4 / 16
初仕事?
しおりを挟む
すーーーーーーー…
はーーーーーーーーーーーーー…
十何度目かの深呼吸を終え、漸く決意を固める。
礼儀作法とかよく分かんないけど、成人したばっかって事も“アルビノ”って事も分かった上での面談だもんね!
大丈夫大丈夫!!
頑張れラザリア!負けるなラザリア!
意を決し、震える拳の背でドアをノックする。
コンコンッ
「誰だ」
誰何する低い声に羽が震える。
「め、面談に参りました!」
「入れ」
「しっ失礼します!」
重い扉を開けて中に入る。
そこは執務室のようだった。玉座みたいな所を想像してたから、少しホッとした。
光が目に入り、光源を探るべく目が吸い寄せられる。
窓から差し込む光をキラキラ跳ね返すそれは、濡れた様に艶やかな、漆黒の羽だった。
うわぁ……すっごく綺麗……
噂は本当だったんだ~
と、呑気に考えられていたのも束の間だった。
パチリと、羽の持ち主と目が合う。
その瞬間、悪い噂が脳内を駆け巡った。
背筋を冷たい何かが走り、ぶるりと羽を震わせる。
咄嗟に目を逸らし俯く。失礼な態度を取ってしまった!そう思っても、再び目を合わせる事は出来なかった。
なななななにこれ!?
ぞくぞくって、なにこれ、怖いよ~っ!
やっぱり怖い人だった……!
挨拶しなきゃと思うが口は一向に開かず、沈黙が流れた。
暫くして、ギース局長から質問が投げかけられた。
ポツリポツリとそれに答えていく。
難しい質問とかはなくて少しホッとした。
相変わらず床を見つめたままだけど。
質疑応答が終わると、今後の仕事の話になった。暫くは本部から近い配達を回って、一個終わったらその都度ギース局長に報告に行くと。
なんていうか、私みたいなポンコツが毎回ギース局長の時間を割いてしまっていいんだろうか……
申し訳なく思う反面、確かにここまで手厚くされると安心もする。
カラス族のはみ出し者だった私が、ようやく一員になれた気がした。
とりあえず今日はお試しという事で、荷物をひとつ、隣町まで配達する事になった。
「今日の夕刻にはまたここで報告してもらう。出来そうか?」
「は、はいっ!頑張ります!」
「では荷物を渡・そ・う・」
初めての配達に、私は完全に浮き足立っていた。
床を見ていたせいもあるけど、ギース局長がすぐそばまで来ている事に気づかなかったのだから。
へ?と思った次の瞬間、私の右手がそっと持ち上げられた。
手の甲を上にして、ギース局長の大きな手にすっぽりと包まれている。
「~っ!?」
手と手が触れ合った部分がビリビリと痺れ、また背筋に何かが走り、ぶるりと羽が震える。
ななななっ、なんでっ!?
て、手っ、荷物渡すって、手渡し!?
先程の恐怖を思い出し小刻みに震える私を気にする様子もなく、手を持っている逆の手で何かを取り出した。
小さなそれは、輪っかの様に見えた。
「これは、相手に渡さなくて良い」
輪っかが私の薬指に近づく。
「見せれば伝わる」
中指と小指を割り開くように、
「返答を貰い次第、すぐに帰還すること」
奥へ奥へと進んでいく。
「分かったか?」
根元まで嵌ったそれを、すり、と撫ぜながら言うものだから
「ひゃいっ」
変な声が出てしまった。
恥ずかしいやら怖いやら楽しみやらで頭の中がごちゃごちゃだ。
とととりあえずギース局長から離れないと!
なんかもうおかしくなりそう!!
「そ、それでは行ってまいりますっ!」
するりと大きな手から抜け出し、脱兎の如く逃げ出した。
前略、お母さん。
局長が怖すぎる件について!
うわーん!!
はーーーーーーーーーーーーー…
十何度目かの深呼吸を終え、漸く決意を固める。
礼儀作法とかよく分かんないけど、成人したばっかって事も“アルビノ”って事も分かった上での面談だもんね!
大丈夫大丈夫!!
頑張れラザリア!負けるなラザリア!
