22 / 24
22 偽善者の仮面 ※
しおりを挟む
キスが深くなる。
ミルルに誘導されると、微妙な気分になるが、それでも嬉しいは嬉しいから、やりたいようにさせているが。
「ミルル、ミルル、止まって?」
首に巻きついていた手が離れたと思ったら、私の服を脱がせようと動いている。唇を離し、ミルルの両手を握って止めた。
至近距離で目を見つめられ、んっと首を傾げられた。可愛いけど、可愛いフリしてどこまで進める気だ?
「おとなになるよ?」
そうだけど。
すでに0時を迎えて、法的には成人で大人だけど。見目は可愛い子どもだ。
これは言い訳だ。わかっている。私も男だから、好きな相手に迫られたらその気になる。現に危うい感じになっているけど。
なぜミルルの方が落ち着いていられるのか。そこに引っかかる私は心が狭いのか。
「ミルルごめん、私たちはまだ恋人でもないよ? それなのにミルルは私と大人になるの?」
さっきまでミルルがかぶっていた毛布を取って、ミルルの上に被せる。
「それに冬眠中だよ? そんなことをする体力はないだろう? 前みたいにぬいてあげるから」
「ミルルはアレスが良いよ? アレスはミルルじゃダメ?」
膝の上に乗り、腹に股間を押しつけられる。
額を押さえてため息を吐きたい気分だ。ダメだ、これは。煽られる前に話がしたい。
「ミルル、お願いだ。冬眠が明けるまで待ってくれないか?」
キスをねだる位置にあるミルルの表情が陰る。目に涙が盛り上がり、ヒクヒクと泣き出してしまった。
「ごめん、ミルル」
毛布ごと抱きしめて、肩口で泣かせている。そうして子どもだと認識して安堵する。
これは私の勝手な思いなんだろう。ミルルを子どものままで居させたい。どこまで大人の情事を教え込まれているのか、知りたくないという私の弱さだ。
「なにもかんじなかったよ?」
耳元で、小さな声で告げられる。
「いっぱいがまんして、はやくおわるの、まってた」
何の話だと思い、されたことに対するミルルの感情かとわかると、宥めるように背を撫で、抱きしめる手に力を入れた。
「くるしいの、きもちいい?」
鎖骨を舐められ、甘噛みされる。
男のものを咥えさせられていただろう事は、以前の手の動きで悟った。
「あとは? 何をされた?」
ヒクッと喉が鳴り、涙が私の胸に落ちて流れて行く。
「おとなになるためのじゅんび」
そう言われてされたのだろう。胸にしがみついて来る手が震えている。
「じゅんびは、おとなになる日のためって、アレスにしてもらうために、ぼくはがんばってた。ちがうの?」
ミルルは知らないと思いたい。
自分が娼館に売られる為に施されていた行為だとは気付きたくない。
ミルルにとって不快な準備は、好きな人と繋がる為の準備だった。そう思いたいのだ。
ユートを守っていたのだ。知らない訳がない。行為を見た事もある筈だ。
悲しい。
もっと早く出会って助けられたらと思うが、それはもう過ぎた話。今をどうするかは私に委ねられている。
「ミルル、それは好きな人とする為の準備だよ? 先生はひとつ教え忘れたみたいだね?」
「アレスが良いよ?」
「私がミルルのお世話をしているから、そう思うだけで、本当に好きかどうかはわからないだろう? 冬眠が明けたら話そう? ずっとそばにいるから、ね?」
これは優しさを装った偽善だ。
抱きたい、抱き潰してしまいたい。
だが本音は大人の仮面の下に隠す。
ミルルに誘導されると、微妙な気分になるが、それでも嬉しいは嬉しいから、やりたいようにさせているが。
「ミルル、ミルル、止まって?」
首に巻きついていた手が離れたと思ったら、私の服を脱がせようと動いている。唇を離し、ミルルの両手を握って止めた。
至近距離で目を見つめられ、んっと首を傾げられた。可愛いけど、可愛いフリしてどこまで進める気だ?
「おとなになるよ?」
そうだけど。
すでに0時を迎えて、法的には成人で大人だけど。見目は可愛い子どもだ。
これは言い訳だ。わかっている。私も男だから、好きな相手に迫られたらその気になる。現に危うい感じになっているけど。
なぜミルルの方が落ち着いていられるのか。そこに引っかかる私は心が狭いのか。
「ミルルごめん、私たちはまだ恋人でもないよ? それなのにミルルは私と大人になるの?」
さっきまでミルルがかぶっていた毛布を取って、ミルルの上に被せる。
「それに冬眠中だよ? そんなことをする体力はないだろう? 前みたいにぬいてあげるから」
「ミルルはアレスが良いよ? アレスはミルルじゃダメ?」
膝の上に乗り、腹に股間を押しつけられる。
額を押さえてため息を吐きたい気分だ。ダメだ、これは。煽られる前に話がしたい。
「ミルル、お願いだ。冬眠が明けるまで待ってくれないか?」
キスをねだる位置にあるミルルの表情が陰る。目に涙が盛り上がり、ヒクヒクと泣き出してしまった。
「ごめん、ミルル」
毛布ごと抱きしめて、肩口で泣かせている。そうして子どもだと認識して安堵する。
これは私の勝手な思いなんだろう。ミルルを子どものままで居させたい。どこまで大人の情事を教え込まれているのか、知りたくないという私の弱さだ。
「なにもかんじなかったよ?」
耳元で、小さな声で告げられる。
「いっぱいがまんして、はやくおわるの、まってた」
何の話だと思い、されたことに対するミルルの感情かとわかると、宥めるように背を撫で、抱きしめる手に力を入れた。
「くるしいの、きもちいい?」
鎖骨を舐められ、甘噛みされる。
男のものを咥えさせられていただろう事は、以前の手の動きで悟った。
「あとは? 何をされた?」
ヒクッと喉が鳴り、涙が私の胸に落ちて流れて行く。
「おとなになるためのじゅんび」
そう言われてされたのだろう。胸にしがみついて来る手が震えている。
「じゅんびは、おとなになる日のためって、アレスにしてもらうために、ぼくはがんばってた。ちがうの?」
ミルルは知らないと思いたい。
自分が娼館に売られる為に施されていた行為だとは気付きたくない。
ミルルにとって不快な準備は、好きな人と繋がる為の準備だった。そう思いたいのだ。
ユートを守っていたのだ。知らない訳がない。行為を見た事もある筈だ。
悲しい。
もっと早く出会って助けられたらと思うが、それはもう過ぎた話。今をどうするかは私に委ねられている。
「ミルル、それは好きな人とする為の準備だよ? 先生はひとつ教え忘れたみたいだね?」
「アレスが良いよ?」
「私がミルルのお世話をしているから、そう思うだけで、本当に好きかどうかはわからないだろう? 冬眠が明けたら話そう? ずっとそばにいるから、ね?」
これは優しさを装った偽善だ。
抱きたい、抱き潰してしまいたい。
だが本音は大人の仮面の下に隠す。
11
お気に入りに追加
115
あなたにおすすめの小説


君と秘密の部屋
325号室の住人
BL
☆全3話 完結致しました。
「いつから知っていたの?」
今、廊下の突き当りにある第3書庫準備室で僕を壁ドンしてる1歳年上の先輩は、乙女ゲームの攻略対象者の1人だ。
対して僕はただのモブ。
この世界があのゲームの舞台であると知ってしまった僕は、この第3書庫準備室の片隅でこっそりと2次創作のBLを書いていた。
それが、この目の前の人に、主人公のモデルが彼であるとバレてしまったのだ。
筆頭攻略対象者第2王子✕モブヲタ腐男子


フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

エスポワールに行かないで
茉莉花 香乃
BL
あの人が好きだった。でも、俺は自分を守るためにあの人から離れた。でも、会いたい。
そんな俺に好意を寄せてくれる人が現れた。
「エスポワールで会いましょう」のスピンオフです。和希のお話になります。
ハッピーエンド
他サイトにも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる