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咲って子が、近づいて来たのに、気づかなかった俺が悪い。
一ノ瀬がお昼にカフェに行くようになってて、いつも通りの日常になっていたから、油断した。
「あなたが真夜くん?」
ご丁寧に、お昼にひとりでいる屋上を狙われた。
この場所を知っているのは、一ノ瀬が話したから。きっとそう。
「そうだけど」
食べていたメロンパンを膝に下ろす。
そうしたらクスクスと笑われて、隣に座られた。
「本当にいつも菓子パンを食べているんだね」
「━━━ああ、うん」
これは絶対に一ノ瀬。
そんなこと、知ってるヤツいないから。
「紅綺は手作りのお弁当を食べてるよ、いつも、カフェで」
「……」
完全にけん制に来ている。
でも、どうして? 咲は一ノ瀬の彼女でも何でもなく、ただの幼馴染だ。
「真夜くんもカフェに来たら良いのに? ひとりじゃつまらないんじゃない?」
俺を意味ありげに見て、上目遣い。
白い肌、関節がちょっとピンク色で、俺にとっては生々しくて嫌な感じ。
甘い香りも、妙に赤い唇も、見るだけで逃げたくなる。
「俺、ひとりが好きだから。カフェは人が多くて好きじゃないよ」
なんで答えなきゃダメなんだろう。逃げようかな。
「そうなの? ひとりが好きなの? なのに紅綺は誘うの?」
「……えっと」
誘った覚えはないんだけどな。
でも一ノ瀬が勝手に来るとか、言ったらよけいに何か言われるだろうな。
言葉に詰まっていると、咲がふうっとため息をついた。
吐息まで赤く色づいて見える。毒のような、そんな色。
「ごめんね、私、あなたみたいな人、好きになれないの」
あーうん、わかるよ。
でも別に言われなくても良いよね? 関り持たないようにしているのに、来たの、そっちだよね?
「私ね、紅綺には幸せになって欲しいのね?」
「……うん」
それは俺もそうだけど。
言いたいことはわかるよ。俺のことが認められないから、一ノ瀬の傍に寄るなってことでしょう。
でもそれは咲に言われることじゃない。
「紅綺が女の子、ダメなの、知ってるけど、でも本当かな? 本当は違うかもしれないよね?」
「……」
まあ、絶対とは言えないよな。
運命の相手が女の子かもしれないし。
いつか子供が欲しいとか思って、女の子好きになる努力、するようになるかも、しれないし。
「ほら、真夜くんも、そう思うでしょ?」
咲に手を取られた。
もう少しでメロンパン、落しそうになった。
「私、待ってるの。紅綺がちゃんと私のこと、見てくれるって信じてるの」
「……うん」
「わかってくれるの? 真夜くん、話し、わかるの、すごいいいひとなんだね」
あーうん、面倒だって思ってるだけだよ?
手をぎゅっと握り込まれて、さすがに気持ち悪くなる。
「ごめん、俺、女の感触とか、匂いとか、ダメだから」
咲の手を払って、立ち上がる。メロンパンを袋に戻して、カバンを持って、距離を取る。
「悪いんだけど、その話、俺は全然わかんないよ? それは一ノ瀬に言う話で、俺じゃないよね? 言っておくけど、俺の方から一ノ瀬に近づいたこと、一度もないから」
階段のある方へ歩いて行く。
腹の中にたまったムカムカを吐きだす。
「俺も、君のこと好きになれないから、話しかけるのやめてくれる? ああ、ごめん、言い過ぎたかな」
咲の表情を見ることもなく、さっさと階段を下りる。
心底面倒だ。
でもまだひとりで来たから許せるかな。
それでもこんなこと言いに来るような子、いくら一ノ瀬の幼馴染だとしても、好きにはなれない。
一ノ瀬がお昼にカフェに行くようになってて、いつも通りの日常になっていたから、油断した。
「あなたが真夜くん?」
ご丁寧に、お昼にひとりでいる屋上を狙われた。
この場所を知っているのは、一ノ瀬が話したから。きっとそう。
「そうだけど」
食べていたメロンパンを膝に下ろす。
そうしたらクスクスと笑われて、隣に座られた。
「本当にいつも菓子パンを食べているんだね」
「━━━ああ、うん」
これは絶対に一ノ瀬。
そんなこと、知ってるヤツいないから。
「紅綺は手作りのお弁当を食べてるよ、いつも、カフェで」
「……」
完全にけん制に来ている。
でも、どうして? 咲は一ノ瀬の彼女でも何でもなく、ただの幼馴染だ。
「真夜くんもカフェに来たら良いのに? ひとりじゃつまらないんじゃない?」
俺を意味ありげに見て、上目遣い。
白い肌、関節がちょっとピンク色で、俺にとっては生々しくて嫌な感じ。
甘い香りも、妙に赤い唇も、見るだけで逃げたくなる。
「俺、ひとりが好きだから。カフェは人が多くて好きじゃないよ」
なんで答えなきゃダメなんだろう。逃げようかな。
「そうなの? ひとりが好きなの? なのに紅綺は誘うの?」
「……えっと」
誘った覚えはないんだけどな。
でも一ノ瀬が勝手に来るとか、言ったらよけいに何か言われるだろうな。
言葉に詰まっていると、咲がふうっとため息をついた。
吐息まで赤く色づいて見える。毒のような、そんな色。
「ごめんね、私、あなたみたいな人、好きになれないの」
あーうん、わかるよ。
でも別に言われなくても良いよね? 関り持たないようにしているのに、来たの、そっちだよね?
「私ね、紅綺には幸せになって欲しいのね?」
「……うん」
それは俺もそうだけど。
言いたいことはわかるよ。俺のことが認められないから、一ノ瀬の傍に寄るなってことでしょう。
でもそれは咲に言われることじゃない。
「紅綺が女の子、ダメなの、知ってるけど、でも本当かな? 本当は違うかもしれないよね?」
「……」
まあ、絶対とは言えないよな。
運命の相手が女の子かもしれないし。
いつか子供が欲しいとか思って、女の子好きになる努力、するようになるかも、しれないし。
「ほら、真夜くんも、そう思うでしょ?」
咲に手を取られた。
もう少しでメロンパン、落しそうになった。
「私、待ってるの。紅綺がちゃんと私のこと、見てくれるって信じてるの」
「……うん」
「わかってくれるの? 真夜くん、話し、わかるの、すごいいいひとなんだね」
あーうん、面倒だって思ってるだけだよ?
手をぎゅっと握り込まれて、さすがに気持ち悪くなる。
「ごめん、俺、女の感触とか、匂いとか、ダメだから」
咲の手を払って、立ち上がる。メロンパンを袋に戻して、カバンを持って、距離を取る。
「悪いんだけど、その話、俺は全然わかんないよ? それは一ノ瀬に言う話で、俺じゃないよね? 言っておくけど、俺の方から一ノ瀬に近づいたこと、一度もないから」
階段のある方へ歩いて行く。
腹の中にたまったムカムカを吐きだす。
「俺も、君のこと好きになれないから、話しかけるのやめてくれる? ああ、ごめん、言い過ぎたかな」
咲の表情を見ることもなく、さっさと階段を下りる。
心底面倒だ。
でもまだひとりで来たから許せるかな。
それでもこんなこと言いに来るような子、いくら一ノ瀬の幼馴染だとしても、好きにはなれない。
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