18 / 33
18
しおりを挟む
バイトを終え、コンビニを出ると、一ノ瀬が着いて来る。
バイトの時間、4時間くらいだけど、ずっと外で待っていたんだと思う。
心の中のわだかまりがまだある。
でも、一ノ瀬を待たせるくらい、自分に価値があるとは思えない。
なぜ一ノ瀬は俺を待つのだろう。
「話、する?」
歩調を緩め、一ノ瀬の横に並ぶ。
一ノ瀬は俺を見て、頷いた。
手を取られ、連れて行かれる。
繁華街の奥。人通りの少ない、暗い道の中に、明るいネオンが輝く通り。
とても馴染みのある通りだけど、一ノ瀬と歩くのは初めてだ。
手を繋がれている。とても強く。
ひとつのネオンの看板の中へ入る。
タッチパネルの部屋が選べる場所。
平日の夜。まだ9時。部屋は埋まっていない。
とても適当に、もしかしたら、一ノ瀬が良く使う部屋なのかもしれないけど、とてもシンプルな観光ホテルを思わせる部屋。
白くて、清潔で、ただ違うのはお風呂の壁がガラス張りなところ。そういう普通のホテルもあるかもしれないけど。
部屋に入って、抱き締められる。
「話、するんじゃないの?」
「真夜の部屋、壁、薄いから」
そんな、大声で話をするの? それとも、喧嘩になるから?
「何が気に食わない? 俺、大学では近づかないようにしてるし、普通にしようと思ってるだけだ。今日、避けてただろ? わかるよ」
「違う。自分の気持ちがわからないから、考えたかっただけ」
そう言うと、腕の力が緩み、でも腕を掴んで離してはくれないから、視線が至近距離で合う。
ゆっくり唇が近づいて来て、触れる。
「なんで? 好きだろ? 俺のこと」
重ねるキスの角度を変え、その合間に言われる。
「ん、」
吐息が漏れる。それが頷いたみたいに聞こえているのかもしれない。
キスが深くなる。
息も奪われ、声が出せない。
胸を叩いて抗って、やっとキスを止めてくれた。
「話、するんだろ?」
苦しくて荒い息を吐きながら、濡れた唇を腕で拭いて、一ノ瀬を睨む。
キスでごまかされているのか、はぐらかされているのか。
「おまえが、あんなこと言うから、すげえ、嫌だった」
本心はこれだ。
独占欲。
それを見せる恥ずかしさが足元から這い上がって来て、頬を染める。
「おまえが、あの、……高校ん時、触ったとか、キスしたとか、……やだ」
一ノ瀬の息を飲む音が聞こえ、抱き締められる。
抱え込まれて、後ろ頭撫でられて、肩口で一ノ瀬の息遣いが聞こえる。
「過去に何があっても、仕方ないの、わかる。俺だって何もなかったとは言えないし。でも、ヤダ。目の前、仲良さそうにされて、無視されて、そうしろって言ったの俺だけど、嫌だ」
「ごめん」
謝られて、首を振る。
わがままだ。わかってる。
「ホントは少し、おまえが妬いてくれたら良いって思ってた。けど、ホントに妬いてくれるとは思ってなかった」
一ノ瀬の体が震えている。
なぜ? わからない。
「一ノ瀬さあ、なんで俺? 俺はここ数日で、自分がどれだけおまえを見てたのか、思い知った。最初から気持ち、一ノ瀬にあったのかなって、今日、ずっと考えてた」
「知ってる」
腕を緩められて、至近距離で見つめられる。
頬を撫でられ、見つめ合いながら、キスをする。
「おまえ、ずっと見てたの、知ってる。1回生の初めの頃から、真夜の視線、感じてたよ。でもお互いに店で可愛い子連れ帰ってたのも知ってたよ。だから時期じゃねえなって、流してた」
「……なに、それ」
「おまえが抱いたヤツ、俺も抱いてる。話聞いて、おまえ、どんなヤツか、どうヤるのか、聞いた」
なんか、ムカつく。
それ、やられたら恥ずかしいし、意味わかんねえ。
「ハナだけじゃないの?」
ムッとして、一ノ瀬の腕を押して、離れた。
バイトの時間、4時間くらいだけど、ずっと外で待っていたんだと思う。
心の中のわだかまりがまだある。
でも、一ノ瀬を待たせるくらい、自分に価値があるとは思えない。
なぜ一ノ瀬は俺を待つのだろう。
「話、する?」
歩調を緩め、一ノ瀬の横に並ぶ。
一ノ瀬は俺を見て、頷いた。
手を取られ、連れて行かれる。
繁華街の奥。人通りの少ない、暗い道の中に、明るいネオンが輝く通り。
とても馴染みのある通りだけど、一ノ瀬と歩くのは初めてだ。
手を繋がれている。とても強く。
ひとつのネオンの看板の中へ入る。
タッチパネルの部屋が選べる場所。
平日の夜。まだ9時。部屋は埋まっていない。
とても適当に、もしかしたら、一ノ瀬が良く使う部屋なのかもしれないけど、とてもシンプルな観光ホテルを思わせる部屋。
白くて、清潔で、ただ違うのはお風呂の壁がガラス張りなところ。そういう普通のホテルもあるかもしれないけど。
部屋に入って、抱き締められる。
「話、するんじゃないの?」
「真夜の部屋、壁、薄いから」
そんな、大声で話をするの? それとも、喧嘩になるから?
