる5人に出会ったおかげでなんとなく足りないような気がする感覚は消えていた。
 そして俺はあるひとつの考えに至っていた。
 これで全員揃ったと。
 教室に戻ると西田が目をパチくりさせながら俺の方を見てきた。
「生徒会の仕事は終わったのか? 」
「さあな。俺が行ったころには誰もいなかったからなんにもせずにここに戻ってきただけだ。怒るなら最後まで待ってくれなかった生徒会長に言ってくれ」
 西田はあからさまに嫌そうな顔をして首を振った。
「あんなこの世のものとは思えないのスーパードブスヤローとは関わりたくないね。ブスが移っちまう」
 生徒会長さんよ、西田にすら拒否されちまうとは。だがそれはむしろ喜ぶべき事実なんだ。
 一緒にいるだけで周りにいる人物まで同類扱いされちまうんだからたまったもんじゃない。それにこんなさっさと留置所にぶち込んだほうが良さそうな友人を持つとこっちまで留置所に行かなければならないのかもしれないしな。
 生徒会長に同情をするなんて愚行をするはずもなく俺はそんなことをすっかり忘れて午後の授業を受けた。というか睡眠時間のために利用させて貰った。
 化学基礎と数学1なんて寝るしかないだろうから誰も責める人なんていないはずだ。
 いつの間にか始まった掃除の時間なんて机を運ぶ気力も起きず教室の端っこの方に西田と共に待機していた。
 頑張りたまえクラスメイトの諸君よ。俺はみんなを監督(ボーッとする)という大事な大事な仕事があるから手伝うことが出来ないのだ。
 そんなくだらんことをしていたその日はずっと夢ではなさそうなデジャヴに疑問を感じながら過ごしていた。何を考えても答えに辿りついた気がしない。
 ん…………? あの本は……? 推理もののラノベを読もうとした時に見つけた、あの買った覚えのない本は……?
 俺は急いで本棚に向かった。

 あった。
 ほかの本がドサリドサリと落下音の悲鳴をあげたって知ったこっちゃねえ。脇目もふらずにその本をパラパラとめくった。

 俺は全てを思い出した。
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