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本編
16 黒竜
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エリルがジルを呼んで、王城裏の舞台から上空の竜の住処に連れて行ってもらった。運命の相手が見つかったのだから、竜の住処でのんびりして来いと言ったのはアルブだったけど、エリルは別の話があったようだ。
僕が竜の住処に行くと、中央奥の絨毯の所に、フィンとレンが待っていた。
エリルがいるからジルはエリルと一緒にいる。僕はフィンとレンの間に座るように示されたから、フィンを背もたれにして、レンの膝に足を置いている。
エリルは他の竜が用意してくれたお茶を飲んで一息つくと、真剣な表情で僕を見て来る。僕はゆったりしていたんだけど、エリルの表情を見て座り直した。
「さっきは言わなかったけど、あの王子、竜よ」
僕は声が出ないから、首を傾げる。王子が竜ってそんなことがあるの?
「黒竜だな」
ジルが言う。
「メイと同じ、竜と人の子だわ」
エリルはジルと顔を見合わせて頷いている。
「メイが竜の王族で相手が人の王族で、どちらも半竜って、珍しいですね」
フィンは綺麗に笑んで、僕の髪を撫でてる。
「黒竜か。考えられるのは、王が力を欲して、黒竜と王妃を交じらわせ、秘密に子を得た、か」
レンが思案顔で呟いている。
僕は意味がわからないから、みんなをくるくる見ていた。
そんな僕を見ていたジルは、エリルを可愛がりながらだけど、説明してくれた。
「黒竜は様々な種の中で気性が荒く、力も強い。力を求める者は黒竜の子を望む。人の王は威厳の為、自ら子を孕む行為はしない。だが実際に王子が竜だという事実がある。とすれば王子を名乗らせる為、王妃に生ませたと考えられる。王子が竜であることは、公にされていない。公にすれば王子という地位は与えられないからな」
ジルに説明されても良くわからない。
わかったのは、王子は半分竜だけど、秘密にされているっていうことだけ。
「アルブが第二王子の情報は少ないって言ってたわ。成人になれば体に紋が出る。メイみたいにお部屋に閉じ込められていたのかもね」
エリルは僕が閉じ込められていた所を見ている。思い出したようで、怖いって体を震わせてた。
「湖の国の王子は成人を迎えてすぐに戦場にいたぜ?」
レンが目を輝かせた。
「10年前の戦いの最後の方に見た。竜ではなく、人として地上で戦っていたが、意図的に戦火の激しい場所に送られていた」
「ああ、あの子ね。黒竜の気配をさせながら、地上で戦ってた子。竜の間で噂になってたこともあったね」
レンの言葉を受けて、フィンが言う。
フィンの言葉を聞いて、ジルが思い出したように言った。
「ああ、お前らは10年前、まだここに来ていなかったか」
彼らはみんな戦場にいたんだ。あの僕が憧れを抱いた、凱旋をした争いのお話だ。
「ああ、俺らはあの時、竜の谷の要請で争いに向かった。まだここにはいなかった」
レンは懐かしそうに目を細めている。
「レンはあの時の戦いで運命の出会いをしたんだよね?」
エリルが嬉しそうに頬を染めた。
「俺は出会いたくなかった」
「10年以上仲良くしていて、素直じゃないわ。出会いたくても出会えない竜の方が多いのに。強がりよね」
エリルがため息を吐く。とても可愛らしく小首を傾げている。
「そういえばメイ、運命の出会いをしたのに、会いたいって思わないの?」
エリルに言われて考えてみたけど良くわからない。気持ちの真ん中に新しいヴァイス王子の場所が出来たっていう感覚はあるけど、今のところそれだけだ。
僕がうーんって考えていたら、エリルがまたため息を吐いた。
「メイはまだお子さまだからね。そういうのに疎いのね」
「ここは竜しか入れないからね、奥の個室にはそれぞれの相手が来るよ。そういうのを見たら、メイも会いたくなるかもしれないよ」
フィンが色っぽい表情をして、僕の頬を撫でて来る。
「会うと触りたくなるんだよな。会えねえとイライラするし、やっかいだから、まだ子どものままで良いんじゃねえ?」
レンが悪戯を思いついたように僕を抱きしめて来て、ついでに脇腹をくすぐられた。声が出ないから苦しい。
「でも声でるようにならないね? やっぱり早く会って、大人にならないとダメなんじゃない?」
エリルが期待したようににっこり笑う。
「何かきっかけがねえと無理だろ」
レンは僕を抱きしめて転がって、抱き枕にしている。苦しいからやめて欲しいけど、可愛がられてて嬉しくもある。
「内乱なんでしょう? 私たちも行くのでしょうか?」
フィンが冷静に言うと、ジルも表情を引き締めた。
「今人達が会議をしている。終わればアルブが来る。王子が竜だということは、しばらく秘密にする。メイも気をつけるように」
僕はジルにうんって頷いて見せた。
僕が竜の住処に行くと、中央奥の絨毯の所に、フィンとレンが待っていた。
エリルがいるからジルはエリルと一緒にいる。僕はフィンとレンの間に座るように示されたから、フィンを背もたれにして、レンの膝に足を置いている。
エリルは他の竜が用意してくれたお茶を飲んで一息つくと、真剣な表情で僕を見て来る。僕はゆったりしていたんだけど、エリルの表情を見て座り直した。
「さっきは言わなかったけど、あの王子、竜よ」
僕は声が出ないから、首を傾げる。王子が竜ってそんなことがあるの?
