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番外編 以前のハル 1
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出会って3ヶ月後、夏休み前くらいの出来事。
◇◇◇
久しぶりのLillyは、以前と変わらず昭和の香りと英国ロックが流れる店で、カウンター内にはお姉兄さんのカレンがいて、ウイスキーの氷をアイスピックで砕いている。何度見ても殺気立って見える。隣にはナナがいるのだけど、他の客が少ないせいか、可愛げが半減している。それは俺を相手に媚を売る必要がないという事だろう。前に女の子っぽいと言った事を根に持っているのかも。
「で? ハルとはどうなの?」
ウィスキーを出してくれたカレンが好奇心丸出しで聞いて来る。
「そっか、お兄さん、ハルに連れられて行ったんだっけ」
とナナ。
「ここで待ち合わせしています」
「え? ハルと?」
ナナが素っ頓狂な声を上げた。なぜ? バーで待ち合わせなんて珍しくもないだろうに。
「ユウキちゃんおめでとう! あのハルを射止めるなんてすごいわ! 一杯サービスしちゃう」
「えーマジでハル? あのハル? 考えられないんだけど」
ナナが鼻にシワを寄せて嫌そうにする。なんで? ハルはイケメンだし、ナナのタイプに思えるけど。
「ちょっとナナ! ユウキちゃんの恋に水を差さないの! ハルはいい子よ? 過去のアレコレは忘れなさい? 良いわね!」
カレンがナナを嗜めて、さすが雇い主? ナナがはぁーいと間延びした返事をした。
「どういうことです? ハルって嫌われているんですか?」
俺がそう言うと、微妙な間が空いて、そんなことないわ~とカレンが言ったけど、絶対ウソ。ナナは頷いていて、俺が視線をやると惚けるようにそっぽを向いた。
「ちょーっとね、若気の至りと言うか、遅い反抗期というか、ね」
「あれは屑だから」
ナナの言いようは酷い。っていったいハルってどんなだった? 俺にとってはすごく良い人で、面倒見が良くて清潔で——ナナの表情を見ていると混乱する。
「ちょっとナナちゃん、屑は言い過ぎよぉ」
そう言うカレンも誤魔化すようにウィスキーを一気飲みしているし。ハル、お前、本気で嫌なヤツだったの? 確かに聞いてる。人としてどうかと言われて、リハビリとしてホストになった事は。それってハルが勝手に思っているだけで、そんなに変わっていないと思っていたんだけど?
「やってもらおうかな」
そう呟くとカレンが「どう言う事?」と身を乗り出して来た。ポケットからスマホを取り出して、ハルを呼び出す。たぶんあと30分ほどで店に来る。
「今から電車に乗るよ」
ハルからの第一声。
「ハル、店に着いたら過去の再現して? 俺、昔のハル見てみたい」
スマホに向かってそう言うと、隣のナナがウゲーって嫌な顔をした。
「えーやだよ、ユウキに嫌われたら困るし」
「待ち合わせ場所をここにしたハルが悪い」
そう言って通話を切った。
◇◇◇
久しぶりのLillyは、以前と変わらず昭和の香りと英国ロックが流れる店で、カウンター内にはお姉兄さんのカレンがいて、ウイスキーの氷をアイスピックで砕いている。何度見ても殺気立って見える。隣にはナナがいるのだけど、他の客が少ないせいか、可愛げが半減している。それは俺を相手に媚を売る必要がないという事だろう。前に女の子っぽいと言った事を根に持っているのかも。
「で? ハルとはどうなの?」
ウィスキーを出してくれたカレンが好奇心丸出しで聞いて来る。
「そっか、お兄さん、ハルに連れられて行ったんだっけ」
とナナ。
「ここで待ち合わせしています」
「え? ハルと?」
ナナが素っ頓狂な声を上げた。なぜ? バーで待ち合わせなんて珍しくもないだろうに。
「ユウキちゃんおめでとう! あのハルを射止めるなんてすごいわ! 一杯サービスしちゃう」
「えーマジでハル? あのハル? 考えられないんだけど」
ナナが鼻にシワを寄せて嫌そうにする。なんで? ハルはイケメンだし、ナナのタイプに思えるけど。
「ちょっとナナ! ユウキちゃんの恋に水を差さないの! ハルはいい子よ? 過去のアレコレは忘れなさい? 良いわね!」
カレンがナナを嗜めて、さすが雇い主? ナナがはぁーいと間延びした返事をした。
「どういうことです? ハルって嫌われているんですか?」
俺がそう言うと、微妙な間が空いて、そんなことないわ~とカレンが言ったけど、絶対ウソ。ナナは頷いていて、俺が視線をやると惚けるようにそっぽを向いた。
「ちょーっとね、若気の至りと言うか、遅い反抗期というか、ね」
「あれは屑だから」
ナナの言いようは酷い。っていったいハルってどんなだった? 俺にとってはすごく良い人で、面倒見が良くて清潔で——ナナの表情を見ていると混乱する。
「ちょっとナナちゃん、屑は言い過ぎよぉ」
そう言うカレンも誤魔化すようにウィスキーを一気飲みしているし。ハル、お前、本気で嫌なヤツだったの? 確かに聞いてる。人としてどうかと言われて、リハビリとしてホストになった事は。それってハルが勝手に思っているだけで、そんなに変わっていないと思っていたんだけど?
「やってもらおうかな」
そう呟くとカレンが「どう言う事?」と身を乗り出して来た。ポケットからスマホを取り出して、ハルを呼び出す。たぶんあと30分ほどで店に来る。
「今から電車に乗るよ」
ハルからの第一声。
「ハル、店に着いたら過去の再現して? 俺、昔のハル見てみたい」
スマホに向かってそう言うと、隣のナナがウゲーって嫌な顔をした。
「えーやだよ、ユウキに嫌われたら困るし」
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そう言って通話を切った。
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