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28 民族衣装
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3日後、領地に発つという日、イジワルな従者が消えている事を知る。
執事だと思っていた人は実はホテルの支配人で、ハーツには別の執事というか部下というか、身の回りの世話をする人がいた。
要は紘伊のいた向かい側の建物内に仕事用に部屋を借りていて、紘伊のいる場所はハーツがひと階全部を専用貸し切り状態にしていたらしい。だから紘伊にイジワルをしていたのは、ハーツのお屋敷に勤めている使用人だったようだ。紘伊に向けたいろいろは、支配人の采配で侍従長に告げられた。紘伊は侍従長を見た事がないけど、紘伊を優先してくれたらしい。
その侍従長には割と早く会えた。領地に戻る為の服装が獅子の領地、ウェルズ特有の民族衣装だったから、侍従長が従者を連れて手伝いに来てくれたからだ。
「初めましてヒロイ様、私はハーツェリンド様のお屋敷に勤めております侍従長のトマス・ヨルゴと申します」
この人が侍従長かと思い、内心でお礼を言う。俺の為にイジワルな人を辞めさせてくれてありがとうなんて言葉には出来ないから。なんだそれ、自分に酔った主人公みたいだ。
「ヒロイです。よろしくお願いします」
とりあえず獣人界のマナーを知りたい。握手はしないんだよな。見目が西洋風なので、頭の中でバグが起こる。彼らは姿を人化させた獣人だ。従者は他種族が多いと聞いている。この人はどの種族なんだろうと思っても聞けない。匂いで種族が分かれば良いのに。
お風呂とかそういうのは事前に済ませている。ハーツは王様みたいに全部従者にしてもらってるし、それが身に染み付いているというか、堂々と受け入れられているというか。そういうのは紘伊には無理だ。真っ裸で従者の前に立って服を着せられるのも恥ずかしいし、ましてや他人に体の隅々まで洗ってもらってクリームなのか薬なのか、何かしらを塗られたりとか、ありえない。ハーツがされてるのを見るのは良い。スタイル良いし、素っ裸でも素敵だし、傅かれてお世話されてるの似合うし堂々としているし。それを見て、それ俺の、的な感情を持つ自身の意地悪さに、感情の軌道修正を持ちかけて身悶える紘伊だったが。
「南国風?」
着せられた服は白いストンとしたシルエットの民族衣装だ。膝下まである白いワンピース的なのの腰に織物の帯をつけて、上からくるぶし丈のコートみたいな物を羽織っている。でも生地は薄くて涼しい。ちなみに内側の服には両脇に太ももまでのスリットが入っていて、中には黒い足を覆うパンツを履いている。靴は紐で編み上げた紐をくるぶしに巻き付けるサンダルで、腰布と襟飾と同じ生地だ。ネックレスには獅子がモチーフのペンダントヘッドがあって琥珀が付いている。その柄はウェルズ領の紋章らしい。
「すごく気に入ったよ、ありがとう」
「よくお似合いです。主人もさぞお喜びでしょう」
トマスの賛辞を聞きながら、鏡の前で回ってみる。伸びきっていた髪も切ってもらった。久しぶりに首が出る長さだ。この国に来てから年齢が気にならなくなった。ハーツとの体格差と愛されてるって気持ちのせいだと思う。それに少し太った。太ったって言うほどでもないけど、ふっくらしたというか、肌が柔らかくなった気がする。毎日美味しいものを食べて、高級なソープを使い、いい匂いのするお風呂に入っているからだろうか。
「そろそろ出発のお時間です。こちらへどうぞ」
従者がドアを開けてくれて、傍に控えた。トマスの案内で廊下に出る。
ハーツはどこにいるのだろう? 獅子族の領地に行く。緊張と期待が胸いっぱいにある。
執事だと思っていた人は実はホテルの支配人で、ハーツには別の執事というか部下というか、身の回りの世話をする人がいた。
要は紘伊のいた向かい側の建物内に仕事用に部屋を借りていて、紘伊のいる場所はハーツがひと階全部を専用貸し切り状態にしていたらしい。だから紘伊にイジワルをしていたのは、ハーツのお屋敷に勤めている使用人だったようだ。紘伊に向けたいろいろは、支配人の采配で侍従長に告げられた。紘伊は侍従長を見た事がないけど、紘伊を優先してくれたらしい。
その侍従長には割と早く会えた。領地に戻る為の服装が獅子の領地、ウェルズ特有の民族衣装だったから、侍従長が従者を連れて手伝いに来てくれたからだ。
「初めましてヒロイ様、私はハーツェリンド様のお屋敷に勤めております侍従長のトマス・ヨルゴと申します」
この人が侍従長かと思い、内心でお礼を言う。俺の為にイジワルな人を辞めさせてくれてありがとうなんて言葉には出来ないから。なんだそれ、自分に酔った主人公みたいだ。
「ヒロイです。よろしくお願いします」
とりあえず獣人界のマナーを知りたい。握手はしないんだよな。見目が西洋風なので、頭の中でバグが起こる。彼らは姿を人化させた獣人だ。従者は他種族が多いと聞いている。この人はどの種族なんだろうと思っても聞けない。匂いで種族が分かれば良いのに。
お風呂とかそういうのは事前に済ませている。ハーツは王様みたいに全部従者にしてもらってるし、それが身に染み付いているというか、堂々と受け入れられているというか。そういうのは紘伊には無理だ。真っ裸で従者の前に立って服を着せられるのも恥ずかしいし、ましてや他人に体の隅々まで洗ってもらってクリームなのか薬なのか、何かしらを塗られたりとか、ありえない。ハーツがされてるのを見るのは良い。スタイル良いし、素っ裸でも素敵だし、傅かれてお世話されてるの似合うし堂々としているし。それを見て、それ俺の、的な感情を持つ自身の意地悪さに、感情の軌道修正を持ちかけて身悶える紘伊だったが。
「南国風?」
着せられた服は白いストンとしたシルエットの民族衣装だ。膝下まである白いワンピース的なのの腰に織物の帯をつけて、上からくるぶし丈のコートみたいな物を羽織っている。でも生地は薄くて涼しい。ちなみに内側の服には両脇に太ももまでのスリットが入っていて、中には黒い足を覆うパンツを履いている。靴は紐で編み上げた紐をくるぶしに巻き付けるサンダルで、腰布と襟飾と同じ生地だ。ネックレスには獅子がモチーフのペンダントヘッドがあって琥珀が付いている。その柄はウェルズ領の紋章らしい。
「すごく気に入ったよ、ありがとう」
「よくお似合いです。主人もさぞお喜びでしょう」
トマスの賛辞を聞きながら、鏡の前で回ってみる。伸びきっていた髪も切ってもらった。久しぶりに首が出る長さだ。この国に来てから年齢が気にならなくなった。ハーツとの体格差と愛されてるって気持ちのせいだと思う。それに少し太った。太ったって言うほどでもないけど、ふっくらしたというか、肌が柔らかくなった気がする。毎日美味しいものを食べて、高級なソープを使い、いい匂いのするお風呂に入っているからだろうか。
「そろそろ出発のお時間です。こちらへどうぞ」
従者がドアを開けてくれて、傍に控えた。トマスの案内で廊下に出る。
ハーツはどこにいるのだろう? 獅子族の領地に行く。緊張と期待が胸いっぱいにある。
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