「何が気に食わない? 俺、大学では近づかないようにしてるし、普通にしようと思ってるだけだ。今日、避けてただろ? わかるよ」
「違う。自分の気持ちがわからないから、考えたかっただけ」
そう言うと、腕の力が緩み、でも腕を掴んで離してはくれないから、視線が至近距離で合う。
ゆっくり唇が近づいて来て、触れる。
「なんで? 好きだろ? 俺のこと」
重ねるキスの角度を変え、その合間に言われる。
「ん、」
吐息が漏れる。それが頷いたみたいに聞こえているのかもしれない。
キスが深くなる。
息も奪われ、声が出せない。
胸を叩いて抗って、やっとキスを止めてくれた。
「話、するんだろ?」
苦しくて荒い息を吐きながら、濡れた唇を腕で拭いて、一ノ瀬を睨む。
キスでごまかされているのか、はぐらかされているのか。
「おまえが、あんなこと言うから、すげえ、嫌だった」
本心はこれだ。
独占欲。
それを見せる恥ずかしさが足元から這い上がって来て、頬を染める。
「おまえが、あの、……高校ん時、触ったとか、キスしたとか、……やだ」
一ノ瀬の息を飲む音が聞こえ、抱き締められる。
抱え込まれて、後ろ頭撫でられて、肩口で一ノ瀬の息遣いが聞こえる。
「過去に何があっても、仕方ないの、わかる。俺だって何もなかったとは言えないし。でも、ヤダ。目の前、仲良さそうにされて、無視されて、そうしろって言ったの俺だけど、嫌だ」
「ごめん」
謝られて、首を振る。
わがままだ。わかってる。
「ホントは少し、おまえが妬いてくれたら良いって思ってた。けど、ホントに妬いてくれるとは思ってなかった」
一ノ瀬の体が震えている。
なぜ? わからない。
「一ノ瀬さあ、なんで俺? 俺はここ数日で、自分がどれだけおまえを見てたのか、思い知った。最初から気持ち、一ノ瀬にあったのかなって、今日、ずっと考えてた」
「知ってる」
腕を緩められて、至近距離で見つめられる。
頬を撫でられ、見つめ合いながら、キスをする。
「おまえ、ずっと見てたの、知ってる。1回生の初めの頃から、真夜の視線、感じてたよ。でもお互いに店で可愛い子連れ帰ってたのも知ってたよ。だから時期じゃねえなって、流してた」
「……なに、それ」
「おまえが抱いたヤツ、俺も抱いてる。話聞いて、おまえ、どんなヤツか、どうヤるのか、聞いた」
なんか、ムカつく。
それ、やられたら恥ずかしいし、意味わかんねえ。
「ハナだけじゃないの?」
ムッとして、一ノ瀬の腕を押して、離れた。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
チート魔王はつまらない。
碧月 晶
BL
お人好し真面目勇者×やる気皆無のチート魔王
───────────
~あらすじ~
優秀過ぎて毎日をつまらなく生きてきた雨(アメ)は卒業を目前に控えた高校三年の冬、突然異世界に召喚された。
その世界は勇者、魔王、魔法、魔族に魔物やモンスターが普通に存在する異世界ファンタジーRPGっぽい要素が盛り沢山な世界だった。
そんな世界にやって来たアメは、実は自分は数十年前勇者に敗れた先代魔王の息子だと聞かされる。
しかし取りあえず魔王になってみたものの、アメのつまらない日常は変わらなかった。
そんな日々を送っていたある日、やって来た勇者がアメに言った言葉とは──?
───────────
何だかんだで様々な事件(クエスト)をチートな魔王の力で(ちょいちょい腹黒もはさみながら)勇者と攻略していくお話(*´▽`*)
最終的にいちゃいちゃゴールデンコンビ?いやカップルにしたいなと思ってます( ´艸`)
※BLove様でも掲載中の作品です。
※感想、質問大歓迎です!!
