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24 幸せの誓い(終)

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 ミルルは冬眠から意識を浮上させるたび、私を探してくれるようになった。

 年末年始休暇を終え、久々に出社すると、社長は狼族の男に代わり、課長は犬族になっていた。どう考えてもジラル領の息がかかった人選だと思うのだが。まぁそれで条件も仕事内容も変わらず続けられるのなら、細かい事には目を瞑る。

 マールには電話で連絡は入れていたが、直接詫びの言葉を伝え、ミルルとも上手くいきそうだと伝えた。

 ミルルには仕事でいない日もあるから、寂しい想いをさせている。そうすると目覚めた時に私がいるのを喜び、薄らとした意識の中なのに、キスをねだってくれる。

 こんなに可愛い子を見た事がない。

 ◇◇◇

 季節も過ぎて、春が近づいて来ると、ミルルの起きている時間が長くなって来る。

 言葉も曖昧ではなく、しっかり話せる時間も増えたのだが、妙に照れ出したのも、その頃からだ。

 やはり冬眠中の誘いは、本能に近いのだろう。それはそれで嬉しいのだが、ミルルは理性が働き出して、反応が逆になった。

「だから言っただろう? ああいうのは冬眠後の方が良いよって」

「そうだけど」

 毛布から出て来ないミルルを抱き寄せ、強引に毛布を外し、キスをする。

 そうすると頬を膨らませて怒って来る。でも可愛いから、ついかまってしまうと、本格的に怒り出して、毛布から出て来なくなる。

「あんなに嫌がって、ぜんぜんしてくれなかったのに」

 毛布の中からくぐもった声が聞こえて来る。

 本当に可愛い。
 冬眠後に理性を取り戻し、私が相手では嫌だと言われても仕方がないと覚悟を決めていたが、どうやら恥ずかしいだけで嫌ではないようだ。

「キスしてくれたら、アリシアオーブの胡桃ケーキを買って来ようかな」

「アリシアオーブのケーキ」

 ミルルの好きなカフェのケーキ。ミルルは恥ずかしがっているだけで、きっかけをあげると素直に甘えられるようだ。

 毛布から出て来たミルルは、膝の上に乗って来て、首の後ろに手を回し、潤んだ目で見つめて来て、ゆっくり唇を重ねて来る。

「ミルル、好きだよ。結婚を前提に付き合ってくれる?」

 指輪はまだ早いから、ブレスレットを用意した。ミルルはまだ私の匂いが体内にない。だから代わりに匂いを付けられるブレスレットを付けてもらう。

「いいの?」

 可愛く見つめられている視界の中で、ミルルの左の手首にブレスレットをはめた。

 獣人だったらわかる。私の匂いが付いている。

「ありがとう、うれしい」

 抱きついて来て、キスしてくれる。
 ちょっと泣いてるのは気づかれたくないようだ。

「春になったらデートしよう」

「うん、楽しみだよ」

 可愛く笑うミルルを側で見ていられる。幸せな日々。

 可愛い笑顔を守って行くと誓った。



おわり

◇◇◇


ありがとうございました。
とても感謝しています。
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