竜の卵を宿すお仕事

サクラギ

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竜殱滅

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 軍艦には潜水能力まであった。
 廃棄島で竜の死骸を降ろすと、軍艦は海に潜ってしまった。外からはわからない。深い海の底へ。
 廃棄島も良く出来ている。滑り台と滑車方式で荷物が流されて行き、廃棄島の巨大な穴の中へ納められて行く。元々ある山型の島の洞窟で、中を掘り下げて深くしているらしい。島全体が墓地だった。

 廃棄島から小舟で海を渡る。見る感じでは荒い海のように見えるが、小舟なのに転覆することなく海を渡って行く。船に乗ったのはシロとハク、カレンとミコトだ。他の3体は竜化して飛んで行った。懐かしくも思える竜の姿に、カレンは光に溶け込む竜を見えなくなるまで見守った。

「竜が好き?」

 シロが可愛く小首を傾げる。

「どうかな、ずっと見て来たからね、見ない方が変な感じなんだ」

 カレンは苦い表情をする。

「ふうん、ずっと見られたんだね。僕たちはもうこれだけしかいないから、寂しいよ」

「たくさん殺されてしまった」

 シロが言うのは、廃棄島にある竜たちのことを偲んでかと思った。

「違うよ、僕たちの仲間はもっと前に殺されたんだよ。もっと、ずっと前。双子島に来るずっと前だよ」

 双子島が見えて来る。それは一方方向から見える姿だから、双子と呼ばれる所以の形には見えなかった。ただ巨大な山を有した島だ。鬱蒼と茂る木々が連なっているから、島の内情はわからない。この中に竜の渓谷があるのかどうかも、わからなかった。

「俺らと国にいる害獣とされる竜とは種族が違う。どちらも別次元からこの地に来たのは変わりないが、来た時間が違う。俺らはかなり昔から大陸に生息していた竜種の生き残りだ。だから人との付き合いも長い。決して人を傷つける者ではないのだが、人には種族を見分ける目がない。だから俺らは大陸を離れ、この島に来た。だから竜殲滅の竜は同種ではない。人の愚かさには辟易するがな」

 うん、とカレンは頷く。
 カレンは竜の違いを見抜いていた。竜と竜人となる新たな種族との違い。ミコトには同じに見える。ミコトの目は大陸の人の目と同じ。見分けがつかないという理由だけで、それ以外はまるで違うのだが。

「ここに渓谷と呼べる場所はある? 俺は実際に竜のいる場所に行ったことがないんだ。ただ見ていただけだから、一方方向からの景色しか知らないし」

「行ったことないの?」

 シロが不思議顔だ。

「うん、ないよ。人の姿で会いに来てくれていた一人しか知らないんだ。あとは遠くから風景を眺めていたんだよ」

「ふうん、良くわからないけど、仲が良い竜がいたんだね」

「俺もひとりしか知らねえ。しかも人の姿しか見たことねえし」

 ミコトが悪態をつく。どうやらこちらの環境に慣れて来たのだろう。カレンとふたりだけという状況から脱し、周りに敵がいないと判断したからかもしれない。普段のミコトに戻りつつあった。
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