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80 アシスタント
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朝の通勤ラッシュ時に電車に乗るのはけっこうつらい。でも日本にいるって痛感する。ただ満員電車に乗っていても窮屈に思う事はない。なにせハーツがよこした護衛が二人、紘伊を守る様に立ち、空間を作ってくれているからだ。完全に人化した獅子の獣人。2メートル近い身長と屈強な体つき。明らかに外国人だと思わせる容貌の二人が満員電車に乗っていると、それだけで窮屈に見えるけど、日本人は外国人に弱い。微妙に空間があるのは近寄り難いからだろう。
護衛は紘伊に声をかけない。前後、数メートル空けて着いて来る。ハーツの過保護によるもので、この3ヶ月の間、誰に襲われる事もないのだけど。
「おはようございます」
まだ学生はいない。いるのは紘伊と同じ教授のアシスタントや事務員など、大学関係者ばかりだ。紘伊は以前と同じ様にくたびれたスーツを着て通っている。変に声を掛けられたくないからだ。紘伊はなぜか女学生にモテる。遊び慣れた年上の男で軽口を言い合うつもりが惚れられている、なんて事が続いたから警戒する様になった。元々好みは男性だ。言い寄られた所で間違いはないけど、わざわざハーツの嫉妬を誘いたいとは思わない。
「おはようございます」
イヨカの部屋へ向かい、準備を始める。仕事はイヨカのスケジュール管理やメールのやり取り、資料収集や資料検索、地方公演の手配など、イヨカの大学以外の仕事の手配を請負っている。という建前の元、実はとある施設の管理が紘伊のもう一つの仕事となっている。
「おはよう。今日も特に変化はないよ、エルは元気?」
休憩用のソファに寝転んでいた人物が起き上がる。無精髭を生やした男は怠惰な態度であくびをした。
「元気ですよ。モデルの仕事も順調の様です」
「それは良かった。まだ生後1年で門として機能させたのは初めてだからね」
黒シャツと黒いパンツとサンダルという格好の彼がギルベスターだ。こちらでは一躍有名になった彼だけど、あの時は顔が虎のままだった。今は完全な人化なのでギルベスターだと気づく者はいない。紘伊だって初対面では疑った。ただ隣にいたイヨカがいたからと、獣人国のあれこれを詳しく知っている点から信じる事にした。だいたいエルが門の役割をしたなんて知っているのは、ハーツとギルベスターしかいない。今ではイヨカも知っているけど、実は獣人国の誰もがこの国と獣人国との門が開いている事を知らないのだ。
ぜんぶハーツの企みで、ハーツは全てを背負い、秘密にしている。もちろんこちら側の人も知る者はいない。
護衛は紘伊に声をかけない。前後、数メートル空けて着いて来る。ハーツの過保護によるもので、この3ヶ月の間、誰に襲われる事もないのだけど。
「おはようございます」
まだ学生はいない。いるのは紘伊と同じ教授のアシスタントや事務員など、大学関係者ばかりだ。紘伊は以前と同じ様にくたびれたスーツを着て通っている。変に声を掛けられたくないからだ。紘伊はなぜか女学生にモテる。遊び慣れた年上の男で軽口を言い合うつもりが惚れられている、なんて事が続いたから警戒する様になった。元々好みは男性だ。言い寄られた所で間違いはないけど、わざわざハーツの嫉妬を誘いたいとは思わない。
「おはようございます」
イヨカの部屋へ向かい、準備を始める。仕事はイヨカのスケジュール管理やメールのやり取り、資料収集や資料検索、地方公演の手配など、イヨカの大学以外の仕事の手配を請負っている。という建前の元、実はとある施設の管理が紘伊のもう一つの仕事となっている。
「おはよう。今日も特に変化はないよ、エルは元気?」
休憩用のソファに寝転んでいた人物が起き上がる。無精髭を生やした男は怠惰な態度であくびをした。
「元気ですよ。モデルの仕事も順調の様です」
「それは良かった。まだ生後1年で門として機能させたのは初めてだからね」
黒シャツと黒いパンツとサンダルという格好の彼がギルベスターだ。こちらでは一躍有名になった彼だけど、あの時は顔が虎のままだった。今は完全な人化なのでギルベスターだと気づく者はいない。紘伊だって初対面では疑った。ただ隣にいたイヨカがいたからと、獣人国のあれこれを詳しく知っている点から信じる事にした。だいたいエルが門の役割をしたなんて知っているのは、ハーツとギルベスターしかいない。今ではイヨカも知っているけど、実は獣人国の誰もがこの国と獣人国との門が開いている事を知らないのだ。
ぜんぶハーツの企みで、ハーツは全てを背負い、秘密にしている。もちろんこちら側の人も知る者はいない。
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