王子なのに戦場の聖域で好き勝手ヤってたら獣人に飼われました

9・婚姻の儀

　婚姻の儀には、各国の権力者が集う。招待客は多ければ多いほど国の威厳になる。

　ユグは次期王と呼び声が高い。アリシアの実家であるオーギュスト家は大貴族であり、代々王妃を輩出して来た家系であり、莫大な資産を持つ貴族でもあるから、ユグの後ろ盾は王位継承権を持つ者の中で一番となれる。

　婚姻の儀第1日目は各国の王族へのお披露目会である。隣国の王族が祝辞を述べて、遠く壇上にいる王、王妃に向かう。主役のユグとアリシアは室内バルコニーの上に並んで各国の者を見渡し、時に手を振るという、誰でも良いのではないかと思うような役割である。

　後ろに控えているリオンと何度も入れ替わりたいと思った。そう思いながら耐えていると、見知った気配を感じ、目を凝らした。

　まさかな、と思い、よほど飢えているのかと思った。だが可能性があるというだけでも、動くには十分な理由だった。

「すまないアリシア、少し離れるが、代わりを置いておく」

　ユグは身代わりにリオンを立たせると、足早に裏へと向かう。目立つ行動はできないから、会場を探して歩くのは無理だ。純白で美しい装飾品を付けた軍服を着ている者がうろついていたら、すぐにユグだとわかってしまう。

　ユグは祈るような気持ちで白鳥宮へ向かった。

　婚礼の為の服を脱ぎ去り、付けられた甘い香りを消す為に湯殿に入る。侍女たちは婚礼の儀の為に裏方業務に忙しく、都合よく白鳥宮には誰もいない。

　彼の能力があれば、表舞台に警備を割く状況の中、裏へ忍ぶことなどお手の物だ。だが不安もある。彼が本当に祝福に訪れている場合だ。そうであれば、ユグの行動は滑稽である。

　湯殿に浸かり、温まる筈が、震えが止まらない。

　3日と空けずに体を繋いで来た相手だ。狂おしいほど欲しい。誰よりも熱く、太く、長いモノを乱暴に捻じ込んで欲しい。

　欲望が身を包む。