カラスの郵便屋さんはワケアリ〜番は1人じゃないんです！？〜

番？

　表紙には、『“アルビノ”について』と書かれている。

　一度深呼吸をして、本を開いた。

　――“アルビノ”とは生まれつき色素の薄い生物の事を指す。全種族を合わせてもその数は少なく、同じ時代に二人存在する事は稀である。その希少さから“アルビノ”について記された文献は少ない。この本は、残された文献や各地の神話や伝承などを纏めたものである―――

　前書きから既に知らない事のオンパレードだ。
　私は夢中になってその本を読み進めた。

　古い言い伝えのようなあやふやなものから始まり、現代に近付くにつれ実際に生きていた“アルビノ”の人の話が混ざり出す。

　周囲の反応は主に、神聖視するか迫害するかのどちらかだ。中には凄惨な終わりを迎えた人の話もあった。

　私は、恵まれている方だったんだ……

　悲しい話をみると、胸がきゅっと締め付けられた。

　近年の話まで読み終わり、次のページを捲ると章が変わったようだ。

「“アルビノ”の番について……？」

　番は身近なものだけど、詳しくはよく知らなかった。
　両親に尋ねても、いつもはぐらかされて終わり。

　こっそり秘密を知るようで、少しドキドキしながら、文字を目で追った。


　――通常、番となるには雌に決定権がある。理由としては、雄は一目で番であると判断出来るのに対し、雌はその判断が曖昧である事が多い。よって、雄による強引な性行為を防ぐため、雌から意思表示をされない限り、雄は性行為を出来ず且つ番である事を告げる事は出来ない。これらは法により定められている訳ではなく、全種族の本能により強制されている。――


　そそそそうだったんだ……！

　あまりに直接的な表現にぼふっと顔が真っ赤に染まる。
　まだその章には続きがあるのに、出だしからこの調子で保つだろうか……。
　ぱたぱたと手で顔を仰いで熱を冷ましながら続きを読んでみる。


　――“アルビノ”もこの本能から外れてはいないが、通常の番と異なる点が確認された。一つ目は発情期である。通常雌は、番の有無関係なくある一定の期間のみ発情するが、“アルビノ”は番に触れる事により発情する。出会いが浅ければ浅い程発情しやすく、回数を重ねる事で徐々に落ち着いていく傾向にある。二つ目は発情時の色の変化である。色素が薄い為か、発情時に淡い桃色に色が変化するとの記述が確認された。ただし、変化する部分は種族により異なる。三つ目は番の数である。通常番とは一対一であるが、“アルビノ”の番は複数いる場合が多い。種族も様々であるため、“アルビノ”の身体には何らかの変化があると考えられる。以上が現在確認されている通常の番との違いである。――


「はぇ……」

　ちょっと、ちょっと待って欲しい。
　とんでもない爆弾が混ざっていた。
　というか爆弾しかない。

　顔が熱いどころか体中から火が出そうだ。

　“アルビノ”の番、ということは、それは、つまり、私にも当てはまっているという事、で……

「ーーーーーーー～っ！！！」

　声にならない叫びを上げてふかふかのソファに埋まる。
　落ち着け～静まれ～と自分に念を送ってみるものの、一向に効果はない。

　コンコンッ

　ノックの音に息を呑む。
　無情にも、このタイミングで、クロイスさんが戻ってきてしまった！