7 / 68
竜管制塔
6
しおりを挟む
シアを前にすると、聞きたいことも言葉にならない。話よりも恥ずかしい部分を見せているのに。
尻は向けられても、視線は向けられない。向き合って何を言われるのか怖いのだ。シアがどういう性格か知らない。声も聞いたことがない。
でも今日は、という思いがカレンにあった。今日こそはもう要らないと言ってもらおう。そういう覚悟だ。
実際、妊娠しなくて捨てられた例は多いと聞いている。むしろ妊娠する方が少ないのだ。この島に異世界とのポイントが開き、基地が造られてからすでに千年が経っている。もちろん最初はこんな設備などなく、竜に気づいた島民と、国の偉い人が秘密裏に手を組み、母体を提供していた所から始まる。
シアは若い竜だ。カレンが初めての相手だ。だから戸惑いもあるのかもしれない。本当はもっと信頼関係を結び、行為をするのかも。そう思いながら出来ないのは、カレンが恐れているからだ。
実際、シアを前にすると、独特のオーラに気圧される。人とは違う何かがある。見た目の異質さ、綺麗さ、土と緑の匂い。近づくとより爽やかな匂いがする。皮膚の冷たさが肌に触れると、ゾクゾクする。でも擦られる内側は熱くなって、でも飛沫は氷のように冷たいから、腹の中が一気に冷えて、どこまで入ったのかを知らしめられる。
シアを想うと性器に血が集まる。シアの手が肌に触れ、薄い唇が唇を塞ぐ。冷たい舌と舌を絡め、甘い言葉を受け止める。そういう想像をする。まさやんの言う愛のあるセックスだ。
事前に処理していることは秘密だ。その点は報告しなければバレやしない。シアを性の対象に見ているなど、絶対にバレたくない。好きな相手に捨てられたなど、基地の連中に知られるのは嫌だった。シアにその気はない。だからカレンも気持ちを偽り続けて、あっという間に35歳になった。捨てられたかった。もっと早く。想いが10年も募る前に。
カレンは事前検診を済ませると、いつものように銀の服を身につける。ゲートを潜る時にいっそ一瞬で死ねたら楽なのにと思い、通り抜けられて落胆する。
シアの前に立ち、いつものように挨拶をしようとして、出来なかった。でも服は脱げる。簡単に。脱ぎながら手を広げるシアの腕に包まれ、つむじにキスを受けて、ベッドに上がる。うつ伏せて腰を上げていればシアが覆い被さって来る。
いつもの行動。何の躊躇もない。このまま精を受ければ、体勢を崩せず、その間にシアは去ってしまう。
「……子が欲しいのか?」
シーツに伏せているから、声がくぐもってしまった。でもシアには届いている。挿入が触れただけで止まったからだ。
「はい」
シアの声だ。凛として、綺麗な声。たかが「はい」だけの二文字なのに、心が震えた。奥歯を噛む。涙が出そうだ。
「だったら捨ててくれ」
体を返して、シアを睨む。涙が滲む。
「はい」
シアが体を引いた。竜人の性器を初めて見た。凶暴に上を向いた性器をそのままに、シアはベッドから離れ、脱いだ服を拾い、身につけながら異世界側へ歩いて行った。行き先はパーテーションの向こう側だ。ドアがあるのか、わからない。でもこれで終わったことを知る。シアの声を聞いたのは二度、「はい」だけ。口付けも、手のひらの感触さえ知らない。
カレンは膝を抱えて泣いた。
尻は向けられても、視線は向けられない。向き合って何を言われるのか怖いのだ。シアがどういう性格か知らない。声も聞いたことがない。
でも今日は、という思いがカレンにあった。今日こそはもう要らないと言ってもらおう。そういう覚悟だ。
実際、妊娠しなくて捨てられた例は多いと聞いている。むしろ妊娠する方が少ないのだ。この島に異世界とのポイントが開き、基地が造られてからすでに千年が経っている。もちろん最初はこんな設備などなく、竜に気づいた島民と、国の偉い人が秘密裏に手を組み、母体を提供していた所から始まる。
シアは若い竜だ。カレンが初めての相手だ。だから戸惑いもあるのかもしれない。本当はもっと信頼関係を結び、行為をするのかも。そう思いながら出来ないのは、カレンが恐れているからだ。
実際、シアを前にすると、独特のオーラに気圧される。人とは違う何かがある。見た目の異質さ、綺麗さ、土と緑の匂い。近づくとより爽やかな匂いがする。皮膚の冷たさが肌に触れると、ゾクゾクする。でも擦られる内側は熱くなって、でも飛沫は氷のように冷たいから、腹の中が一気に冷えて、どこまで入ったのかを知らしめられる。
シアを想うと性器に血が集まる。シアの手が肌に触れ、薄い唇が唇を塞ぐ。冷たい舌と舌を絡め、甘い言葉を受け止める。そういう想像をする。まさやんの言う愛のあるセックスだ。
事前に処理していることは秘密だ。その点は報告しなければバレやしない。シアを性の対象に見ているなど、絶対にバレたくない。好きな相手に捨てられたなど、基地の連中に知られるのは嫌だった。シアにその気はない。だからカレンも気持ちを偽り続けて、あっという間に35歳になった。捨てられたかった。もっと早く。想いが10年も募る前に。
カレンは事前検診を済ませると、いつものように銀の服を身につける。ゲートを潜る時にいっそ一瞬で死ねたら楽なのにと思い、通り抜けられて落胆する。
シアの前に立ち、いつものように挨拶をしようとして、出来なかった。でも服は脱げる。簡単に。脱ぎながら手を広げるシアの腕に包まれ、つむじにキスを受けて、ベッドに上がる。うつ伏せて腰を上げていればシアが覆い被さって来る。
いつもの行動。何の躊躇もない。このまま精を受ければ、体勢を崩せず、その間にシアは去ってしまう。
「……子が欲しいのか?」
シーツに伏せているから、声がくぐもってしまった。でもシアには届いている。挿入が触れただけで止まったからだ。
「はい」
シアの声だ。凛として、綺麗な声。たかが「はい」だけの二文字なのに、心が震えた。奥歯を噛む。涙が出そうだ。
「だったら捨ててくれ」
体を返して、シアを睨む。涙が滲む。
「はい」
シアが体を引いた。竜人の性器を初めて見た。凶暴に上を向いた性器をそのままに、シアはベッドから離れ、脱いだ服を拾い、身につけながら異世界側へ歩いて行った。行き先はパーテーションの向こう側だ。ドアがあるのか、わからない。でもこれで終わったことを知る。シアの声を聞いたのは二度、「はい」だけ。口付けも、手のひらの感触さえ知らない。
カレンは膝を抱えて泣いた。
0
お気に入りに追加
152
あなたにおすすめの小説
強面な将軍は花嫁を愛でる
小町もなか
BL
異世界転移ファンタジー ※ボーイズラブ小説です
国王である父は悪魔と盟約を交わし、砂漠の国には似つかわしくない白い髪、白い肌、赤い瞳をした異質な末息子ルシャナ王子は、断末魔と共に生贄として短い生涯を終えた。
死んだはずのルシャナが目を覚ましたそこは、ノースフィリアという魔法を使う異世界だった。
伝説の『白き異界人』と言われたのだが、魔力のないルシャナは戸惑うばかりだ。
二度とあちらの世界へ戻れないと知り、将軍マンフリートが世話をしてくれることになった。優しいマンフリートに惹かれていくルシャナ。
だがその思いとは裏腹に、ルシャナの置かれた状況は悪化していった――寿命が減っていくという奇妙な現象が起こり始めたのだ。このままでは命を落としてしまう。
死へのカウントダウンを止める方法はただ一つ。この世界の住人と結婚をすることだった。
マンフリートが立候補してくれたのだが、好きな人に同性結婚を強いるわけにはいかない。
だから拒んだというのに嫌がるルシャナの気持ちを無視してマンフリートは結婚の儀式である体液の交換――つまり強引に抱かれたのだ。
だが儀式が終了すると誰も予想だにしない展開となり……。
鈍感な将軍と内気な王子のピュアなラブストーリー
※すでに同人誌発行済で一冊完結しております。
一巻のみ無料全話配信。
すでに『ムーンライトノベルズ』にて公開済です。
全5巻完結済みの第一巻。カップリングとしては毎巻読み切り。根底の話は5巻で終了です。
男前生徒会長は非処女になりたい。
瀬野みなみ
BL
王道全寮制男子校に、季節外れの転校生がやってきた。
俺様で男前な生徒会長は、周りの生徒会役員にボイコットされ、精神的にも体力的にもボロボロ……
そんな彼には、好きな人がいて……
R18/平凡攻め/結腸責め/メスイキ
※がついてる話はエロシーン含みます。
自サイト→http://nanos.jp/color04/
twitter→@seno_1998(裏話や細かい設定をボソボソ)
表紙は ソラ様(https://www.pixiv.net/member.php?id=454210)よりお借りしました。
おっさん家政夫は自警団独身寮で溺愛される
月歌(ツキウタ)
BL
妻に浮気された上、離婚宣告されたおっさんの話。ショックか何かで、異世界に転移してた。異世界の自警団で、家政夫を始めたおっさんが、色々溺愛される話。
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
EDEN ―孕ませ―
豆たん
BL
目覚めた所は、地獄(エデン)だった―――。
平凡な大学生だった主人公が、拉致監禁され、不特定多数の男にひたすら孕ませられるお話です。
【ご注意】
※この物語の世界には、「男子」と呼ばれる妊娠可能な少数の男性が存在しますが、オメガバースのような発情期・フェロモンなどはありません。女性の妊娠・出産とは全く異なるサイクル・仕組みになっており、作者の都合のいいように作られた独自の世界観による、倫理観ゼロのフィクションです。その点ご了承の上お読み下さい。
※近親・出産シーンあり。女性蔑視のような発言が出る箇所があります。気になる方はお読みにならないことをお勧め致します。
※前半はほとんどがエロシーンです。
「イケメン滅びろ」って呪ったら
竜也りく
BL
うわー……。
廊下の向こうから我が校きってのイケメン佐々木が、女どもを引き連れてこっちに向かって歩いてくるのを発見し、オレは心の中で盛大にため息をついた。大名行列かよ。
「チッ、イケメン滅びろ」
つい口からそんな言葉が転がり出た瞬間。
「うわっ!?」
腕をグイッと後ろに引っ張られたかと思ったら、暗がりに引きずり込まれ、目の前で扉が閉まった。
--------
腹黒系イケメン攻×ちょっとだけお人好しなフツメン受
※毎回2000文字程度
※『小説家になろう』でも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる