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27 竜好き

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「おまえ、竜が好きだろ?」

 領地に戻る準備が進んでいる。ハーツは色んな所との伝達や書類仕事に追われている。でも夜の可愛がりだけは忘れない様で、紘伊に不満はないのだけど。

 3日目、ハーツは突然思いつきの様に口にした。

「だから好きとかそういうんじゃなくて、架空の生物だから気になるんだって」

 竜といっても様々なフォルムがある。恐竜だって竜だし、和風の龍もあれば有名映画に出て来る凶暴な害獣的な竜もいる。どうせなら仲良くなれそうな竜が良いけど、この世界での竜は現実だ。見たり触れたりも出来るんだろう。

「気になるって事は好きなんだな」

 勝手に納得して部屋を出て行ってしまった。別に良いけど。竜族に会えるのなら会ってみたいし。だいたいハーツだって最近慣れて来たけど架空の存在だ。まさか自分の人生の中に獣人が登場して、登場するだけじゃなく恋をして、さらに愛されるなんて思いもしない。だいたい男好きの自分がこんな甘い生活を送れるなんて考えた事もない。人生において一度くらいは好きな人に愛されてみたいとは思ったけど。こんな理想の相手とは——。

「何を考えている?」

 いつの間にか戻って来たハーツが腕を組んで不機嫌な表情で立って、ソファで寝そべってクッションをだき潰している紘伊を見下ろしていた。

「目が潤んでいる」

 クッションを奪われ、その隙間にハーツが身を置く。

「まさか竜と——」

「ハーツのせいだ! 竜じゃない! ハーツが…その、……」

 言い淀んでハーツを見つめれば、朱に染まる頬を指先で撫でられた。ふっと表情に甘さが乗り微笑む仕草が愛おしい。

「俺を想ってそうなっているのか」

 ソファの隙間に乗り上げているハーツの膝が熱くなった部分を押して来る。腰を引きたくても背面に邪魔されて動けない。

「分かってるなら何も言わなくて良いだろ?」

 不貞腐れたらハーツが笑う。笑われるのが癪だから引き寄せて唇を重ねた。

「辛くはないか?」

 パンツ越しに尻を撫でられる。最近は一晩と欠かさず受け入れているから、午前中は腰が立たない。それを心配してくれているのだろうけど。

「置いて行かれる方が辛いよ」

 好きなんだ、ハーツ。願いを込めてハーツを引き寄せる。狭いソファで抱き合うと逃げ場が無くて、ハーツとより密着できて嬉しい。なのにハーツは狭いのが嫌らしく、すぐに抱き上げてベッドに運んでしまう。まぁハーツの体格だとソファが壊れかねないから仕方がないけど。でもアピールはする。ベッドに降ろされても腰に抱きついて腕を回してぎゅっとしている。

「ヒロイ、時間が惜しい」

「それは早く挿れたいってこと?」

「違う、早くヒロイを愛したい」

 言い回しが違うだけで意味合いは同じなのに、胸に響く。

「俺も、早くハーツに愛されたい」

 腕を解けば、熱い口付けが与えられる。ハーツの鋭い犬歯が舌に触れる。獣人とのキスは痛みを伴う。でも夢中になっていると気づかない。琥珀色の瞳に見下ろされると溶けてしまいそう。

「好きだよ、ハーツ」

 何気ない瞬間から抱き合うに至るまでの、膨らんで弾ける様な感情の昂りが好きだ。

「愛してる」

 ハーツの想いに包まれる瞬間が好きだ。
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