可愛い子が押し掛けて来たけど信用しても良いのだろうか

サクラギ

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22 偽善者の仮面 ※

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 キスが深くなる。
 ミルルに誘導されると、微妙な気分になるが、それでも嬉しいは嬉しいから、やりたいようにさせているが。

「ミルル、ミルル、止まって?」

 首に巻きついていた手が離れたと思ったら、私の服を脱がせようと動いている。唇を離し、ミルルの両手を握って止めた。

 至近距離で目を見つめられ、んっと首を傾げられた。可愛いけど、可愛いフリしてどこまで進める気だ?

「おとなになるよ?」

 そうだけど。
 すでに0時を迎えて、法的には成人で大人だけど。見目は可愛い子どもだ。

 これは言い訳だ。わかっている。私も男だから、好きな相手に迫られたらその気になる。現に危うい感じになっているけど。

 なぜミルルの方が落ち着いていられるのか。そこに引っかかる私は心が狭いのか。

「ミルルごめん、私たちはまだ恋人でもないよ? それなのにミルルは私と大人になるの?」

 さっきまでミルルがかぶっていた毛布を取って、ミルルの上に被せる。

「それに冬眠中だよ? そんなことをする体力はないだろう? 前みたいにぬいてあげるから」

「ミルルはアレスが良いよ? アレスはミルルじゃダメ?」

 膝の上に乗り、腹に股間を押しつけられる。

 額を押さえてため息を吐きたい気分だ。ダメだ、これは。煽られる前に話がしたい。

「ミルル、お願いだ。冬眠が明けるまで待ってくれないか?」

 キスをねだる位置にあるミルルの表情が陰る。目に涙が盛り上がり、ヒクヒクと泣き出してしまった。

「ごめん、ミルル」

 毛布ごと抱きしめて、肩口で泣かせている。そうして子どもだと認識して安堵する。

 これは私の勝手な思いなんだろう。ミルルを子どものままで居させたい。どこまで大人の情事を教え込まれているのか、知りたくないという私の弱さだ。

「なにもかんじなかったよ?」

 耳元で、小さな声で告げられる。

「いっぱいがまんして、はやくおわるの、まってた」

 何の話だと思い、されたことに対するミルルの感情かとわかると、宥めるように背を撫で、抱きしめる手に力を入れた。

「くるしいの、きもちいい?」

 鎖骨を舐められ、甘噛みされる。
 男のものを咥えさせられていただろう事は、以前の手の動きで悟った。

「あとは? 何をされた?」

 ヒクッと喉が鳴り、涙が私の胸に落ちて流れて行く。

「おとなになるためのじゅんび」

 そう言われてされたのだろう。胸にしがみついて来る手が震えている。

「じゅんびは、おとなになる日のためって、アレスにしてもらうために、ぼくはがんばってた。ちがうの?」

 ミルルは知らないと思いたい。
 自分が娼館に売られる為に施されていた行為だとは気付きたくない。

 ミルルにとって不快な準備は、好きな人と繋がる為の準備だった。そう思いたいのだ。

 ユートを守っていたのだ。知らない訳がない。行為を見た事もある筈だ。

 悲しい。
 もっと早く出会って助けられたらと思うが、それはもう過ぎた話。今をどうするかは私に委ねられている。

「ミルル、それは好きな人とする為の準備だよ? 先生はひとつ教え忘れたみたいだね?」

「アレスが良いよ?」

「私がミルルのお世話をしているから、そう思うだけで、本当に好きかどうかはわからないだろう? 冬眠が明けたら話そう? ずっとそばにいるから、ね?」

 これは優しさを装った偽善だ。
 抱きたい、抱き潰してしまいたい。
 だが本音は大人の仮面の下に隠す。
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