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43 優越感

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 はっきり言ってウェルズ領は壮観だった。紘伊の居場所が軍施設と役所のある建物内だからもあって、人がいないから、人化していない獣人がいっぱいいる。

「おまえは俺の獣毛が好きなのではなく、誰のでも良いのだな」

 ハーツがヘソを曲げている。

「ハーツがいいに決まってる」

 軍人は獅子ばかりだが、受付や事務仕事には草食系獣人がいる。紘伊は無駄にロビーの椅子に座って気配を消していたりするのだけど、すぐにハーツに見つかって連れ戻される日々だ。

「軍施設内の規律は取れているし、領地立ち入りの審査も強化していて危険はないと思うが、気が緩みすぎではないか?」

「そんな事はないよ。外には出てないだろ? 触れるのはハーツだけだし」

 だってもふもふの獣人がいっぱいいて、自由に見放題なんて幸せってないよね。

「領主が戻ったら契約の儀をしようか。名実共に手にしておかないと、何処かへ飛んで行きそうだ」

 引き寄せられて腕に囲われる。

「それは俺を縛るものだから、しなくて良いって言っただろ?」

「不安だな、ヒロイ、おまえ狼族や熊族の獣毛にも触れたいと思っていないか?」

 しまった、体がピクッて反応してしまった。

「ハーツが一番だって言ってるだろ?」

 そりゃあ興味はある。実際の狼や熊に抱きつくなんて無理だから、獣人が大人しくただ手を広げて待っていてくれるだけのぬいぐるみ状態なら、抱きついて獣毛の匂いを嗅いでみたいけど。そんな夢みたいな話にはならない事を学んでいる。ハーツほど優しくて愛情深い獣人はいないって分かっている。

「狼族と熊族の領主からお見合いの打診が来ているとしたらどうする? 会ってみたいと思うか?」

 ハーツが重苦しい空気を背負って言って来る。それは紘伊を侮りすぎだ。

「怖いから会いたくない。ハーツが公務だって言うのなら、ハーツの婚約者として会うのは我慢する。っていうかハーツ、俺の気持ち疑ってない?」

 疑われるような行動をしているのは紘伊なのに、見事に言い返している。まるでハーツが悪いみたいに話をすり替えた。

「悪かったヒロイ、俺の腕の中にいてくれるだけで良い」

 抱き込まれてキスをする。

「本当にお見合いの話が来ているのか?」

 そう問えば曖昧な笑みを見せた。

「それだけではない。様々な種族の権力者からも手紙が多数届いている」

「俺ってモテるんだな」

 そう言って笑ったらハーツが不安そうな顔をする。

「そんな俺を独占している気持ちってどう? 優越感に浸れる?」

 浸れば良いのに。浸って可愛がってくれたら良いのに。

「まだお昼だけど、ふたりでゆっくりしようよ。それとも、俺より優先させる仕事がある?」

 見上げれば困惑気味なハーツの表情がある。引き寄せてキスをする。

「おまえは俺の扱い方をよく知っている」

 観念したように深く唇を合わせられる。分厚い舌が絡んで来る。牙を舐めてやると尻を持ち上げて抱えられる。そのままベッドへ運ばれて、熱い日差しの元で服を脱がされて行く。

 ハーツに奪われるのが好きだ。想いを行為に変えて強く打ち付けられるのが好きだ。抱かれるたびに体が変化している事にも気づいている。ハーツだけの体に作り替えられるのなら、このまま流されたって良いと思う。
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