「黒竜だな」
ジルが言う。
「メイと同じ、竜と人の子だわ」
エリルはジルと顔を見合わせて頷いている。
「メイが竜の王族で相手が人の王族で、どちらも半竜って、珍しいですね」
フィンは綺麗に笑んで、僕の髪を撫でてる。
「黒竜か。考えられるのは、王が力を欲して、黒竜と王妃を交じらわせ、秘密に子を得た、か」
レンが思案顔で呟いている。
僕は意味がわからないから、みんなをくるくる見ていた。
そんな僕を見ていたジルは、エリルを可愛がりながらだけど、説明してくれた。
「黒竜は様々な種の中で気性が荒く、力も強い。力を求める者は黒竜の子を望む。人の王は威厳の為、自ら子を孕む行為はしない。だが実際に王子が竜だという事実がある。とすれば王子を名乗らせる為、王妃に生ませたと考えられる。王子が竜であることは、公にされていない。公にすれば王子という地位は与えられないからな」
ジルに説明されても良くわからない。
わかったのは、王子は半分竜だけど、秘密にされているっていうことだけ。
「アルブが第二王子の情報は少ないって言ってたわ。成人になれば体に紋が出る。メイみたいにお部屋に閉じ込められていたのかもね」
エリルは僕が閉じ込められていた所を見ている。思い出したようで、怖いって体を震わせてた。
「湖の国の王子は成人を迎えてすぐに戦場にいたぜ?」
レンが目を輝かせた。
「10年前の戦いの最後の方に見た。竜ではなく、人として地上で戦っていたが、意図的に戦火の激しい場所に送られていた」
「ああ、あの子ね。黒竜の気配をさせながら、地上で戦ってた子。竜の間で噂になってたこともあったね」
レンの言葉を受けて、フィンが言う。
フィンの言葉を聞いて、ジルが思い出したように言った。
「ああ、お前らは10年前、まだここに来ていなかったか」
彼らはみんな戦場にいたんだ。あの僕が憧れを抱いた、凱旋をした争いのお話だ。
「ああ、俺らはあの時、竜の谷の要請で争いに向かった。まだここにはいなかった」
レンは懐かしそうに目を細めている。
「レンはあの時の戦いで運命の出会いをしたんだよね?」
エリルが嬉しそうに頬を染めた。
「俺は出会いたくなかった」
「10年以上仲良くしていて、素直じゃないわ。出会いたくても出会えない竜の方が多いのに。強がりよね」
エリルがため息を吐く。とても可愛らしく小首を傾げている。
「そういえばメイ、運命の出会いをしたのに、会いたいって思わないの?」
エリルに言われて考えてみたけど良くわからない。気持ちの真ん中に新しいヴァイス王子の場所が出来たっていう感覚はあるけど、今のところそれだけだ。
僕がうーんって考えていたら、エリルがまたため息を吐いた。
「メイはまだお子さまだからね。そういうのに疎いのね」
「ここは竜しか入れないからね、奥の個室にはそれぞれの相手が来るよ。そういうのを見たら、メイも会いたくなるかもしれないよ」
フィンが色っぽい表情をして、僕の頬を撫でて来る。
「会うと触りたくなるんだよな。会えねえとイライラするし、やっかいだから、まだ子どものままで良いんじゃねえ?」
レンが悪戯を思いついたように僕を抱きしめて来て、ついでに脇腹をくすぐられた。声が出ないから苦しい。
「でも声でるようにならないね? やっぱり早く会って、大人にならないとダメなんじゃない?」
エリルが期待したようににっこり笑う。
「何かきっかけがねえと無理だろ」
レンは僕を抱きしめて転がって、抱き枕にしている。苦しいからやめて欲しいけど、可愛がられてて嬉しくもある。
「内乱なんでしょう? 私たちも行くのでしょうか?」
フィンが冷静に言うと、ジルも表情を引き締めた。
「今人達が会議をしている。終わればアルブが来る。王子が竜だということは、しばらく秘密にする。メイも気をつけるように」
僕はジルにうんって頷いて見せた。
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