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※女子絡みあり。苦手な方ご注意を。
◇◇◇
涙が流れて、頬が凍る。
どうにかして欲しい。
一ノ瀬が動かないから、俺も動けない。
濡れて、手袋の中まで冷たい。
雪が大粒になって来る。
「……さむい」
声が震えてる。
泣いてるから?
寒いから?
「寒いって言ってるだろ?」
振り返って、そこにまだ一ノ瀬がいるのを見て、また泣けて来る。
「なんで?」
手袋で涙を拭っていたら、一ノ瀬が動いた。こっちに歩いて来て、目の前に立つ。足元を見ていたから、ブーツも雪が絡んで白くなってるとか、思った。
顔を上げて、一ノ瀬を見る。
すごく久しぶりで、こんなだったかな? とか思うけど、涙、止まらなくて、一ノ瀬の手袋が、俺の涙を拭った。
一ノ瀬を見て、泣いてる。
鼻水も出てきて、雪も当たって、もうグチャグチャで、すごい冷たいし、寒いし。でも動けない。
「なんで?」
一ノ瀬が俺のまね、する。
聞かれても、わからない。
気持ちは一ノ瀬のこと、もうイヤだって思ってるのに、足は動かないし、涙も止まらない。
「さむいし、冷たい」
濡れて来た手袋を見せる。
一ノ瀬の手が、俺の手を掴んで、手を引いた。
泣きながら着いて歩くって。
ひどい。
すごい恥ずかしい。
繋いだ手を、一ノ瀬のコートのポケットに入れられて、でも冷たくて、凍える。
15分くらい、歩いて、ホテルに入った。なんで? って思いながら、寒くて声、出ないし、逃げる気力もなくて。
部屋入って、部屋の真ん中に突っ立ってる間に、湯船にお湯入れてくれて、服脱がされて、シャワーの下に連れて行かれた。
熱いシャワーを浴びて、一ノ瀬と向かい合ってる。凍えた指先擦られて、自分が何してるか、思考停止してる。
凍えた部分に血液が通るように、ジンジン痛む。
湯船にお湯が入ったところで、手を引かれて、湯船に浸かった。
後ろから一ノ瀬に抱かれてる。
腹に手が回っていて、肩に一ノ瀬のおでこが触れてる。
言葉はない。
何を言ったら良いのか、わからない。
言葉にすれば、また憎まれ口を叩きそうで、避けてる。
しばらくそうしていて、一ノ瀬が俺の手を引いて、湯船から上がると、ホント、子供のように全身洗われて、体、拭われて、バスローブ着せられて、髪乾かして、布団の中に入れられた。
一ノ瀬も入って来て、横向きで後ろから抱きしめられてる。
涙、出る。
せっかく泣き止んでたのに。
背中の温もりに、手を伸ばしていいのか、ダメなのか、わからない。
「咲には、諦めてもらった。時間掛かって、ごめん。俺、ホントにおまえだけだから。信じて? 二度とこういうの、ねえから」
一ノ瀬の声が震えている。
「どうやって?」
あの執着をどうやって納得させる?
もう一度、俺の前に現れて、けん制されたら……二度とイヤだ。
「ごめん、マジで勃たねえって、わかってもらった」
「やったの?」
腹に回ってる手がぎゅっと締まる。
肩に額が押し付けられた。
「やれねえの、見せた」
「触らせた?」
そう聞くと、頷くように、額が動いた。
「ホント、嫌い、そういうの、イヤだって言った。一ノ瀬、俺の、だろ?」
向きをかえて、一ノ瀬を見る。
「どこまでさせた?」
至近距離で一ノ瀬を見る。
一ノ瀬は狼狽えてる。俺の反応に戸惑ってる。
「……ぜんぶ脱いで、脱がせて、触らせて、咥えさせて……勃たねえだろって」
「嘘だろ? なんで? それで勃ってたら、やってたってこと?」
「勃たねえよ、女ダメだって、知ってるだろ? おまえだって、どうやったって勃たねえの、わかるだろ?」
俺はそうだ。
たぶん、脱がすのも無理。
匂いだけで吐き気がする。
「何言っても信じねえから、勃たなかったら、友達としての付き合いもやめるっていう条件で、やった。おまえ傷つけてまで友達続けようとは思わねえ」
「すごく勝手だな」
それで相手納得した?
