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18 過去のこと

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 食事を終えると庭に誘われた。部屋から見える中庭ではなく、広い湖だろうか、湖面に月が映ってとても綺麗な場所だ。湖が見える花壇の中にあるガゼボに座る。従者がサッと酒とツマミを用意して行った。

 隣に座って手を繋いでいる。一緒にいて楽しいと思ってくれているのだろうか。

「ここで暮らして行けそうか?」

「はい」

 どうかな。従者は良く思っていないようだよ? 強い獣人は人に子を産ませるってホント? 昨日いっぱい注がれたけど、そういう機能はついてないよ?

「おまえ、はいしか言わないくせに、いろいろ考えているだろう?」

「いえ、特には」

 そう返したらクックと笑われた。

「別に怒らないし咎めない。ふたりの時は何を言っても、聞いても良い。普段のヒロイを知りたい」

 そう言って頬に手を置かれて口付けられる。分厚い舌が舌を掬い上げて絡められる。息が続かないキス、絶対にわざとだ。肩をポンポン叩いて止めさせる。笑っている。ひどい。

「俺にはヒロイが可愛く見える。人の年齢は分からないな」

「……そうですか、それは良かった」

 脳内年齢はきっと10代だ。こんなに甘やかされて喜んでいる。イジワルされて喜んでいる。ただただ恥ずかしい。

「ハーツは? 何歳?」

「40だ。だが200年ほど生きる」

「平均寿命が違うのか。見た目も違うもんな」

 腕が太い。筋肉がすごい。
 膝に乗せられて向かい合わせになると胸元が顔の位置になる。すごく好き。ハーツの獣臭は大人くさい。

「毛皮が好きな人は珍しい。俺に怯えない所もな」

「そう? はっきり言ってしまうとハーツは俺の理想だよ」

 胸毛に頬を寄せる。そうすると後頭部を撫でられる。

「日本語、なんで話せるの?」

「日本人が一番獣人に怯えないから、日本人は重宝される。だから日本語を覚える。20年前のギルベスターの活躍以来、門は日本にしか通じていないしな」

「どういうこと?」

 見上げるとキスされる。

「20年前のって、虎の獣人が人を襲ったっていう事件のこと?」

「事件か。そうだな、人にとっては事件か。あれはギルベスターが世界に散らばった門を閉めに行っていたんだ」

「門、俺も通って来た?」

「来たんだろう。気づかないものか?」

「たぶん気を失ってた。気づいたらあの施設にいた。なあ、あれって部屋が丸見えなのか? あの部屋の外には獣人がいっぱいいて中を見ているのか?」

「いや、部屋は見られるが、それよりは写真と経歴で選んだ。写真と実物を比べはしたが……」

「なるほど、ハコヘル方式か」

 ハーツが分からないという表情をする。それには笑ってごまかした。

「もう日本にしか門がないって事は、この先は日本からしか呼ばないってこと? 獣人国に日本人が増えるってこと?」

「いや、あと数ヶ月で門は閉じる。本来はこちらから呼ぶだけの一方通行だったんだ。それが100年前の誰かが向こうの門を開けてしまった。それが始まりなのだが、人には教えられていないらしいな」

「知らない。生きていないし、獣人の存在だって20年前の事件があったから公にされたんだ。人の社会には秘密が多いよ」

「そうだな」

 ハーツがキスを再開する。執拗なキスに翻弄されて、思考が回らなくなって行く。
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