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竜管制塔
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自室に戻り、シャワーを浴び、仮眠を取る。普通なら30分の授精時間を取らなければならないが、行為がなされなかった為、受診時間までの時間が空いた。
「行為をしませんでした」
診察をする男性医師の前でそう言うと、一瞬驚いた顔をした医師だったが、そうですかと呟きながら、モバイル端末に何かを書き込んでいる。周りの職員が表情の変化もなく立ち上がり、診察室から出て行った。慌ただしい雰囲気が廊下から伝わって来る。
「えーっと、それはなぜですか? お相手に別れを告げられたとか……」
「ええ、まあ、そんなところです」
本当はカレンの方から捨てて欲しいと願った。でもそれは言わない。もしシアにその気があれば、「はい」なんて一言で去らなかったからだ。捨てられた。そういう機会を告げられなくて困っていたのだとしたら、カレンの方から言い出して良かったと思う。少しでも早く逃れたかった。想いがないのなら、なおさら早く。
「わかりました。上の者に確認をして、のちほど、ご連絡させて頂きます。通常ですと退室ということになると思いますので、私物の整理をしてお待ちください」
「はい、いままでお世話になり、ありがとうございました」
「いえ、お力になれず、申し訳ありませんでした。どうかお幸せにお過ごしください」
礼をして診察室を出る。
慌ただしく動く人の姿を見ないようにして、カレンは自室に戻った。
ベッドに横になる。
これで10年という日々に別れを告げられる。もうシアに会えない。そう思うと涙が出た。自分から離れられるように仕向けたのに、心のどこかでもしかして引き留められるかもという期待があった。シアがカレンを相手にしていたのは、子が欲しかったから。カレンを指名したのは、単に間違いだったのだろう。竜にとって特別な惹かれる香りがあるのだと言うが、それは竜にしかわからない。はじめはカレンにもあったのかもしれない。でも消えてしまったのかも。勘違いだったのかも。
ベッドに伏せて歯を食いしばっても嗚咽が漏れる。精を受ける場所だけがジクジクと濡れている。月に一度、シアに会う日は体が精を受ける準備をする日だ。性を受けなければいつまでも勝手に濡れる。ヒクヒクと喉を鳴らし、嗚咽を噛み締めながら、性器を擦り、後ろを刺激する。溢れた液体が太ももを伝い、シーツを濡らす。
本当は予感していることがある。
体が竜用に変化しているのだ。この体を持つカレンを国は基地より先の世界に逃してくれるだろうかという不安だ。たぶん、無理だ。そういう予感が胸にある。たぶん殺される。もしくは実験素材だ。ずっと基地に繋がれる予感。それはきっと間違いじゃない。
シアとの生活が夢にある。
子を成し、シアと共に生きる。
空を舞う竜たちの元で、竜人を育てる。
カレンが想像するシアは笑っている。いつもカレンと会うと嬉しそうに微笑んでくれた。抱き締めて、つむじにキスをくれる。それが一連の義務だとしても、カレンは嬉しかった。愛あるセックスを想像して、もう二度と手に入らないと絶望する。
それで良い。
シアには次がある。
とうが経ってしまった古いカレンより、新しい可能性が高い母体へ代わった方が良い。
カレンの望みは叶わなかったけれど、シアの望みが叶うのなら。
カレンにはもう生への執着がなかった。
「行為をしませんでした」
診察をする男性医師の前でそう言うと、一瞬驚いた顔をした医師だったが、そうですかと呟きながら、モバイル端末に何かを書き込んでいる。周りの職員が表情の変化もなく立ち上がり、診察室から出て行った。慌ただしい雰囲気が廊下から伝わって来る。
「えーっと、それはなぜですか? お相手に別れを告げられたとか……」
「ええ、まあ、そんなところです」
本当はカレンの方から捨てて欲しいと願った。でもそれは言わない。もしシアにその気があれば、「はい」なんて一言で去らなかったからだ。捨てられた。そういう機会を告げられなくて困っていたのだとしたら、カレンの方から言い出して良かったと思う。少しでも早く逃れたかった。想いがないのなら、なおさら早く。
「わかりました。上の者に確認をして、のちほど、ご連絡させて頂きます。通常ですと退室ということになると思いますので、私物の整理をしてお待ちください」
「はい、いままでお世話になり、ありがとうございました」
「いえ、お力になれず、申し訳ありませんでした。どうかお幸せにお過ごしください」
礼をして診察室を出る。
慌ただしく動く人の姿を見ないようにして、カレンは自室に戻った。
ベッドに横になる。
これで10年という日々に別れを告げられる。もうシアに会えない。そう思うと涙が出た。自分から離れられるように仕向けたのに、心のどこかでもしかして引き留められるかもという期待があった。シアがカレンを相手にしていたのは、子が欲しかったから。カレンを指名したのは、単に間違いだったのだろう。竜にとって特別な惹かれる香りがあるのだと言うが、それは竜にしかわからない。はじめはカレンにもあったのかもしれない。でも消えてしまったのかも。勘違いだったのかも。
ベッドに伏せて歯を食いしばっても嗚咽が漏れる。精を受ける場所だけがジクジクと濡れている。月に一度、シアに会う日は体が精を受ける準備をする日だ。性を受けなければいつまでも勝手に濡れる。ヒクヒクと喉を鳴らし、嗚咽を噛み締めながら、性器を擦り、後ろを刺激する。溢れた液体が太ももを伝い、シーツを濡らす。
本当は予感していることがある。
体が竜用に変化しているのだ。この体を持つカレンを国は基地より先の世界に逃してくれるだろうかという不安だ。たぶん、無理だ。そういう予感が胸にある。たぶん殺される。もしくは実験素材だ。ずっと基地に繋がれる予感。それはきっと間違いじゃない。
シアとの生活が夢にある。
子を成し、シアと共に生きる。
空を舞う竜たちの元で、竜人を育てる。
カレンが想像するシアは笑っている。いつもカレンと会うと嬉しそうに微笑んでくれた。抱き締めて、つむじにキスをくれる。それが一連の義務だとしても、カレンは嬉しかった。愛あるセックスを想像して、もう二度と手に入らないと絶望する。
それで良い。
シアには次がある。
とうが経ってしまった古いカレンより、新しい可能性が高い母体へ代わった方が良い。
カレンの望みは叶わなかったけれど、シアの望みが叶うのなら。
カレンにはもう生への執着がなかった。
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