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16 学食のシェフおすすめランチ

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 一般的なお付き合いが男女だとしても、その付き合いをしたいかどうかはまた別の話で、それが必ずしも幸せだとは限らない。人それぞれ、人がいる数だけ。

 夕凪が彼女を連れて来た。

 ウチの大学のカフェは一般の出入りも許されていて、いろんな人がランチ目当てに来ている。良く知らないけど有名なシェフがメニューを手がけているかららしい。といっても、そういうメニューは学生以外をターゲットにしているから、俺ら学生は一杯300円のうどんやカレーを注文しがちだ。

「夕凪、マジか」

 夕凪の彼女はさやちゃんと言うらしい。

「なんで?」

「だって千円ランチ」

「さやが食べたいって言うから」

 へえっと言いながら夕凪の隣に座る。俺の昼なんてカップ麺だよ。お茶も節約して紙コップの水だし。

「うまいの?」

 3分待つ間、夕凪の前にあるプレートをじーーーーっと見る。色とりどりのサラダと魚のフライに黄色のソースが掛かっていて、イクラ? トビコ? 何かの魚卵があって、付け合わせも良くわからない物がある。

「米が麦とかありえねえ」

 白米がうまいだろ。といってもたかだか学食だけど。

「分けてやろうかと思ったけど、やらねえよ」

 夕凪がそう言うと、さやが笑った。

「仲良いね」

 とか、見限られ中だっての。すごく嬉しそうな顔で夕凪を見て、夕凪もテレてる顔してるし。どうせ机の見えないところで手を繋いでるんだろう。お行儀悪いよとは言わないけど。

「樋口、あの話は」

「そう、樋口くんって彼女いないんでしょう?」

 夕凪の言葉を遮って、さやが身を乗り出して来る。あーなるほど。夕凪に見限られたハズの俺が心良く受け入れられているのは、別の思惑があったからか。納得。

「夕凪?」

 俺はその話断ったよね? の視線。

「だって覚えてねえんだろ? 会ったら変わるかもしれねえよ?」

 いやいや、興味が無いから覚えていないとは思わないの? だいたい五條が靡かなかったから俺って順番で、俺と付き合ったとして、五條に近寄れる程度の興味だろ、としか思えない。

「夕凪、言ったよね? 俺、女の子が苦手なんだって。ごめんね、さやちゃん」

 さやはえーっ言いながら、微妙に信じていない感じがする。マジだからって夕凪に視線で伝えたら、夕凪はため息を吐いた。

「いーよ、別に、好きにしたら?」

 おお、夕凪のお許しが出た。関係切られると思っていたのに急展開だ。どうした? って視線を向けたら、睨まれた。

「この前は虚取ってて、自分でも分かってねえだろ? って感じだったけど、吹っ切れた? おまえ」

「うーん、どうかな? 自分ではわからないけど、夕凪がそう思うのなら、そうかも?」

 カップ麺食べ尽くして席を立つ。

「じゃあね、さやちゃん。夕凪、飲み会には誘えよ」

 とか言ってみる。飲み会に行く金ねえけど、と内心では思っているけど、夕凪との友人関係は続けたいから。

「了解」

 そう言ってシッシッて手を振る夕凪を見た。振り返るとこいつゲイかっていう視線に晒されたけど、どーでも良い。噂話なんてすぐに消える。俺なんてさして気にされる存在でもない。これが五條だったら大事なんだろうけど。カップ麺だけじゃ満たされない腹を気にしながら、コンビニでも行く? いやいや金がもったいないとか、考えていた。
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