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バイトを終え、コンビニを出ると、一ノ瀬が着いて来る。
バイトの時間、4時間くらいだけど、ずっと外で待っていたんだと思う。
心の中のわだかまりがまだある。
でも、一ノ瀬を待たせるくらい、自分に価値があるとは思えない。
なぜ一ノ瀬は俺を待つのだろう。
「話、する?」
歩調を緩め、一ノ瀬の横に並ぶ。
一ノ瀬は俺を見て、頷いた。
手を取られ、連れて行かれる。
繁華街の奥。人通りの少ない、暗い道の中に、明るいネオンが輝く通り。
とても馴染みのある通りだけど、一ノ瀬と歩くのは初めてだ。
手を繋がれている。とても強く。
ひとつのネオンの看板の中へ入る。
タッチパネルの部屋が選べる場所。
平日の夜。まだ9時。部屋は埋まっていない。
とても適当に、もしかしたら、一ノ瀬が良く使う部屋なのかもしれないけど、とてもシンプルな観光ホテルを思わせる部屋。
白くて、清潔で、ただ違うのはお風呂の壁がガラス張りなところ。そういう普通のホテルもあるかもしれないけど。
部屋に入って、抱き締められる。
「話、するんじゃないの?」
「真夜の部屋、壁、薄いから」
そんな、大声で話をするの? それとも、喧嘩になるから?
「何が気に食わない? 俺、大学では近づかないようにしてるし、普通にしようと思ってるだけだ。今日、避けてただろ? わかるよ」
「違う。自分の気持ちがわからないから、考えたかっただけ」
そう言うと、腕の力が緩み、でも腕を掴んで離してはくれないから、視線が至近距離で合う。
ゆっくり唇が近づいて来て、触れる。
「なんで? 好きだろ? 俺のこと」
重ねるキスの角度を変え、その合間に言われる。
「ん、」
吐息が漏れる。それが頷いたみたいに聞こえているのかもしれない。
キスが深くなる。
息も奪われ、声が出せない。
胸を叩いて抗って、やっとキスを止めてくれた。
「話、するんだろ?」
苦しくて荒い息を吐きながら、濡れた唇を腕で拭いて、一ノ瀬を睨む。
キスでごまかされているのか、はぐらかされているのか。
「おまえが、あんなこと言うから、すげえ、嫌だった」
本心はこれだ。
独占欲。
それを見せる恥ずかしさが足元から這い上がって来て、頬を染める。
「おまえが、あの、……高校ん時、触ったとか、キスしたとか、……やだ」
一ノ瀬の息を飲む音が聞こえ、抱き締められる。
抱え込まれて、後ろ頭撫でられて、肩口で一ノ瀬の息遣いが聞こえる。
「過去に何があっても、仕方ないの、わかる。俺だって何もなかったとは言えないし。でも、ヤダ。目の前、仲良さそうにされて、無視されて、そうしろって言ったの俺だけど、嫌だ」
「ごめん」
謝られて、首を振る。
わがままだ。わかってる。
「ホントは少し、おまえが妬いてくれたら良いって思ってた。けど、ホントに妬いてくれるとは思ってなかった」
一ノ瀬の体が震えている。
なぜ? わからない。
「一ノ瀬さあ、なんで俺? 俺はここ数日で、自分がどれだけおまえを見てたのか、思い知った。最初から気持ち、一ノ瀬にあったのかなって、今日、ずっと考えてた」
「知ってる」
腕を緩められて、至近距離で見つめられる。
頬を撫でられ、見つめ合いながら、キスをする。
「おまえ、ずっと見てたの、知ってる。1回生の初めの頃から、真夜の視線、感じてたよ。でもお互いに店で可愛い子連れ帰ってたのも知ってたよ。だから時期じゃねえなって、流してた」
「……なに、それ」
「おまえが抱いたヤツ、俺も抱いてる。話聞いて、おまえ、どんなヤツか、どうヤるのか、聞いた」
なんか、ムカつく。
それ、やられたら恥ずかしいし、意味わかんねえ。
「ハナだけじゃないの?」