なんか、より傷ついてる。
あの人も、俺も。
◇◇◇
涙が流れて、頬が凍る。
どうにかして欲しい。
一ノ瀬が動かないから、俺も動けない。
濡れて、手袋の中まで冷たい。
雪が大粒になって来る。
「……さむい」
声が震えてる。
泣いてるから?
寒いから?
「寒いって言ってるだろ?」
振り返って、そこにまだ一ノ瀬がいるのを見て、また泣けて来る。
「なんで?」
手袋で涙を拭っていたら、一ノ瀬が動いた。こっちに歩いて来て、目の前に立つ。足元を見ていたから、ブーツも雪が絡んで白くなってるとか、思った。
顔を上げて、一ノ瀬を見る。
すごく久しぶりで、こんなだったかな? とか思うけど、涙、止まらなくて、一ノ瀬の手袋が、俺の涙を拭った。
一ノ瀬を見て、泣いてる。
鼻水も出てきて、雪も当たって、もうグチャグチャで、すごい冷たいし、寒いし。でも動けない。
「なんで?」
一ノ瀬が俺のまね、する。
聞かれても、わからない。
気持ちは一ノ瀬のこと、もうイヤだって思ってるのに、足は動かないし、涙も止まらない。
「さむいし、冷たい」
濡れて来た手袋を見せる。
一ノ瀬の手が、俺の手を掴んで、手を引いた。
泣きながら着いて歩くって。
ひどい。
すごい恥ずかしい。
繋いだ手を、一ノ瀬のコートのポケットに入れられて、でも冷たくて、凍える。
15分くらい、歩いて、ホテルに入った。なんで? って思いながら、寒くて声、出ないし、逃げる気力もなくて。
部屋入って、部屋の真ん中に突っ立ってる間に、湯船にお湯入れてくれて、服脱がされて、シャワーの下に連れて行かれた。
熱いシャワーを浴びて、一ノ瀬と向かい合ってる。凍えた指先擦られて、自分が何してるか、思考停止してる。
凍えた部分に血液が通るように、ジンジン痛む。
湯船にお湯が入ったところで、手を引かれて、湯船に浸かった。
後ろから一ノ瀬に抱かれてる。
腹に手が回っていて、肩に一ノ瀬のおでこが触れてる。
言葉はない。
何を言ったら良いのか、わからない。
言葉にすれば、また憎まれ口を叩きそうで、避けてる。
しばらくそうしていて、一ノ瀬が俺の手を引いて、湯船から上がると、ホント、子供のように全身洗われて、体、拭われて、バスローブ着せられて、髪乾かして、布団の中に入れられた。
一ノ瀬も入って来て、横向きで後ろから抱きしめられてる。
涙、出る。
せっかく泣き止んでたのに。
背中の温もりに、手を伸ばしていいのか、ダメなのか、わからない。
「咲には、諦めてもらった。時間掛かって、ごめん。俺、ホントにおまえだけだから。信じて? 二度とこういうの、ねえから」
一ノ瀬の声が震えている。
「どうやって?」
あの執着をどうやって納得させる?
もう一度、俺の前に現れて、けん制されたら……二度とイヤだ。
「ごめん、マジで勃たねえって、わかってもらった」
「やったの?」
腹に回ってる手がぎゅっと締まる。
肩に額が押し付けられた。
「やれねえの、見せた」
「触らせた?」
そう聞くと、頷くように、額が動いた。
「ホント、嫌い、そういうの、イヤだって言った。一ノ瀬、俺の、だろ?」
向きをかえて、一ノ瀬を見る。
「どこまでさせた?」
至近距離で一ノ瀬を見る。
一ノ瀬は狼狽えてる。俺の反応に戸惑ってる。
「……ぜんぶ脱いで、脱がせて、触らせて、咥えさせて……勃たねえだろって」
「嘘だろ? なんで? それで勃ってたら、やってたってこと?」
「勃たねえよ、女ダメだって、知ってるだろ? おまえだって、どうやったって勃たねえの、わかるだろ?」
俺はそうだ。
たぶん、脱がすのも無理。
匂いだけで吐き気がする。
「何言っても信じねえから、勃たなかったら、友達としての付き合いもやめるっていう条件で、やった。おまえ傷つけてまで友達続けようとは思わねえ」
「すごく勝手だな」
それで相手納得した?
なんか、より傷ついてる。
あの人も、俺も。
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