王子なのに戦場の聖域で好き勝手ヤってたら獣人に飼われました

1・オープニング

　死者の国ドール。それは北方から攻め入って来る脅威であり、各国共通の敵でもあった。

　ドールから湧き出る死者は夜の闇と共に現れ、敵対する者を幻覚へと導き、その肉を喰い、仲間を増やしながら攻め入って来る。

　北の海より現れるそれらと戦うのは、大陸各地から派遣された軍人や雇われ傭兵だ。彼らは戦線に合わせて上下しながらテントを張り、昼間に休んで夜戦うという生活をしていた。

　戦う相手はドールであるが、共通の敵がいるというだけで、各国が大人しく敵だけと戦っている訳ではない。

　さらにお互いを敵とする国もあれば、諜報活動の場とする国もある。お互いに相容れない国もあれば、過去のしがらみから逃れられない国もあった。

　各国の思惑を乗せた地には、エールと呼ばれる聖域がある。それは各国が戦う者に与えた温情の地であった。