意を決し、震える拳の背でドアをノックする。
コンコンッ
「誰だ」
誰何する低い声に羽が震える。
「め、面談に参りました!」
「入れ」
「しっ失礼します!」
重い扉を開けて中に入る。
そこは執務室のようだった。玉座みたいな所を想像してたから、少しホッとした。
光が目に入り、光源を探るべく目が吸い寄せられる。
窓から差し込む光をキラキラ跳ね返すそれは、濡れた様に艶やかな、漆黒の羽だった。
うわぁ……すっごく綺麗……
噂は本当だったんだ~
と、呑気に考えられていたのも束の間だった。
パチリと、羽の持ち主と目が合う。
その瞬間、悪い噂が脳内を駆け巡った。
背筋を冷たい何かが走り、ぶるりと羽を震わせる。
咄嗟に目を逸らし俯く。失礼な態度を取ってしまった!そう思っても、再び目を合わせる事は出来なかった。
なななななにこれ!?
ぞくぞくって、なにこれ、怖いよ~っ!
やっぱり怖い人だった……!
挨拶しなきゃと思うが口は一向に開かず、沈黙が流れた。
暫くして、ギース局長から質問が投げかけられた。
ポツリポツリとそれに答えていく。
難しい質問とかはなくて少しホッとした。
相変わらず床を見つめたままだけど。
質疑応答が終わると、今後の仕事の話になった。暫くは本部から近い配達を回って、一個終わったらその都度ギース局長に報告に行くと。
なんていうか、私みたいなポンコツが毎回ギース局長の時間を割いてしまっていいんだろうか……
申し訳なく思う反面、確かにここまで手厚くされると安心もする。
カラス族のはみ出し者だった私が、ようやく一員になれた気がした。
とりあえず今日はお試しという事で、荷物をひとつ、隣町まで配達する事になった。
「今日の夕刻にはまたここで報告してもらう。出来そうか?」
「は、はいっ!頑張ります!」
「では荷物を渡・そ・う・」
初めての配達に、私は完全に浮き足立っていた。
床を見ていたせいもあるけど、ギース局長がすぐそばまで来ている事に気づかなかったのだから。
へ?と思った次の瞬間、私の右手がそっと持ち上げられた。
手の甲を上にして、ギース局長の大きな手にすっぽりと包まれている。
「~っ!?」
手と手が触れ合った部分がビリビリと痺れ、また背筋に何かが走り、ぶるりと羽が震える。
ななななっ、なんでっ!?
て、手っ、荷物渡すって、手渡し!?
先程の恐怖を思い出し小刻みに震える私を気にする様子もなく、手を持っている逆の手で何かを取り出した。
小さなそれは、輪っかの様に見えた。
「これは、相手に渡さなくて良い」
輪っかが私の薬指に近づく。
「見せれば伝わる」
中指と小指を割り開くように、
「返答を貰い次第、すぐに帰還すること」
奥へ奥へと進んでいく。
「分かったか?」
根元まで嵌ったそれを、すり、と撫ぜながら言うものだから
「ひゃいっ」
変な声が出てしまった。
恥ずかしいやら怖いやら楽しみやらで頭の中がごちゃごちゃだ。
とととりあえずギース局長から離れないと!
なんかもうおかしくなりそう!!
「そ、それでは行ってまいりますっ!」
するりと大きな手から抜け出し、脱兎の如く逃げ出した。
前略、お母さん。
局長が怖すぎる件について!
うわーん!!
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

4人の王子に囲まれて
*YUA*
恋愛
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生の結衣は、母の再婚がきっかけとなり4人の義兄ができる。
4人の兄たちは結衣が気に食わず意地悪ばかりし、追い出そうとするが、段々と結衣の魅力に惹かれていって……
4人のイケメン義兄と1人の妹の共同生活を描いたストーリー!
鈴木結衣(Yui Suzuki)
高1 156cm 39kg
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生。
母の再婚によって4人の義兄ができる。
矢神 琉生(Ryusei yagami)
26歳 178cm
結衣の義兄の長男。
面倒見がよく優しい。
近くのクリニックの先生をしている。
矢神 秀(Shu yagami)
24歳 172cm
結衣の義兄の次男。
優しくて結衣の1番の頼れるお義兄さん。
結衣と大雅が通うS高の数学教師。
矢神 瑛斗(Eito yagami)
22歳 177cm
結衣の義兄の三男。
優しいけどちょっぴりSな一面も!?
今大人気若手俳優のエイトの顔を持つ。
矢神 大雅(Taiga yagami)
高3 182cm
結衣の義兄の四男。
学校からも目をつけられているヤンキー。
結衣と同じ高校に通うモテモテの先輩でもある。
*注 医療の知識等はございません。
ご了承くださいませ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる