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願望と現実
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嫌だとトリスは思った。でも逃げられるとは思えない。
本格的な降雪期の少し前、トリスは施設から連れ出され、馬車に乗せられていた。
「すみません、トリスさま」
あの日の従者が一緒に乗っている。従者は片目を失っていた。それが何を意味するのか、トリスが従うに十分な理由だった。
「大丈夫、わかるよ、大丈夫」
大丈夫は自分に言い聞かせていた。やっぱり死ねば良かったと思うけど、ザグと過ごした3月は幸せだった。掛け替えのない時間。それだけは確かだ。
馬車が停まったのは、あの屋敷だった。屋敷の前にもう一台の豪華な馬車がある。先に降りた従者が馬車の下から手を貸してくれて、まだおぼつかない足のトリスはゆっくりと雪の積もる地面に足を下ろした。もう逃げられないと思う。また捕らえられることの恐怖に身を凍らせながら、一歩一歩屋敷に近づき、入って行く。
あの部屋に入ると、ソファにガイアが座っている。神々しい王者の風格と煌びやかな出立ち。それがハリボテであることを、トリスは十分に理解していた。でも繕う。会いたかったと自分に嘘をついた。
「ガイア兄さま」
頬を高揚させ、走り寄ってその胸に頬を寄せた。
「元のように綺麗になりましたか? また抱いて下さいますか?」
懇願するようにガイアを見上げると、ガイアは頬を引き上げて笑った。
「可愛いトリス、どこへ行っていたのかな? 私に断りもなく、いけない子だ」
頬を張られ、体が飛んで机に背中を打った。息が止まる。それなのに胸ぐらを掴まれて引き上げられた。足が浮く。首が絞まって苦しくて、手を喉に持って行くと、そのままベッドへ連れて行かれた。ベッドに投げ捨てられ、息が通ってゼイゼイと喘ぐ。
「お仕置きだトリス、自分で服を脱ぎ、両足を開き、抱えて尻穴を見せろ」
「はい、ガイア兄さま」
震える手で服を脱ぎ、下着まで脱ぎ、裸になって仰向けで寝る。ガイアの方に尻を向け、足を開いて、太ももを支えた。羞恥で震える。何をされるのか怖くて涙が出る。ガイアの視線が全てを見透かすように体を這う。
「良い子だ、ここは使っていないようだね」
ガイアがベッドに座り、尻穴を撫でた。
「ガイア兄さまにだけです。ガイア兄さま、抱いて下さい」
勃ちもせず、縮みあがった雄をギリリと握り込まれた。
「うっ……」
思わずあげた声を殺す。気持ちの伴わない行為だ。いくら態度を甘えさせたところで、勃つはずもない。
「兄さま、お薬を下さい。お願いします。もうお薬なしでは生きられなくなってしまいました。早く兄さまが欲しいです」
あーんと口を開いで舌を出す。太ももの手を解いて、ガイアの肩に手を置き、口付けを強請った。
ガッと顔を掴まれ、ベッドに落とされた。そのまま唇を貪られ、薬が喉を通った。またあの辛い日々が来ると覚悟した。感情と行動と心が別々になる恐怖を、トリスはもうわかっている。わかっていても拒む術はない。今度、トリスが間違えば、従者の命はないだろう。
「あ、あ、兄さま、兄さま、お腹の中が寂しいです。早く熱くて大きいモノで奥まで突いて下さい」
薬の影響で後穴が濡れる。トロリと染み出した液が太ももを濡らした。ベッドに突っ伏してお尻を上げる。両手を尻たぶに当て、溝を割り開く。誘うように穴がヒクつくのがわかる。
「ああん、早く、早く、お願い、兄さま、お願いします」
「どうだ、ザグ、トリスは可愛いだろう?」
ガイアの言葉を聞いて熱が一気に凍えた。後ろを振り返る。そこにあった姿に恐怖した。
「い、いやだ、ちがう、ちがう、お願い、見ないで」
ベッドから転がり落ち、シーツを引き寄せて体を覆った。怖くて震える。ガイアの忍び笑いが聞こえる。
「可愛いトリス、出ておいで、可愛い姿をザグに見てもらおうか」
トリスのいるベッドの向こう側にガイアが歩んで来る。手を引かれて、立たされて、口付けをされた。強引に、執拗に、わざとらしくザグに見せつけるように。
「はあ、ああん……」
薬の影響で快楽から逃げられない。ガイアの指が後穴に潜り込み、嫌らしい水音が部屋に響いた。
「おまえが抱くか?」
ガイアがザグに問いかける。それからガイアの鋭い目がトリスに向いた。行動を間違ってはいけない。間違えば従者の命が無くなるし、ザグになにをされるかわからない。
「や、やだ、兄さまが欲しい、兄さまだけ、愛してます兄さま、抱いて下さい」
跪いてガイアの股間に手を這わせ、衣服を下げて雄を引き出す。舌を出して先走りを舐め取り、根本から先端へと舐め上げた。涙が伝う。恥ずかしくて逃げてしまいたい。
「おいしい、兄さま、もっと下さい」
口を開ければ、熱く大きなモノが突き入れられた。喉がえずく。吐きそうになったものを飲み込み、口に入らない部分を手で扱き、喉を窄め、先端に奉仕しながら、歯を当てないように唇で覆い、隙間を埋めるように舌を這わせた。ガイアが喉を鳴らす。
「ああ、とても上手だ。ザグ、君もどうだい?」
「くだらん。勝手にすれば良い、俺は戻る」
ザグはそう言い捨てて、部屋を出て行った。
「ザグに抱いて欲しかったのだろう?」
懸命に奉仕するトリスの喉奥に精を放ったガイアは、窓を開ける。咽せるトリスを窓枠に掴まらせ、後ろから一気に突き上げた。
「ああ、深い、ああん、兄さま、イイ、イイ……」
窓の下でザグが振り返り、見上げた。顎を掬い上げられたトリスは、ザグの視線の中、後穴に深く穿たれ、激しく揺さぶられながら、舌を突き出して絡め合った。薬が脳を支配している。快楽に堕ちる。でも心は血の涙を流した。
本格的な降雪期の少し前、トリスは施設から連れ出され、馬車に乗せられていた。
「すみません、トリスさま」
あの日の従者が一緒に乗っている。従者は片目を失っていた。それが何を意味するのか、トリスが従うに十分な理由だった。
「大丈夫、わかるよ、大丈夫」
大丈夫は自分に言い聞かせていた。やっぱり死ねば良かったと思うけど、ザグと過ごした3月は幸せだった。掛け替えのない時間。それだけは確かだ。
馬車が停まったのは、あの屋敷だった。屋敷の前にもう一台の豪華な馬車がある。先に降りた従者が馬車の下から手を貸してくれて、まだおぼつかない足のトリスはゆっくりと雪の積もる地面に足を下ろした。もう逃げられないと思う。また捕らえられることの恐怖に身を凍らせながら、一歩一歩屋敷に近づき、入って行く。
あの部屋に入ると、ソファにガイアが座っている。神々しい王者の風格と煌びやかな出立ち。それがハリボテであることを、トリスは十分に理解していた。でも繕う。会いたかったと自分に嘘をついた。
「ガイア兄さま」
頬を高揚させ、走り寄ってその胸に頬を寄せた。
「元のように綺麗になりましたか? また抱いて下さいますか?」
懇願するようにガイアを見上げると、ガイアは頬を引き上げて笑った。
「可愛いトリス、どこへ行っていたのかな? 私に断りもなく、いけない子だ」
頬を張られ、体が飛んで机に背中を打った。息が止まる。それなのに胸ぐらを掴まれて引き上げられた。足が浮く。首が絞まって苦しくて、手を喉に持って行くと、そのままベッドへ連れて行かれた。ベッドに投げ捨てられ、息が通ってゼイゼイと喘ぐ。
「お仕置きだトリス、自分で服を脱ぎ、両足を開き、抱えて尻穴を見せろ」
「はい、ガイア兄さま」
震える手で服を脱ぎ、下着まで脱ぎ、裸になって仰向けで寝る。ガイアの方に尻を向け、足を開いて、太ももを支えた。羞恥で震える。何をされるのか怖くて涙が出る。ガイアの視線が全てを見透かすように体を這う。
「良い子だ、ここは使っていないようだね」
ガイアがベッドに座り、尻穴を撫でた。
「ガイア兄さまにだけです。ガイア兄さま、抱いて下さい」
勃ちもせず、縮みあがった雄をギリリと握り込まれた。
「うっ……」
思わずあげた声を殺す。気持ちの伴わない行為だ。いくら態度を甘えさせたところで、勃つはずもない。
「兄さま、お薬を下さい。お願いします。もうお薬なしでは生きられなくなってしまいました。早く兄さまが欲しいです」
あーんと口を開いで舌を出す。太ももの手を解いて、ガイアの肩に手を置き、口付けを強請った。
ガッと顔を掴まれ、ベッドに落とされた。そのまま唇を貪られ、薬が喉を通った。またあの辛い日々が来ると覚悟した。感情と行動と心が別々になる恐怖を、トリスはもうわかっている。わかっていても拒む術はない。今度、トリスが間違えば、従者の命はないだろう。
「あ、あ、兄さま、兄さま、お腹の中が寂しいです。早く熱くて大きいモノで奥まで突いて下さい」
薬の影響で後穴が濡れる。トロリと染み出した液が太ももを濡らした。ベッドに突っ伏してお尻を上げる。両手を尻たぶに当て、溝を割り開く。誘うように穴がヒクつくのがわかる。
「ああん、早く、早く、お願い、兄さま、お願いします」
「どうだ、ザグ、トリスは可愛いだろう?」
ガイアの言葉を聞いて熱が一気に凍えた。後ろを振り返る。そこにあった姿に恐怖した。
「い、いやだ、ちがう、ちがう、お願い、見ないで」
ベッドから転がり落ち、シーツを引き寄せて体を覆った。怖くて震える。ガイアの忍び笑いが聞こえる。
「可愛いトリス、出ておいで、可愛い姿をザグに見てもらおうか」
トリスのいるベッドの向こう側にガイアが歩んで来る。手を引かれて、立たされて、口付けをされた。強引に、執拗に、わざとらしくザグに見せつけるように。
「はあ、ああん……」
薬の影響で快楽から逃げられない。ガイアの指が後穴に潜り込み、嫌らしい水音が部屋に響いた。
「おまえが抱くか?」
ガイアがザグに問いかける。それからガイアの鋭い目がトリスに向いた。行動を間違ってはいけない。間違えば従者の命が無くなるし、ザグになにをされるかわからない。
「や、やだ、兄さまが欲しい、兄さまだけ、愛してます兄さま、抱いて下さい」
跪いてガイアの股間に手を這わせ、衣服を下げて雄を引き出す。舌を出して先走りを舐め取り、根本から先端へと舐め上げた。涙が伝う。恥ずかしくて逃げてしまいたい。
「おいしい、兄さま、もっと下さい」
口を開ければ、熱く大きなモノが突き入れられた。喉がえずく。吐きそうになったものを飲み込み、口に入らない部分を手で扱き、喉を窄め、先端に奉仕しながら、歯を当てないように唇で覆い、隙間を埋めるように舌を這わせた。ガイアが喉を鳴らす。
「ああ、とても上手だ。ザグ、君もどうだい?」
「くだらん。勝手にすれば良い、俺は戻る」
ザグはそう言い捨てて、部屋を出て行った。
「ザグに抱いて欲しかったのだろう?」
懸命に奉仕するトリスの喉奥に精を放ったガイアは、窓を開ける。咽せるトリスを窓枠に掴まらせ、後ろから一気に突き上げた。
「ああ、深い、ああん、兄さま、イイ、イイ……」
窓の下でザグが振り返り、見上げた。顎を掬い上げられたトリスは、ザグの視線の中、後穴に深く穿たれ、激しく揺さぶられながら、舌を突き出して絡め合った。薬が脳を支配している。快楽に堕ちる。でも心は血の涙を流した。
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