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蜜月
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初めての場所に驚いている間もなく、シャルは家からミコトとツヴァイを追い出してしまった。そうしてシャルに抱き締められている。カレンと名を呼ばれ、抱き締められて、つむじにキスされ、匂いを嗅がれている。それは以前にもあった行為だ。だけど名前を呼ばれている。それだけでカレンは嬉しく思った。
「なまえ、シアが付けてくれたんだ?」
そんなことも知らなかった。シャルと話すのは初めてになる。最初の言葉を何にしようか悩んで、結局、聞きたかったことを聞いた。
「うん、そうだよ、俺がきみを見た時に“カレン”って言ったから」
「ごめん、その時の記憶、ない」
そう言うと、シャルは驚いていた。シャルもまた、カレンの事情を知らない。まさか記憶を抜かれて、シャルの為だけに教育されているとは思ってもいないだろう。人側の意図は竜人に明かしていないと思うから。
「そうなんだ、そっか、だからカレン、俺のこと知らない様子だったのか」
シャルはずっとカレンを抱きしめていたが、話しが長くなりそうだったから、カレンを抱きしめたまま、ソファに座った。シャルの足の間にカレンがいる形だ。シャルの手がカレンの腹に回っている。カレンは自分の手をどうしたら良いかわからず、戸惑い、そっとシャルの手に触れた。冷たい手。もう懐かしい。
「俺、変だっただろ? 似合わない服着て、歳もとっていたし、シアは何も言ってくれなかったけど」
シャルの手がカレンの手を握る。シャルの方が一回り大きい。軽くカレンの手が握り込まれてしまう。
「人のことは良くわからないから。ただ人側の意図が何かあるんだろうなと思っていた。俺はカレンがいてくれたら何でも良いよ」
「何でも良いって……それはそれでどうでも良いって言われているみたいに思える」
ぼそっと呟くと、シャルがカレンの体を軽々抱き上げて、向かい合わせに座らせた。シャルの胴体を太ももで挟む形だ。見上げるとシャルの顔があって、カレンは思わず下を向く。
「そんな訳ないだろ? カレンは俺の半身だ。傍にいないと困る」
そう言ったシャルは、カレンの頭の上に頬を寄せて、ため息を吐いた。
「ごめん、カレン。俺は竜だから時間の概念が人とは違う。まさか時空が離れるとは思わないだろ? ゆっくりカレンが俺に慣れてくれるのを待とうと思っていたんだ。ただそれだけ。初めて会った小さい頃から、ずっと愛してるよ、カレン」
カレンはシャルの言葉に驚き、聞き間違いじゃないかと思う。そっとシャルを見上げると、愛しいという眼差しのシャルがいた。シャルがふふっと笑う。何? とカレンが首を傾げる。
「見た目が幼い頃に近くなってる」
「ああ、そうか、俺は変わったつもりないんだけどな」
そう言ってシャルを見上げる。
「言葉遣いも直した方が良いか?」
カレンは元々35歳だ。見た目は自分じゃわからないから、言葉遣いも粗野なままだ。
「カレンだったら何でも良い」
シャルは同じセリフを繰り返す。カレンは少しムッとして、それから笑った。
「なまえ、シアが付けてくれたんだ?」
そんなことも知らなかった。シャルと話すのは初めてになる。最初の言葉を何にしようか悩んで、結局、聞きたかったことを聞いた。
「うん、そうだよ、俺がきみを見た時に“カレン”って言ったから」
「ごめん、その時の記憶、ない」
そう言うと、シャルは驚いていた。シャルもまた、カレンの事情を知らない。まさか記憶を抜かれて、シャルの為だけに教育されているとは思ってもいないだろう。人側の意図は竜人に明かしていないと思うから。
「そうなんだ、そっか、だからカレン、俺のこと知らない様子だったのか」
シャルはずっとカレンを抱きしめていたが、話しが長くなりそうだったから、カレンを抱きしめたまま、ソファに座った。シャルの足の間にカレンがいる形だ。シャルの手がカレンの腹に回っている。カレンは自分の手をどうしたら良いかわからず、戸惑い、そっとシャルの手に触れた。冷たい手。もう懐かしい。
「俺、変だっただろ? 似合わない服着て、歳もとっていたし、シアは何も言ってくれなかったけど」
シャルの手がカレンの手を握る。シャルの方が一回り大きい。軽くカレンの手が握り込まれてしまう。
「人のことは良くわからないから。ただ人側の意図が何かあるんだろうなと思っていた。俺はカレンがいてくれたら何でも良いよ」
「何でも良いって……それはそれでどうでも良いって言われているみたいに思える」
ぼそっと呟くと、シャルがカレンの体を軽々抱き上げて、向かい合わせに座らせた。シャルの胴体を太ももで挟む形だ。見上げるとシャルの顔があって、カレンは思わず下を向く。
「そんな訳ないだろ? カレンは俺の半身だ。傍にいないと困る」
そう言ったシャルは、カレンの頭の上に頬を寄せて、ため息を吐いた。
「ごめん、カレン。俺は竜だから時間の概念が人とは違う。まさか時空が離れるとは思わないだろ? ゆっくりカレンが俺に慣れてくれるのを待とうと思っていたんだ。ただそれだけ。初めて会った小さい頃から、ずっと愛してるよ、カレン」
カレンはシャルの言葉に驚き、聞き間違いじゃないかと思う。そっとシャルを見上げると、愛しいという眼差しのシャルがいた。シャルがふふっと笑う。何? とカレンが首を傾げる。
「見た目が幼い頃に近くなってる」
「ああ、そうか、俺は変わったつもりないんだけどな」
そう言ってシャルを見上げる。
「言葉遣いも直した方が良いか?」
カレンは元々35歳だ。見た目は自分じゃわからないから、言葉遣いも粗野なままだ。
「カレンだったら何でも良い」
シャルは同じセリフを繰り返す。カレンは少しムッとして、それから笑った。
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