アダルトショップでオナホになった俺
ミヒロ
BL
初めて同士の長年の交際をしていた彼氏と喧嘩別れした弘樹。
覚えてしまった快楽に負け、彼女へのプレゼントというていで、と自分を慰める為にアダルトショップに行ったものの。
バイブやローションの品定めしていた弘樹自身が客や後には店員にオナホになる話し。
※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)
禁断の寮生活〜真面目な大学生×体育会系大学生の秘密〜
藤咲レン
BL
■あらすじ
異性はもちろん同性との経験も無いユウスケは、寮の隣部屋に入居した年下サッカー部のシュンに一目惚れ。それ以降、自分の欲求が抑えきれずに、やってはイケナイコトを何度も重ねてしまう。しかし、ある時、それがシュンにバレてしまい、真面目一筋のユウスケの生活は一変する・・・。
■登場人物
大城戸ユウスケ:20歳。日本でも学力が上位の大学の法学部に通う。2回生。ゲイで童貞。高校の頃にノンケのことを好きになり、それ以降は恋をしないように決めている。自身はスポーツが苦手、けどサカユニフェチ。奥手。
藤ヶ谷シュン:18歳。体育会サッカー部に所属する。ユウスケとは同じ寮で隣の部屋。ノンケ。家の事情で大学の寮に入ることができず、寮費の安い自治体の寮で生活している。
とろけてなくなる
瀬楽英津子
BL
ヤクザの車を傷を付けた櫻井雅(さくらいみやび)十八歳は、多額の借金を背負わされ、ゲイ風俗で働かされることになってしまった。
連れて行かれたのは教育係の逢坂英二(おうさかえいじ)の自宅マンション。
雅はそこで、逢坂英二(おうさかえいじ)に性技を教わることになるが、逢坂英二(おうさかえいじ)は、ガサツで乱暴な男だった。
無骨なヤクザ×ドライな少年。
歳の差。
お前の雄っぱいを飲みたい♂
あさきりゆうた
BL
ごく普通の男子高校生である俺(佐藤清美)は、ある日母乳が出るようになってしまった!?
ひょんなことで、それがダチの佐藤正義に知られてしまう!
口外しないことを条件に、俺の母乳はダチに吸われる事になり、更にはとんでもない変態プレイまで強要されるようになっちまった!?
※1 恋愛描写より、変態描写、阿呆描写の多い作品です。
※2 番外編はより変態的な展開になっています
現在、筆者のネタ切れ感がすごいあります(汗)
私の力で書ける範囲であれば何とか書くようにします!
感想あたりでなんなりとどうぞ!
人目に見える感想ではちょっとという方は筆者のページにツイッターURL貼っているのでDMを!
【近況報告】
20.02.10
新話「痴漢するな(3)」を投稿しました。良い最終回だった……。
20.02.11
「記憶喪失になるな(2)」を投稿しました。よいこは小さな男の子にこんなことしないようにね?
20.02.12
「俺達を子供にするな(1)」を投稿します。ショタ×ショタ 好きかい?
20.02.14
「好きな子をレイプしてしまったんですがどうすれば良いですか(1)」を投稿しました。
書きたいネタを番外編にしました。
20.02.17
「好きな子をレイプしてしまったんですがどうすれば良いですか(2)」を投稿しました。
初めてをいただく話は最高だぜ!!
20.02.18
「好きな子をレイプしてしまったんですがどうすれば良いですか(3)」を投稿します。
本編よりいい最終回……ではなく(4)で終了予定です。
20.02.19
好きな子をレイプしてしまったんですがどうすれば良いですか(4)投稿しました。やっぱハッピーエンド大好き。
そして、
新たな保健室の物語が幕開けか!?
20.02.20
ノンケの腐男子ですけどBL創作のために彼氏が欲しいんですが(1)を投稿します。
小説家たるもの、リアルな経験をしないとな!
21.03.08
読者様にスクリーン越しにリモート土下座します。久々の投稿で申し訳ないです。とりあえず生きています。学園生活編として最新話「座薬で感じるな!」を投稿しました。一応R18描写ありますが、一日外出録ハンチョ○なみにに商品のステマやっている描写もあります。
21.03.21
二重人格の子と付き合いたいのですがどうすれば良いでしょうか? 一気に完結まで五話公開しました! 一番闇の深いヒロイン♂ができあがりました。
23.01.21
番外編:校医の不純同性交遊相談所で
亡くなった彼女の弟を好きになってしまいましたを投稿しました。
一年以上新作を投稿するきになれなかったわ……。
闇深さとエロさをミックスしたお話になりました。
23.08.13
表紙に今作の受男子の清美君のイメージ(AIイラスト)を追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる