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グループ課題を提出した日。
打ち上げ気分で構内カフェに集まった。
「期限3日前に終わったね」
「良かった」
って、ランチを囲んで乾杯気分だった。
俺はと言うと、咲ってどの人かなって、なんとなくあのグループを見てた。
珍しく一ノ瀬がいない。
まぁ、ずっと毎日いる訳はないし、別の集まりだってあるだろうし、家の用事とか、いろいろ。
知りたければラインすれば良いだけで、気になって見てしまうのも、なんか違う。
「なに? 藤城くん、好きな子でもいるの?」
「いや、なんか一緒のバイトの子も、咲先輩、可愛いって言ってたから、どの人かなって」
そう言えば、女子二人がグループを振り返っている。
「あー今日はいないみたい」
「そうなんだ」
そう言っていると、入り口から一ノ瀬が入って来た。腕に手を巻き付かせた女性と、笑いながら。
「あれだよ、咲先輩」
ちらっと視線を送られ、察する。
一ノ瀬の腕に腕を絡ませている、スレンダーで背が高く、でもメリハリのある体。胸元が大きく開いているロング丈のシャツ、谷間が見えてる。ウエストマークの細いベルト。ボタンの空いたシャツの裾から、短いジーンズの太もも。華奢なハイヒール。
濃くはない、ナチュラルに見えるけど、計算されているんだろう、男ウケしそうなメイク。
横を通りすぎる時、彼女の甘い香りがした。
吐きそう。
「ごめん、用事思い出した。先に出るね」
半分しか食べてないランチのトレーを持って、立ち上がる。
構内で声を掛けるなと言ったのは俺なのに、隣を通っても、目も合わない一ノ瀬の態度に傷ついてる。
バカだ。
返却口にトレーを返して、カフェから出た。
頭の中にあの光景が焼き付いてる。
初めてはあの人。
最後まで出来なかったと聞いたけど、触ったり、キスしたり、したんだ。
仕方ない話。
過去の、今更な話。
本格的に気分が悪くて、トイレに行く。さっきの甘い香りが毒のよう。
別に、その人で良いんじゃないかな。
大学一の美女で、有名な人。
そんな人に腕組まれて、カフェの真ん中歩いて行くの、すげえ優越感だったんじゃない?
……違う。
これはただの嫉妬だ。
とても醜い。
自業自得。
隠れて、こっそりしていたいと望んだのは俺だ。
目も合わないからって、悲しくなってどうする。
ホント、バカだ。
帰ろう。
午後の講義もあるけど、行く気が失せた。バイトまで時間できるけど、たまにはひとりにならないと。
一ノ瀬がいるのを当たり前に思ってしまいそうで、怖い。
久しぶりに店に行くのも、良いかな。
少し、距離置きたい。
このまま、ズブズブと一ノ瀬に溺れて、暗い水底に沈んで行くような感覚。
良くない感情。
今までに感じたことのない、気持ち。
ただひとりの人に、溺れるのは怖い。
今まで、深く付き合ったことがない。
深く知ろうと思ったこともない。
ただ、溜まった欲を吐き出せて、ひと時の熱を共有できれば、それで良かった。
……良かった、はずなのに。
打ち上げ気分で構内カフェに集まった。
「期限3日前に終わったね」
「良かった」
って、ランチを囲んで乾杯気分だった。
俺はと言うと、咲ってどの人かなって、なんとなくあのグループを見てた。
珍しく一ノ瀬がいない。
まぁ、ずっと毎日いる訳はないし、別の集まりだってあるだろうし、家の用事とか、いろいろ。
知りたければラインすれば良いだけで、気になって見てしまうのも、なんか違う。
「なに? 藤城くん、好きな子でもいるの?」
「いや、なんか一緒のバイトの子も、咲先輩、可愛いって言ってたから、どの人かなって」
そう言えば、女子二人がグループを振り返っている。
「あー今日はいないみたい」
「そうなんだ」
そう言っていると、入り口から一ノ瀬が入って来た。腕に手を巻き付かせた女性と、笑いながら。
「あれだよ、咲先輩」
ちらっと視線を送られ、察する。
一ノ瀬の腕に腕を絡ませている、スレンダーで背が高く、でもメリハリのある体。胸元が大きく開いているロング丈のシャツ、谷間が見えてる。ウエストマークの細いベルト。ボタンの空いたシャツの裾から、短いジーンズの太もも。華奢なハイヒール。
濃くはない、ナチュラルに見えるけど、計算されているんだろう、男ウケしそうなメイク。
横を通りすぎる時、彼女の甘い香りがした。
吐きそう。
「ごめん、用事思い出した。先に出るね」
半分しか食べてないランチのトレーを持って、立ち上がる。
構内で声を掛けるなと言ったのは俺なのに、隣を通っても、目も合わない一ノ瀬の態度に傷ついてる。
バカだ。
返却口にトレーを返して、カフェから出た。
頭の中にあの光景が焼き付いてる。
初めてはあの人。
最後まで出来なかったと聞いたけど、触ったり、キスしたり、したんだ。
仕方ない話。
過去の、今更な話。
本格的に気分が悪くて、トイレに行く。さっきの甘い香りが毒のよう。
別に、その人で良いんじゃないかな。
大学一の美女で、有名な人。
そんな人に腕組まれて、カフェの真ん中歩いて行くの、すげえ優越感だったんじゃない?
……違う。
これはただの嫉妬だ。
とても醜い。
自業自得。
隠れて、こっそりしていたいと望んだのは俺だ。
目も合わないからって、悲しくなってどうする。
ホント、バカだ。
帰ろう。
午後の講義もあるけど、行く気が失せた。バイトまで時間できるけど、たまにはひとりにならないと。
一ノ瀬がいるのを当たり前に思ってしまいそうで、怖い。
久しぶりに店に行くのも、良いかな。
少し、距離置きたい。
このまま、ズブズブと一ノ瀬に溺れて、暗い水底に沈んで行くような感覚。
良くない感情。
今までに感じたことのない、気持ち。
ただひとりの人に、溺れるのは怖い。
今まで、深く付き合ったことがない。
深く知ろうと思ったこともない。
ただ、溜まった欲を吐き出せて、ひと時の熱を共有できれば、それで良かった。
……良かった、はずなのに。
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