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47 ノイズ領
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山に入る前に乗り物が変わる。大きな熊に乗馬用の馬具と同じような物が乗せられていて、そこに乗れと言われた。
馬車の中で受け取っていた防寒着をきる。もう拘束はされなかった。逃げた所で凍死するって分かるからだろう。
熊は紘伊の知っている熊の2倍はある。四肢を折り曲げて乗るのを待ってくれているから、慣れている動物なんだと思うけど、こんな大きな熊が慣れているのも不思議に思った。
熊の上に這い上がって登る。椅子に座ると従者が乗って来て、安全ベルトを付けてくれた。腹の前に掴まる所がある。手袋の分厚い手で必死に掴んでいると、のっそりと熊が立ち上がった。
山の斜面をゆっくり登って行く。高度を上げて行くと雪が降って来て、途中から吹雪になった。コートの前を合わせていても風が入って寒い。後ろから支えてくれている兵士がマフラーを貸してくれた。ありがとうと言いたくても寒くて凍えて痛いくらいで、とても言える状況ではなかった。
熊の領、ノイズは、高い壁に囲われていた。下から見上げると空に届きそうに見える。壁の一部が開き、中に入ると雪が一気に止んだ。
嘘のようだった。痛いほどの寒さが消える。熊はまだ奥へと進んで行く。不思議な事に地面に草が生えて、雪が所々にしかない。暖かく感じる気もする。
「地熱があるのです」
後ろの兵士が教えてくれる。
「先ほどはマフラーをありがとうございました」
暖かくなったのでマフラーを返した。
熊が歩みを止め、四肢を折る。安全ベルトを外してくれて、地面に降りた。
「こちらへ」
トンネルのような入り口がある。入れば左右に門番がいて、それがとても大きな体で、熊の獣人だと分かる姿だ。
奥へ進んで行く。後ろに乗っていた案内をしてくれる兵士は人化をしているのに、中では人化を見かけない。
紘伊が通ると、熊族は立ち止まって敬礼をする。胸に拳を置くのが敬礼スタイルらしい。
もう一つの扉を潜ると、コートを着ていると暑いくらいで、兵士が脱ぐのを示してくれて、通りかかった熊族に兵士と紘伊の防寒着を預けている。
「早々で申し訳ないのですが、領主が待っておりますので、ご案内致します」
奥からきた熊族に礼をされた。紘伊は頷いて付いて行く。思ったよりも静かな環境で驚いている。もっと大きい体を想像していたけど、大きさはハーツと変わらない。少し猫背で毛が硬そうで、腕と太ももの筋肉がすごい。山登りとか雪かきとかをしているせいだろうか。
「こちらです」
身なりを整える間もなく部屋に通される。二枚の扉が内側に開くと、中にたくさんの熊族がいるのが見えた。
紘伊の入ったのは舞台を見て左後ろに当たる扉だ。一斉にこちらを見られ、緊張が走る。
案内をしてくれた熊族の後ろに続いて入って行く。中央を空ける様に熊族が並んでいる。その中央の道を歩んで、舞台に座る領主の前に進む。
音がない。紘伊が歩む音が響いている。誰かが咳払いをした。ビクッとはしたけど大丈夫。案内の示した場所に膝をついて座った。視線を下げる。心臓に手を当てて落ち着こうと思う。静けさが怖すぎる。
馬車の中で受け取っていた防寒着をきる。もう拘束はされなかった。逃げた所で凍死するって分かるからだろう。
熊は紘伊の知っている熊の2倍はある。四肢を折り曲げて乗るのを待ってくれているから、慣れている動物なんだと思うけど、こんな大きな熊が慣れているのも不思議に思った。
熊の上に這い上がって登る。椅子に座ると従者が乗って来て、安全ベルトを付けてくれた。腹の前に掴まる所がある。手袋の分厚い手で必死に掴んでいると、のっそりと熊が立ち上がった。
山の斜面をゆっくり登って行く。高度を上げて行くと雪が降って来て、途中から吹雪になった。コートの前を合わせていても風が入って寒い。後ろから支えてくれている兵士がマフラーを貸してくれた。ありがとうと言いたくても寒くて凍えて痛いくらいで、とても言える状況ではなかった。
熊の領、ノイズは、高い壁に囲われていた。下から見上げると空に届きそうに見える。壁の一部が開き、中に入ると雪が一気に止んだ。
嘘のようだった。痛いほどの寒さが消える。熊はまだ奥へと進んで行く。不思議な事に地面に草が生えて、雪が所々にしかない。暖かく感じる気もする。
「地熱があるのです」
後ろの兵士が教えてくれる。
「先ほどはマフラーをありがとうございました」
暖かくなったのでマフラーを返した。
熊が歩みを止め、四肢を折る。安全ベルトを外してくれて、地面に降りた。
「こちらへ」
トンネルのような入り口がある。入れば左右に門番がいて、それがとても大きな体で、熊の獣人だと分かる姿だ。
奥へ進んで行く。後ろに乗っていた案内をしてくれる兵士は人化をしているのに、中では人化を見かけない。
紘伊が通ると、熊族は立ち止まって敬礼をする。胸に拳を置くのが敬礼スタイルらしい。
もう一つの扉を潜ると、コートを着ていると暑いくらいで、兵士が脱ぐのを示してくれて、通りかかった熊族に兵士と紘伊の防寒着を預けている。
「早々で申し訳ないのですが、領主が待っておりますので、ご案内致します」
奥からきた熊族に礼をされた。紘伊は頷いて付いて行く。思ったよりも静かな環境で驚いている。もっと大きい体を想像していたけど、大きさはハーツと変わらない。少し猫背で毛が硬そうで、腕と太ももの筋肉がすごい。山登りとか雪かきとかをしているせいだろうか。
「こちらです」
身なりを整える間もなく部屋に通される。二枚の扉が内側に開くと、中にたくさんの熊族がいるのが見えた。
紘伊の入ったのは舞台を見て左後ろに当たる扉だ。一斉にこちらを見られ、緊張が走る。
案内をしてくれた熊族の後ろに続いて入って行く。中央を空ける様に熊族が並んでいる。その中央の道を歩んで、舞台に座る領主の前に進む。
音がない。紘伊が歩む音が響いている。誰かが咳払いをした。ビクッとはしたけど大丈夫。案内の示した場所に膝をついて座った。視線を下げる。心臓に手を当てて落ち着こうと思う。静けさが怖すぎる。
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