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31 ストムズ領
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竜族の領地、ストムズに着いた。着陸の揺れに怯えてハーツにしがみついていたのは内緒だ。
最初に後ろの兵士が降りて安全を確保している。それからハーツが降りて、ハーツの手を借りて降りると、そこは竜機専用の飛行場のようだ。広い土地に離陸の為のスペースがあり、従業員と客専用の豪華な建物と、その反対側にプレハブのような造りの竜舎がある。
豪華な建物の前には軍人が列を成してハーツの到着を待っていて——すごく緊張する。こういうのって公式行事っていうのかな。各国首相が他国を訪れた時の対応に似ている。両領地の紋の垂れ幕が同等の大きさで並んでいるし、その奥の従業員だろうか、彼らなんて地面に膝をついて俯いて手を胸前で組んでいる。こういうのを見るとハーツの身分の高さを思い知るんだけど。ますます怖くて聞けなくなる。
「お待ちしておりました、王弟殿下」
日本語だ。紘伊がいるから気を使ってくれているのだと思う。っていうか王弟殿下って。
「久しいな、デュオン」
ハグはあるんだと、紘伊の前で肩に手を置きハグする二人を見ている。ハーツも大きいけど、ハーツがデュオンと呼んだ彼も大きい。ハーツより細身で細長い印象がある。でも細マッチョで筋肉の筋が見える。特徴は長い髪から伸びる二本の角とヒレのような耳。水かきのある手と肌に浮く鱗、それに背中から出ている対の翼。竜と人の中間。これがそうなのかと観察してしまった。
「婚約者のヒロイだ」
「初めましてヒロイです。よろしくお願いします」
まさかこんな公式の場だとは知らず、作法を聞いてもいない。ハグは無理だからハーツの横まで行って目礼をした。顔を見たら困惑ぎみな表情で——やらかしたかとハーツを見れば、笑いを噛み殺している。どういう事?
「さすがは殿下の伴侶ですね。我らの姿に怯えず近づくとは」
「ヒロイは誰に対しても対等でいられる稀有な存在だ」
ハーツに肩を抱かれて、デュオンの案内に従って歩いて行く。ハーツが通る左右に兵士を従えた道は、礼の作法があるらしく、統制の取れた動きで流れるように動いて行く。
「竜を所望されたと聞き、この時期に何故かと思いましたが、おねだりですか?」
「いや、私がヒロイの気を惹く為に勝手にな」
この先の会話は獣人語になった。紘伊には理解できなかったけど、二人の表情が真剣になっている。重要な要件なのだろう。
竜の飛行機からは竜車に乗り換えた。車を引くのは小型の竜だ。灰色の鱗を持つトカゲを後ろ足で立たせたようなフォルムで大きさは馬くらいだが、足が太くて馬力がありそうだ。
護衛は御者台と後方の見張り台にいるので、竜車の中ではハーツと二人になれた。
「王弟殿下で俺が婚約者って」
そりゃあ皆んな跪く。ハーツの身分の高さはなんとなく察していたけど、領主くらいまでしか思い至らなかった。
「この先、一生俺と共にいてくれるのだろう?」
手を握られて熱っぽい視線で見つめられている。今に始まった事じゃないけどハーツの視線や仕草が甘すぎる。
「……一緒にいたいけど、俺で良いの?」
そう言うと抱き寄せられる。嬉しそうに口付けされて、おでこを合わせる。
「ヒロイが良い。一生ヒロイの側にいさせてくれ」
頬にキスされる。間近で見つめられて観念する。うんと頷くのが精一杯だ。
「ありがとう、一生大切にする」
抱きしめられて胸の獣毛に埋まる。背中に手を回して、最高の居場所の匂いを嗅いで、幸せに胸が軋んだ。
最初に後ろの兵士が降りて安全を確保している。それからハーツが降りて、ハーツの手を借りて降りると、そこは竜機専用の飛行場のようだ。広い土地に離陸の為のスペースがあり、従業員と客専用の豪華な建物と、その反対側にプレハブのような造りの竜舎がある。
豪華な建物の前には軍人が列を成してハーツの到着を待っていて——すごく緊張する。こういうのって公式行事っていうのかな。各国首相が他国を訪れた時の対応に似ている。両領地の紋の垂れ幕が同等の大きさで並んでいるし、その奥の従業員だろうか、彼らなんて地面に膝をついて俯いて手を胸前で組んでいる。こういうのを見るとハーツの身分の高さを思い知るんだけど。ますます怖くて聞けなくなる。
「お待ちしておりました、王弟殿下」
日本語だ。紘伊がいるから気を使ってくれているのだと思う。っていうか王弟殿下って。
「久しいな、デュオン」
ハグはあるんだと、紘伊の前で肩に手を置きハグする二人を見ている。ハーツも大きいけど、ハーツがデュオンと呼んだ彼も大きい。ハーツより細身で細長い印象がある。でも細マッチョで筋肉の筋が見える。特徴は長い髪から伸びる二本の角とヒレのような耳。水かきのある手と肌に浮く鱗、それに背中から出ている対の翼。竜と人の中間。これがそうなのかと観察してしまった。
「婚約者のヒロイだ」
「初めましてヒロイです。よろしくお願いします」
まさかこんな公式の場だとは知らず、作法を聞いてもいない。ハグは無理だからハーツの横まで行って目礼をした。顔を見たら困惑ぎみな表情で——やらかしたかとハーツを見れば、笑いを噛み殺している。どういう事?
「さすがは殿下の伴侶ですね。我らの姿に怯えず近づくとは」
「ヒロイは誰に対しても対等でいられる稀有な存在だ」
ハーツに肩を抱かれて、デュオンの案内に従って歩いて行く。ハーツが通る左右に兵士を従えた道は、礼の作法があるらしく、統制の取れた動きで流れるように動いて行く。
「竜を所望されたと聞き、この時期に何故かと思いましたが、おねだりですか?」
「いや、私がヒロイの気を惹く為に勝手にな」
この先の会話は獣人語になった。紘伊には理解できなかったけど、二人の表情が真剣になっている。重要な要件なのだろう。
竜の飛行機からは竜車に乗り換えた。車を引くのは小型の竜だ。灰色の鱗を持つトカゲを後ろ足で立たせたようなフォルムで大きさは馬くらいだが、足が太くて馬力がありそうだ。
護衛は御者台と後方の見張り台にいるので、竜車の中ではハーツと二人になれた。
「王弟殿下で俺が婚約者って」
そりゃあ皆んな跪く。ハーツの身分の高さはなんとなく察していたけど、領主くらいまでしか思い至らなかった。
「この先、一生俺と共にいてくれるのだろう?」
手を握られて熱っぽい視線で見つめられている。今に始まった事じゃないけどハーツの視線や仕草が甘すぎる。
「……一緒にいたいけど、俺で良いの?」
そう言うと抱き寄せられる。嬉しそうに口付けされて、おでこを合わせる。
「ヒロイが良い。一生ヒロイの側にいさせてくれ」
頬にキスされる。間近で見つめられて観念する。うんと頷くのが精一杯だ。
「ありがとう、一生大切にする」
抱きしめられて胸の獣毛に埋まる。背中に手を回して、最高の居場所の匂いを嗅いで、幸せに胸が軋んだ。
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