竜の卵を宿すお仕事

サクラギ

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双子島

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 深く唇が合わされ、舌を絡めた。ゆっくりとベッドに寝かせられ、下着が脱がされて行く。でも涙は止まらない。そのうち嗚咽になった。お腹の子に支障があるかもしれないと思っていたら、アイが背中を撫でてくれた。

「強がりだな」

「……なに?」

 アイの言葉が聞こえない。耳がぼーんとしていて、感情が追いついていないようだった。

「無理はするな、そのシアという者が相手なのだろう? 無理に誘うことはない。これは卵を導く手段だ。ゆったりと身を預けているだけで良い」

「そんなの無理だろ、どうせするのなら、愛がある方が良い」

 アイがふっと笑う。

「愛と言われるたびに名を呼ばれているようだ。だが俺はアハト・デ・イシュクだ」

「そうか、アイは本名のアクセントを取った名なんだ。それはナギが?」

「そうだ」

 アイは無表情だ。カレンをベッドに横たえ、その体の両脇に手を置き、見下ろしているのに、感情が顔に出ていない。カレンはそれを聞いてやっと体の力を抜くことができた。

「俺も同じことしてる。シアは本名のアクセントを取った名なんだ」

「そのまま、楽しいことを考えていろ」

 アイはもう一度、唇を重ねる。竜に唇を重ねるという行為はない。竜は獣だ。交尾は単調なものになる。アイがキスをするのは、アイの中に人の想いや行動がインプットされているからだ。きっと竜だった時に、竜を守っていた人たちが、アイの前で愛し合う姿を見せていたのだろう。竜であるアイは特に何も思わなかったのだろうが、人と近しい存在になった時、それを人の愛情表現だと知ったのかもしれない。

 キスは息を奪う。息を奪うと同時に思考も奪う。アイのキスは巧みだ。数年前まで竜だったとは思えない。本当は誰か別に教わった人がいるのではないかと疑うくらいだ。

「匂いがかわった」

 カレンの耳元でアイが言う。それに対してカレンが頷いた。

「アイにもわかる? 体が準備している。これは性交する為の準備だと思っていたけど、卵の為にも準備するみたいだ」

 アイの指がカレンの後ろに触れる。触れると溢れ出るくらい、中が濡れていた。

「匂いに惹かれる? これが竜を誘う匂いだ。性欲もどって来た?」

 カレンの匂いに惹かれ、アイのものがズボンの生地を押し上げている。それを見つけたカレンはとても嬉しそうだ。

「アイが性欲を取り戻してくれて、命を継いで行ってくれたら嬉しい。そういう相手、みつかると良いな」

「……本当に、わかっているのか? ここに、私のを入れなくてはならない。別の方法を選んでも……」

「いいよ、気にしなくても。俺はさ、今の見た目が子どもに見えるんだろ? 本当はそうじゃない、だから気にすることはない。シアとは何十回も何百回もして来た。だから一回くらいでなんとも思わない」

 愛液でうるんだ穴は受け入れる準備もするようで、アイの指など軽々受け入れる。指を物欲しそうにひだが絡みつけば、アイも冷静ではいられない。これは卵を取り出す為の行為だ。そう何度も頭の中で繰り返し、そっと性器を穴にあてがう。まるで欲しいというように、カレンの穴はぱくりとアイのモノを銜えた。自らが蠢いてアイのモノを飲み込んで行く。カレンの体を横倒しにし、体を丸める形にさせる。お腹と母体に負担がかからないように注意しながら、穴の誘いに抗いながら、ゆっくりと奥に進めて行く。

「ん、んんん……あ、ああっ」

 カレンから荒い息と声が漏れる。顔が赤らんでいて、うるんだ目元と開いた唇が煽情的だ。
 ある程度、奥に入れたら、卵が自ら降りて来る。カレンの脇に手を入れ、カレンを起き上がらせる。ゆっくりとモノを引き、卵が降りて来るのを待つ。カレンは目を開け、後ろに力を入れないように、荒い息を吐き続けている。そのうち卵が降りて来る。カレンの中から抜けないように気を付け、体を返し、尻を落とした形の四つん這いにさせる。モノを抜くと同時に指を入れ、卵の道を確保する。

「あ、ああああっ、いや、あああああ、んんんんん……」

 最後の入り口を抜ける時、カレンは声を上げた。もうアイが補助できる場面ではない。アイはカレンを抱き寄せ、背中と腰をさすった。カレンの指がアイの背の皮膚に食い込む。それでいきむことが出来るならと、アイはそのままにさせた。

 ベッドのシーツの上に卵が落ちる。まだ柔らかいそれは、楕円だが横に少し広がっている。

「産まれた、カレン、頑張ったな」

 ぎゅっと抱き締められ、静かにベッドに横にされた。アイは服を直し、ナギを呼びに行く。
 カレンは生まれた卵を良く見ようと傍に寄った。卵は柔らかい乳白色の、ナギが言っていたように10センチくらいのものだった。時折、息をしているかのように揺れるから、卵が生きているのだと実感できた。
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