ムッとして、一ノ瀬の腕を押して、離れた。
バイトの時間、4時間くらいだけど、ずっと外で待っていたんだと思う。
心の中のわだかまりがまだある。
でも、一ノ瀬を待たせるくらい、自分に価値があるとは思えない。
なぜ一ノ瀬は俺を待つのだろう。
「話、する?」
歩調を緩め、一ノ瀬の横に並ぶ。
一ノ瀬は俺を見て、頷いた。
手を取られ、連れて行かれる。
繁華街の奥。人通りの少ない、暗い道の中に、明るいネオンが輝く通り。
とても馴染みのある通りだけど、一ノ瀬と歩くのは初めてだ。
手を繋がれている。とても強く。
ひとつのネオンの看板の中へ入る。
タッチパネルの部屋が選べる場所。
平日の夜。まだ9時。部屋は埋まっていない。
とても適当に、もしかしたら、一ノ瀬が良く使う部屋なのかもしれないけど、とてもシンプルな観光ホテルを思わせる部屋。
白くて、清潔で、ただ違うのはお風呂の壁がガラス張りなところ。そういう普通のホテルもあるかもしれないけど。
部屋に入って、抱き締められる。
「話、するんじゃないの?」
「真夜の部屋、壁、薄いから」
そんな、大声で話をするの? それとも、喧嘩になるから?
「何が気に食わない? 俺、大学では近づかないようにしてるし、普通にしようと思ってるだけだ。今日、避けてただろ? わかるよ」
「違う。自分の気持ちがわからないから、考えたかっただけ」
そう言うと、腕の力が緩み、でも腕を掴んで離してはくれないから、視線が至近距離で合う。
ゆっくり唇が近づいて来て、触れる。
「なんで? 好きだろ? 俺のこと」
重ねるキスの角度を変え、その合間に言われる。
「ん、」
吐息が漏れる。それが頷いたみたいに聞こえているのかもしれない。
キスが深くなる。
息も奪われ、声が出せない。
胸を叩いて抗って、やっとキスを止めてくれた。
「話、するんだろ?」
苦しくて荒い息を吐きながら、濡れた唇を腕で拭いて、一ノ瀬を睨む。
キスでごまかされているのか、はぐらかされているのか。
「おまえが、あんなこと言うから、すげえ、嫌だった」
本心はこれだ。
独占欲。
それを見せる恥ずかしさが足元から這い上がって来て、頬を染める。
「おまえが、あの、……高校ん時、触ったとか、キスしたとか、……やだ」
一ノ瀬の息を飲む音が聞こえ、抱き締められる。
抱え込まれて、後ろ頭撫でられて、肩口で一ノ瀬の息遣いが聞こえる。
「過去に何があっても、仕方ないの、わかる。俺だって何もなかったとは言えないし。でも、ヤダ。目の前、仲良さそうにされて、無視されて、そうしろって言ったの俺だけど、嫌だ」
「ごめん」
謝られて、首を振る。
わがままだ。わかってる。
「ホントは少し、おまえが妬いてくれたら良いって思ってた。けど、ホントに妬いてくれるとは思ってなかった」
一ノ瀬の体が震えている。
なぜ? わからない。
「一ノ瀬さあ、なんで俺? 俺はここ数日で、自分がどれだけおまえを見てたのか、思い知った。最初から気持ち、一ノ瀬にあったのかなって、今日、ずっと考えてた」
「知ってる」
腕を緩められて、至近距離で見つめられる。
頬を撫でられ、見つめ合いながら、キスをする。
「おまえ、ずっと見てたの、知ってる。1回生の初めの頃から、真夜の視線、感じてたよ。でもお互いに店で可愛い子連れ帰ってたのも知ってたよ。だから時期じゃねえなって、流してた」
「……なに、それ」
「おまえが抱いたヤツ、俺も抱いてる。話聞いて、おまえ、どんなヤツか、どうヤるのか、聞いた」
なんか、ムカつく。
それ、やられたら恥ずかしいし、意味わかんねえ。
「ハナだけじゃないの?」
ムッとして、一ノ瀬の腕を押して、離れた。
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